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B◯SSのイラスト元ネタは文豪ウィリアム・フォークナーだった!? 個人経営の書店が居心地よすぎて「住んでみたい町」リストに【ミシシッピ川ブルース旅_14】

他人の空似で済まされるのだろうか

文化と学術の町、ミシシッピ州オクスフォードへ

2024年の8月末から、アメリカをミシシッピ川沿いに南北縦断して音楽の歴史をたどる旅に出ることにした筆者。ニューオリンズでダッジ「デュランゴ」こと“ルシール号”をレンタルして、ブルースの故郷である「ミシシッピ・デルタ」を仲間と4人で巡りました。旅の後半はひとり旅。ルイジアナ州ニューオリンズのハーツレンタカーで借りたキア「スポーテージ」を“キムさん”と名づけて、ミシシッピ川流域を北上していきます。

ひとり旅ではモーテルの気楽さも魅力的

ミシシッピ州テュペロでは「モーテル6」(モーテルの大規模チェーン)に宿泊した。前日までは3~4人の旅だったこともあり、ベッドルームが2つ以上あるAirbnbを利用していたが、ひとりになったのでモーテルも選択肢に入った。

2022年に西海岸を旅行したときは、モーテルの1泊料金が150ドル以上、しかも空きが少ないという厳しい状況だったが、南部ではそこまでひどくない。久しぶりに泊まってみると、モーテルの気楽さもいいものだ。夕食はダウンタウンでメキシカンをいただいて、早めに就寝した。

『ロンリープラネット』がイチオシの居心地よい書店

翌日の目的地はメンフィスだが、その前に寄りたい町がある。ミシシッピ州オクスフォードだ。南部にも立派な大学を作りたいという願いと使命から命名された町で、広大なミシシッピ大学を擁している。ダウンタウンは美しく、クラシックでありながら若々しいエネルギーを感じた。

このダウンタウンに、「全米でも有数の素晴らしい個人経営の書店」と『ロンリープラネット』に紹介された「スクエア・ブックス」がある。学生街の本屋さんとくれば興味津々。さっそく訪ねてみた。

ジャンルごとにきれいに陳列された本はどれも手に取りたくなるようで、本当に居心地がいい。2階にはカフェとバルコニーがあり、大学生とおぼしき若者がくつろいでいた。ぶらぶらと本を見て歩き、2冊ほど買い物をした。

レジでおすすめのレストランを聞いて足を向けると、11時の開店を待つ人が数人並んでいる。いいタイミングで列に並ぶことができた。野菜不足を感じていたのでシーザーサラダを頼むと、きちんと調理したチキンやさまざまな野菜が載っていてボリュームもたっぷり。おいしいコーヒーをおかわりして大満足のランチとなった。

さらに個性的な店を冷やかしながら散歩を続けると、この町が好きになってしまった。ガイドブックによると、ジュークジョイント(南部スタイルのライブハウス)もあるらしい。アメリカ旅行は大好きでも、この国に住みたいとはあまり思わない。しかし、この町は例外だ。数少ない「住んでみたい町」のリストに「ミシシッピ州オクスフォード」を加えることにした。

ウィリアム・フォークナーと日本の缶コーヒーの類似性とは

オクスフォードに来た目的はもうひとつある。それは、ノーベル文学賞作家、ウィリアム・フォークナーの邸宅、ローワン・オークを訪ねることだ。フォークナーといえば、アーネスト・ヘミングウェイ、ジョン・スタインベックと並ぶアメリカ文学の巨匠。Wikipediaによれば、子どもの頃からオクスフォードに住み、ミシシッピ大学を卒業している。彼の描いた南部の伝統と人間模様は、まさにこの土地で紡ぎ出されたわけだ。

“キムさん”ことキア「スポーテージ」を林の中の駐車場に停め、2階建ての白い館に進む。南北戦争以前に建てられたというから200年近く前の木造建築だ。古い館らしく、どの部屋も広々と造られている。書斎や寝室を見学して、廊下の一角に設えられた展示コーナーを見ていると日本の写真があった。ツアーガイドによると1955年に長野で開かれた文学セミナーに招待されたのだという。フォークナーは日本の戦後文学に興味を持っていたそうだ。

さらに立ち話をしていると、面白い展示を見つけた。フォークナーがパイプをくわえている写真と日本の缶コーヒー「BOSS」が並べて配置され、「似てない?」とキャッチがある。似ているどころか、そっくりだ。

「S社と契約したんですか」

「違うよ。連絡も何もなくて、後から知ったんだよ」

ツアーガイド氏は苦笑い。フォークナーは1962年に亡くなっているから、もちろん知るべくもない。本人がBOSSを飲んでいる写真があったら、ブラックユーモアになっただろう。

帰り際に、敷地内の木の樹皮で作ったブックマークを記念にもらった。表にローワン・オーク、裏にタイプライターがデザインされたセンスのいい一品だった。気持ちのいい滞在を終えて、その日の宿泊地、テネシー州メンフィスへと向かった。

* * *

このミシシッピの旅で筆者が取材した内容を1冊にまとめた本が2025年3月13日に発売となった。アメリカンミュージックのレジェンドたちの逸話とともに各地を紹介しているフォトエッセイ、興味のある方はぜひチェックを。

>>>『アメリカ・ミシシッピリバー 音楽の源流を辿る旅』(産業編集センター)

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