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もっとも遅くて安いブガッティが1060万円で落札! そもそもは創設者エットーレが息子の誕生日にプレゼントしたジュニアカーがはじまり

6万6000ユーロ(邦貨換算約1060万円)で落札されたブガッティ「T35 ベベII」(C)Courtesy of RM Sotheby's

もっとも遅く、もっとも安価なブガッティがオークションに登場

クラシック/コレクターズカー・オークション業界最大手のRMサザビーズ欧州本社が、レトロモビルに付随する大規模イベントとして、2025年2月4〜5日に開催した「PARIS」オークションにおいても、素晴らしいジュニアカーたちの数々が出品されました。今回は、ブガッティが公式プロダクトとして販売した、小さなT35「ベベII」をピックアップして、その概要と注目のオークション結果についてお伝えします。

4歳の息子のために開発した元祖“ベベ(Bébé)”が、80余年の時を経て復活

この「ブガッティ・ベベII」が6年前、2019年に発売された際には、かなり大きな話題となったが、ブガッティが「ベベ(Bébé=ベビー)」を名乗るジュニアカーを製作・販売したのは、これが初めてのことではない。

ブガッティの開祖エットーレと、当時17歳だった長男ジャンが協力して開発し、1926年に次男であるローランの4歳の誕生日プレゼントとして贈った、2/3スケールのジュニアカーが「元祖ベベ」。当時最新のグランプリマシン「タイプ35」を、2/3スケールのバッテリー式EVとして再現したモデルである

そしてモルスハイムのブガッティ工場の中庭にて、嬉々としてベベを運転しているローラン少年を見かけたブガッティの顧客たちが大いに関心を示したことから、エットーレは同じく1926年のパリ・サロンとミラノモーターショーにて、この電動ジュニアT35を正式発表。ここで大成功を収め、1927年から1936年の間にブガッティの公式な商品カタログに載せられることになった。

当時の価格は5000フラン(250ドル)と非常に高額だったそうだが、ほかのブガッティ製品と同様に当時の王族・貴族や実業家、ショウビジネス界のスターたちといった、非常に裕福な顧客たちによって受け容れられ、約500台が生産されたといわれている。

当時のドーヴィルやラ・ボール、モンテカルロなどの海辺のリゾート地では、裕福な家庭の子女たちによるブガッティ・ベベ・レースが数多く開催されていた。

蛇足ながら、この元祖ベベについては「T52」という車名のほうが有名かもしれないが、じつはエットーレが起こさせた1927年5月20日付のオリジナル図面には、簡潔に「Typ Bébé(タイプベベ)」と書かれていたという。

この混乱については諸説があるようだが、どうやらブガッティ研究の世界的権威である英国のヒュー・コンウェイが、1963年に名著「Le Pur sang des Autmobile」を上梓するにあたり、彼自身の分類のために「タイプ52」と呼んだこと。そして、その表記がブガッティ研究において、そのまま定着してしまったのが原因といわれている。

現代ブガッティの公式ジュニアカーには、早くもプレ値が……?

いっぽう、今回のRMサザビーズ「PARIS 2025」オークションに出品されたブガッティ・ベベII(ベビーII)は、現代の「ブガッティ・オトモビル(Bugatti Automobiles SAS)」社と、ジュニアカーのスペシャリスト「リトル・カー・カンパニー(Little Car Company)」社のパートナーシップの賜物。エットーレが息子ローランに贈ったオリジナル「ベベ」へのオマージュであると同時に、ブガッティという世界最高のブランドの創立110周年を祝う記念プロジェクトでもあると説明されていた。

元祖ベベが、オリジンである「タイプ35」の2/3スケールに縮小されていたのに対して、3/4スケールで作られたベベIIは、その分よりT35に対して正確なプロポーションと、最高品質の部品をふんだんに使用して、ディテールの再現度アップを図っている。

現代に蘇ったベベIIは、オリジナルに匹敵する500台がハンドメイドで製作され、オフィシャルのプロダクトであることを示す、本物の銀製ブガッティ・バッジが付けられた。シリアルナンバー043/500というこの個体は、T35のデフォルト的なカラーリングだった「フレンチ・レーシングブルー」に、黒い本革レザーのインテリアの組み合わせで仕上げられている。

パワー&ドライブトレーンは、最高出力4kWの電動モーターを後輪側に置いた後輪駆動で、リミテッド・スリップ・ディファレンシャルや油圧ブレーキを標準装備するのに加え、制御システムには選択可能なドライビングモードも組み込まれている。このシステムにより、スピードは原則として20km/hに制限されているが、「エキスパート」モードでは45km/hまで出すことができるという。

コックピットも細かく再現

コックピットでは、オリジナルT35と同じ「エンジンターンド(きさげ仕上げ)」を施したアルミニウム製ダッシュボードを装備。当時風のスイッチとT35のレプリカメーターがダッシュパネルを飾る。

くわえて、象徴的な4本スポークのステアリングホイールも忠実に再現されているのだが、クイックリリース機構を備えているため、たとえドライバーが成長したとしても、ドライバーズシートへのアクセスを容易なものとしたうえに、ソリッドアルミニウム製ペダルも調整可能で、理想的なドライビングポジションを保証する、とアピールされた。

またこの個体には、取扱説明書や2基のバッテリーチャージャー、スペアキー、ブガッティ純正キーリング、ナルディ社製の専用ステアリングホイールのためのカバーが付属するとのことであった。

RMサザビーズ欧州本社は、公式オークションカタログにて「エットーレ・ブガッティの自動車作品の愛好家であれば、必ず手に入れたい1台」と謳うとともに、現在の所有者との協議のうえ、4万ユーロ~7万ユーロ(邦貨換算約644万円〜1127万円)というエスティメート(推定落札価格)を設定。

そして2月4日に行われた競売ではエスティメート上限に近い6万6000ユーロ、現在のレートで日本円に換算すれば、約1060万円というけっこうな高価格で競売人のハンマーが鳴らされることになった。

この落札価格は「新車」として発売された当時のプライスを大きく上回るもの。つまりは、誕生から6年しか経っていない「ベベII」は、早くもコレクターズアイテムとして、いわゆる「プレ値」がついていることをうかがわせるのだ。

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