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30年放置された日本最古のポルシェ「930ターボ」が復活!「三和自動車」モノの個体を99%オリジナルと純正パーツでレストアしました

バーンファインドのポルシェ930ターボ、50年目の復活

2023年4月に千葉・幕張メッセにて開催された「オートモビルカウンシル2023」の会場で異彩を放っていた、1台のポルシェ「930ターボ」をご記憶の方もいるでしょう。ほかの出品車両たちが美しく磨き上げられていたのに対して、こちらの「バーンファインド」930ターボは全身を埃が覆い、オレンジ色のボディがくすんで見えながらも、同時になんとも不思議な迫力、あるいはオーラのようなものも醸し出していました。当時は大きな話題となった930ターボながら、その後の続報は無いままでしたが、このほどついにレストアが完成し、2025年2月28日、再びメディアに公開されました。

初代オーナーのご遺族から託された、日本最古の930ターボ

2023年の「オートモビルカウンシル2023」において大きな反響を呼んだ、1975年式のポルシェ930型「911ターボ3.0」。その出展社は、「共同所有」という画期的なビジネスプラットフォームが自動車愛好家の間で話題を呼んでいるスタートアップ企業「ランデヴー(RENDEZ-VOUS)」であった。

同社では、埋もれていた名車を蘇らせるレストアプロジェクトも創業当初から準備していたそうだが、このときお披露目された930ターボは、プロジェクト第1弾として用意されたレストアベース車両だったのだ。

3Lの初期型930ターボが製造されたのは1975年~1978年のわずか4年間。その中でも最初期の1975年モデルは、約280台のみの製造とされている。日本には、当時の総輸入代理店「三和自動車(のちのミツワ自動車)」が世界通算50台目となるホワイトの個体を初めて輸入し、当時は同社所有のデモカーとして登録。スーパーカーブーム直前にあった日本の自動車専門誌でも、その迫力たっぷりの姿を披露していた。

ファミリーオーナー車でフルオリジナルの1台

そしてこちらのオレンジの個体は、シャシーナンバーが国内1号車と連番となる51台目。顧客に納車された930ターボとしては、日本第1号にあたる。また、白い元デモカーはすでに日本から流失した可能性が高いとのことで、おそらくは国内に生息する最古の930ターボと目されている。

今から半世紀前、1975年に新車として三和自動車から入手したファーストオーナーは、30年ほど前に逝去されるまでこのクルマを大切に愛用した。没したのちはご家族で引き継いだものの、さすがに荷が重かったのか、その後はずっと倉庫にしまい込まれていたとのことである。

つまりは、文字通りの「バーンファインド」。しかもワンファミリーオーナー車にしてフルオリジナル、希少ボディカラー、かつ走行距離3万7000km台と、まさしく奇跡のような930ターボとして現在に再降臨したことになる。

だからこそ、「オートモビルカウンシル2023」では積もった埃を払うこともなく、保管状態の当時のままの姿で展示されたのだ。

99%のオリジナリティを現代に遺す、奇跡のレストア

こうして「オートモビルカウンシル2023」にて公開された1975年式ポルシェ930ターボながら、じつはこのときすでにレストアへのプロジェクトは起動していたとのこと。初代オーナーのご子息からこの車両についての相談を受けていたランデヴーは、歴史的なポルシェに携わるという重責に悩みつつも、「このクルマを国内に残したい」、「整備/レストアの重要性と意義を伝えたい」、そして「文化的価値のある本車両を本来の姿に蘇らせ、次世代に受け継いでいきたい」という3つの熱き想いから、難航が予想される再生プロジェクトに乗り出すことになったという。

ところでこの930ターボは、ランデヴーで2024年夏から移行した現行のサービス、「予算」および「車種」の条件が揃った8人ないしは4人の共同所有オーナーを「マッチング」させ、その使用権料を月額換算で1年分支払うメソッドに準拠したものではなく、クラシックカーを中心としたコレクター向けの本格的「コレクタブルカー」を4人ないしは8人で一括購入するという旧サービスのもとに販売された、最後の1台である。

そしてオートモビルカウンシル2023の終了時点で4人の共同所有オーナーを確保し、ようやく念願のレストア作業に入ることになった。

保存環境が良かったのか、バーンファインドされた当初からボディには深刻な錆や腐食などはなく、細かい傷などを残しつつもオリジナルペイントを残す方向で決定。また、オプションの本革レザー内装やカーペットもすべていったん取り外し、クリーニングすることで対処可能と判断される。ところが、30年近くも動かしていなかったクルマ。しかも、精度の高さを整備で担保する必要のある空冷ポルシェである。エンジンやトランスミッションなど肝心かなめの機関部分は、すべてリビルドする必要に迫られた。

空冷ポルシェのオーソリティ集団がオーバーホール

ここで強い味方となってくれたのが、静岡・御殿場の「PORTECH(ポルテック)」だった。ポルシェを知り尽くした元ミツワ自動車のメカニックが再結集し、かつてのミツワ自動車のデポ(PDI拠点)があった場所に設立された、空冷ポルシェのオーソリティ集団である。

2023年10月、ポルテックに運び込まれた930ターボは、エンジンやトランスミッション、燃料タンク/フューエルラインなどをすべて取り外してオーバーホール。修理不能なものはポルシェの純正パーツを手に入れて、新品ないしはリビルド品に交換するなどの手立てが施された。実際、使用部品の99%はこの個体のオリジナルないしはポルシェ純正の交換用パーツのみで組み上げられたが、唯一室内のサンバイザーのみは1975年式特有のテキスタイルが入手不能となっているせいで、リプロ品で賄われているとのことである。

そして、この時代のポルシェを新車時代から取り扱ってきたポルテックの「匠の技」は、オリジナル性を最大限残したいとするランデヴー側の意向とも完全合致。メカニズム系は新車に近いコンディションを取り戻しつつも、内外装は半世紀前のオリジナルをほぼ残した、まさしく奇跡のレストアが実現に至ったのである。

ところで、今回のお披露目会の質疑応答にて寄せられた、

「またこの種のプロジェクトに挑むのか?」

という質問に対して、ランデヴー浅岡亮太代表は次のようにコメント。

「正直なところけっこうな赤字で、レストア進行中に少なくとも3回は、もうやめたいと本気で思いました。だから、もうやりたくない……、けどやっぱり挑戦したいですね(笑)」

しかも、次のプロジェクト用の車両はすでに用意してあるそうで、いちクラシックカー愛好家として、そちらの進展にも注目したいところである。

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