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ガルウイングでなくても2億円! メルセデス・ベンツ「300SL ロードスター」に珍しいハードトップつきの個体がオークションに登場

132万5000ドル(邦貨換算約2億670万円)で落札されたメルセデス・ベンツ「300SL ロードスター」(C)Courtesy of RM Sotheby's

エンジンやシャシーはナンバーマッチング済み

2025年1月24日〜25日にRMサザビーズがアメリカ・アリゾナで開催したオークションにおいて、メルセデス・ベンツ「300SL ロードスター」が出品されました。このシャシーナンバー「198.042-10-003027」は1962年3月2日に納車された個体。残念ながら最初の納車先は不明ですが、1964年までアメリカ・ペンシルバニア州にあったことがわかっている1台でした。

8割以上がアメリカで販売された

1960年代以降の「SL」を見ている人々にとって、メルセデス・ベンツが送り出すSLというモデルは、ラグジュアリーなグランツーリスモという概念が定着していると思う。しかし、1954年に市販された最初のSLは、まさしくレーシングカーを公道に引っ張り出したスーパーカー以外の何物でもなかった。このコンセプトを具現化した背景には、メルセデスに強い影響力を持っていたアメリカのインポーター、マックス・ホフマンの働きかけがあったからに他ならない。

「W154」の名で1952年に誕生した「300SL」の原型は、ル・マン24時間とメキシコで開催されたカレラ・パナメリカーナで勝利し、これがW154ベースのロードゴーイングモデルを製作させる、マックス・ホフマンの強い原動力となった。

1954年にデビューしたクーペの300SLはコードネームW158のもと、独特なガルウイングドアをもって誕生し、3年間でおよそ1400台が生産された。その8割以上がアメリカで販売されたというから、マックス・ホフマンの助言は見事に的を得たものだった。

6年間で1858台が生産された

しかし、レーシングカーのようなチューブラースペースフレームは、サイドシルを異様に高くしたことから乗降性が悪く、同時にラゲッジスペースにも制約を受けている。パッセンジャーシートに座る同乗者の評判は、恐らくよくなかったのであろう。それに当時のカリフォルニアでは、スポーツカーと言えばオープンモデルを指すほどオープンに人気があった。

そこで、基本的に同じメカニズムを使いながら、これをオープン化したのが「300SL ロードスター」である。単にオープン化とはいえ、ルーフがなくなるばかりか、サイドシルの補強と同時に前ヒンジのドアを取り付ける必要性があることから、大幅な改良が施された。

結果として車重は125kg重くなり、SL=シュポルト・ライヒト(軽量スポーツを意味するドイツ語)の名が語れなくなるのでは? あるいは性能的にクーペよりも劣るのでは? という危惧が持たれたのだが、リアサスペンションの改良によってコーナリングの安定性はクーペよりも増している。これはリアスイングアクスルのピボットを低めて取り付けた結果である。ロードスターは1957年のジュネーブショーでデビューし、1963年までの6年間で、1858台が生産された。

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1961年以降のモデルには4輪ディスクブレーキを採用

RMサザビーズのオークションに登場したのは、1962年式のロードスターである。1957年から製造されたロードスターだが、デビュー当初はクーペのそれと同じ3L 215psの鋳鉄ブロックを持つエンジンが搭載されていたのだが、1962年春からは44kgも軽量化されたアルミ製のシリンダーブロックに変えられている。また、1961年以降のモデルには、ダンロップ製の4輪ディスクブレーキが装着されており、エンジンのみならずブレーキでも軽量化が施されていた。もちろんブレーキ性能が大幅に向上したことは言うまでもない。ただ、1962年製ではあるが、このクルマのエンジンが鋳鉄製かはたまた新しいアルミ製であるかは不明だ。

シャシーナンバー「198.042-10-003027」は1962年3月2日に納入されたと言われ、最初の納入先はいまとなっては分からないものの、1964年までペンシルバニア州にあったことは判明している。何年もの時を経て、このクルマは前の所有者によって入手され、費用をかけて大がかりなレストア作業が行われ、1990年代半ばに完了したと言われている。このレストア中に、現在のタンのソフトトップ、ファイアーエンジンレッドの外装、そしてナチュラルのレザー内装に仕上げられた。

シャシー、エンジン、ボディワーク、リアアクスル、ステアリングボックス、フロントアクスルはマッチングしている。ハードトップはカラーマッチしているものの、それがオリジナルかどうかは不明。また、トランスミッションに関しては1959年製の旧型が装備されている。

オーディオは現代にアップデート済み

2017年から、メルセデス・ベンツ クラシックセンターにおいて、2万9000ドル以上をかけて、トランスミッションのリビルドを含むメカニカルな整備を行っているほか、持ち主のプライベートメカニックによって、定期メンテナンスが行われていた。現在の走行距離は4万6500マイル(7万4834km)だそうだ。

唯一モダンにアップデートされたのは、ベッカーラジオの代わりに付くパイオニア製ステレオ・システムである。リムーバブルハードトップに加え、ファクトリーデータカード、オリジナル工具、オリジナルのシャシー及びボディタグ、そして30年間のサービスドキュメントが付属する。

RMサザビーズでは、出品車の300SL ロードスターに130万ドル〜160万ドル(邦貨換算約2億280万円〜約2億2960万円)のエスティメート(推定落札価格)を掲げた。実際には132万5000ドル(邦貨換算約2億670万円)で落札された。

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