テスタロッサ以降の12気筒ミッドシップがますます注目される?
2025年4月16日、ボナムズがフランスで開催した「Goodwood Members’ Meeting」オークションにフェラーリ「テスタロッサ」が出品されました。このオークションに登場したテスタロッサは、前期型の1986年式。イギリス向けに送り出された右ハンドル仕様でした。
復活を遂げた「テスタロッサ」の中身とは
1984年は、世界中のカーエンスージアストにとって、フェラーリの栄光を振り返るには絶好の年であったといえる。なぜならフェラーリは同年のジュネーブショーにおいて「288GTO」を発表。その半年後のパリサロンにおいては、ここで紹介する「テスタロッサ」を発表したからだ。いずれもフェラーリにとって伝統の車名をリバイバルしたことで、デビューはより華やかなものになったのだった。
復活を遂げたテスタロッサは、それまでのBBシリーズ……より正確に歴史を振り返るのならば、512BBiの後継車として誕生したモデルだった。BBの原点にあるのは1971年に発表された365GT4/BBであったから、同シリーズは約13年間にわたって生産が継続されたことになる。それをどのような新型車に生まれ変わらせるのか。フェラーリがいかに頭を悩ませたのかは想像に難くないところだ。
ピニンファリーナによる美しいデザイン
まずはその美しいボディデザインから話を進めよう。担当したのはもちろんピニンファリーナにほかならないが、ボディサイドにはテスタロッサの大きな特徴ともいえる優雅なスリットが採用された。BBシリーズと比較すると、テスタロッサのデザインには比較的ラグジュアリーな要素が強く感じられる。
もちろんエアロダイナミクスにおいても、テスタロッサではCAD(コンピュータ・アソシエーテッド・デザイン)がデザインプロセスで採用されるなど、より緻密な性能の追求が行われている。
ボディの素材は、剛性面での負担が大きいキャビンまわりはスチール、そのほかのパートは軽量性を重視してアルミニウムを使用。ボディサイズはBBから全長で85mm、全幅で145mm、全高で10mmも大型化されたが、車重は同様の比較でマイナス74kgとなる1506kgを実現することに成功している。
スチール製チューブラフレームを採用
テスタロッサが採用した基本骨格は、角型断面のチューブラーフレームで、メインセクションの前後にはサブフレームを接合。リアサブフレームにはサスペンション、そしてF113A型と呼ばれる5LのV型12気筒自然吸気エンジンが搭載された。ちなみにリアサブフレームの構造は、1992年に発表されたマイナーチェンジ版の512TRでは、軽量化とさらに高い剛性を確保するためメインフレームと一体化されている。
最高出力390psを発揮した5Lユニットには前期型と後期型が存在し、そのもっとも大きな違いは燃料供給システム。いずれもボッシュ製だが、前期型はKジェトロニック、後期型はKEジェトロニックを用いる。エンジンの直下に組み合わせられるミッションは5速MTで、これはBB時代の設計そのままである。その構造から重心が高くなるのは避けられない問題だったが、実際のテスタロッサの走行フィールは、スーパースポーツの名に恥じない、じつに魅力的なものに仕上がっている。
希少な右ハンドルがオークションに登場
今回ボナムズが開催した、グッドウッドメンバーズミーティングオークションに出品されたテスタロッサは1986年式であるから前期型となる。最大の特徴は右ハンドル仕様であることで、これは1986年11月14日に、マラネロ・セールス社からイギリスのカスタマーに販売されたことに直接の理由がある。
クラシックなロッソコルサのボディカラーを持つこのモデルは、2007年12月にやはりボナムズが開催したオリンピアオークションにも出品され、その時点での走行距離はわずかに1万5040kmだったという記録が残る。現在その数字は1万5680kmに増えたのみだが、この間に定期的なメンテナンスと走行が、出品者の「インハウス」メカニックによって行われてきた。それはフューエル・フロー・アキュムエーターやダンパー、フロントボンネットの交換にまで至る、徹底した作業だったとボナムズは語る。
このテスタロッサに対して、ボナムズが提示した予想落札価格は7万ポンド〜9万ポンド(邦貨換算約1315万円〜1690万円)。最低落札価格なしという条件で行われたこのオークションには大きな注目が集まったが、最終的な入札価格は14万9500ポンド(邦貨換算約2810万円)にまで跳ね上がった。フェラーリのクラシケ(クラシック)として、テスタロッサ世代の12気筒ミッドシップは、これからますます注目される存在となるのかもしれない。
