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ランボルギーニ「テメラリオ」とスイマーに共通する流体力学とは? 2度の世界チャンピオンに輝いたフィリッポ・マンニーニ氏による動画が公開

ランボルギーニ テメラリオとフィリッポ・マンニーニ氏

テメラリオとスイマーに共通する流体力学

ランボルギーニは2025年4月3日、2度の世界チャンピオンに輝いたフィリッポ・マンニーニ氏による空力と水力を語る動画を公開しました。水泳選手が水に飛び込むとき、身体のあらゆる角度や形状の面がほんの一瞬の差を生み出し、それが勝敗を分けます。「テメラリオ」がわずか2.7秒で時速100キロに到達するように、フィリッポ・マンニーニ氏も、最大限の空力、すなわち水力効率を駆使して頂点を目指しています。「テメラリオ」の空力に対するアプローチについて紹介します。

マンニーニ氏が動画で語ったこととは

ランボルギーニが公開した動画「Sculpted by Speed(スピードが彫刻する)」の中で、フィリッポ・マンニーニ氏は「究極のスプリントスイマーにとって速度こそすべてだ」と述べている。彼にとって100mは0-100km/h加速性能で語られるスーパーカーと同様、最速で最も空力の要素がスイマーに求められる基準の距離である。マンニーニ氏はこのように語る。

「テメラリオの開発と同様に、私たちは空気を切り裂く、または水を切り裂く最適な動的プロファイルを追い求めている。私たちは、それぞれの環境において最大のスピードを目指しているのだ。水泳はサッカーやバスケットボールとは違う。スイマーはあらゆる動き、すべてのダイナミクスが完璧でなければ頂点には立てない。空力的な優位性こそが、単なる参加者と“唯一無二の存在”との違いを生み出すのである。

私にとって水は第二の皮膚である。水が私を包み込み、筋肉が水に反応する。その感覚が私に水力的なアドバンテージを与えるのだ。テメラリオにとっては、空気がその流線形のボディを包み込み、超一流のパフォーマンスを生み出すのと同じである」

テメラリオが追求する空力効率の極致

テメラリオは、空力効率の頂点に到達するために3つの主要設計目標を実現している。それは、高速域での安定性、冷却性能の向上、そして最大限のブレーキ効率である。

ランボルギーニのデザイナーとエンジニアは、新しいハイブリッドパワートレインと、とくにリアにおける空力荷重の増加目標を考慮して、テメラリオのボディおよびアンダーボディを開発した。その結果、「ウラカンEVO」と比較してリアダウンフォースは103%、軽量化されたアレッジェリータパッケージ装着時には158%向上している。

各部品はすべて卓越した空力性能に貢献するよう設計されている。フロントでは、デイタイムランニングライトが空力要素となり、六角形のライトと専用のエアインテーク、ディフレクターがバンパーからサイドラジエーター上部へと気流を誘導する。2枚のフィンがインレットに装着され、上部の翼型フィンが気流を下向きに導き、水平フィンがその流れをラジエーターに垂直に送ることで、冷却効率を最大化する。

ホイールアーチにあるグリルのフィンは気流を外側へ導き、サイドラジエーターから遠ざけることで空気抵抗を減らし、ダウンフォースをリアへと移動させる。サイドミラーはフロントと連携し、空気抵抗を最小限に抑えるだけでなく、サイドラジエーターへの空気導入を促進し、メカニカルコンポーネントの冷却能力を高めている。

ルーフには中央チャンネルを設け、空気をリアスポイラーへと導き、空力効率とダウンフォースを向上させる。エンジンフードの湾曲した側面もこの効果を補完し、スポイラー側面に流れる空気量を増加させる。オプションのアレッジェリータパッケージではトレーリングエッジの高さを上げ、曲率を高めることで、高負荷軽量リアスポイラーが装着される。

隠れた空力デザインが性能を決定づける

アンダーボディには、樹枝状に配置された3対のフィンによるボルテックスジェネレーターがあり、リアの空力荷重を高めている。ディフューザーもウラカンEVO比で表面積が70%増加し、角度も4度増すことで下部からの空気の垂直抽出を最大化している。また新しいターボハイブリッドパワートレインによって冷却需要が増したため、ラジエーターのレイアウトも刷新され、冷却性能は30%向上している。

ブレーキ冷却も新たに開発され、ウラカンEVOと比較してディスクの冷却性能は20%、キャリパーは50%向上している。リアセクションには、レヴエルトで実証されたソリューションが採用されている。リアディスクの通風チャネルは、リアホイールハウジング前部に配置されたNACAダクトによって供給され、アンダーボディの高エネルギー流をブレーキ冷却ダクトへと導いている。

AMWノミカタ

スポーツカーにとって空気をコントロールすることは速く走るために最も重要な要素のひとつである。時速100km/hで走るクルマの空気抵抗は、303Nmで約30kgの物体を押す力に相当し、200km/hでは4倍の1213Nmまで増大する。テメラリオの最高速度である340km/hでは3497Nmとなり、おおよそ350kgの物体を押す力がクルマへの抵抗となる。

テメラリオを速く走らせるためには、空力の研究と空気抵抗を押しのける最高出力920psの強力なパワーが必要だということがわかる。また、時速340km/hというスピードはエアバスのような大型飛行機の離陸スピードを超える。大きな揚力を抑え、4輪を確実に接地させるための強力な抵抗となるダウンフォースも生み出さなくてはならない。

今回のテメラリオはウラカンEVOに比べ、リアダウンフォースで103%、ラジエターで30%、ブレーキディスクで20%、キャリパーで50%の冷却性能が向上した。顧客が限界走行をするか、そしてこの数値を個別に体感できるかは別として、テメラリオがこれほどまでに空気と真剣に向き合い、さまざまな工夫を凝らしていることを知ることは顧客にとって大きな安心材料になるのではないだろうか。

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