ランボルギーニのコレクターにとって魅力的な1台
2025年2月27日〜28日にRMサザビーズがアメリカ・マイアミで開催したオークションにランボルギーニ「LM002」が出品されました。オークションに登場したのは、1993年式と最終年式で、走行距離は2万2657kmという個体。ドイツへとデリバリーされた1台でした。
ウルスよりも前に登場したランボ製SUV
SSUV(スーパー・スポーツ・ユーティリティ・ヴィークル)と呼ばれるウルスの2018年デビューによって、年間の生産台数を倍増することに成功したランボルギーニ。世界の自動車販売において、すでにSUVが完全にその主役の座に君臨したことは誰もが認めるところだが、ウルスの成功はデビュー前の予想をはるかに超えるものだったといってもよいだろう。
だがランボルギーニにとって、SSUVの名に匹敵するSUV……その時代はまだオフローダーと呼ぶべきなのだろうか。屈強で驚異的な運動性能を誇るモデルを生み出したのはウルスが最初ではない。
1980年代、彼らは「LM002」と呼ばれるオフローダーを市場に投入していた。それはランボルギーニ製のオフローダーとして大きな話題を呼んだのである。
アメリカ軍向けの高機動車として開発と生産
このLM002に至るまでのストーリーは長い。その始まりにあるのは1970年代半ばにランボルギーニが得た、アメリカ軍向けの高機動車として開発と生産。それが実現すれば巨額の利益が得られる魅力的なプロジェクトで、チータと呼ばれるプロトタイプこそ完成したものの、このビジネスは計画半ばにして一方的にキャンセルされてしまう。
ランボルギーニにとって、きわめてショッキングなことであった。その一方でそれまで軍用車として開発してきたチータを、民用車としてモディファイするというプランが社内では立ち上がる。それが実現すれば、これまでオンロードのGT、あるいはスーパースポーツしかプロダクトを持たなかったランボルギーニにとって、より幅広い車種展開が完成することになるからだ。その民用オフローダーの1号車にはLM001の名が与えられ、1981年のジュネーブショーで発表される。
陸の王者の名にふさわしい運動性能を披露
LM001のリアに搭載されたエンジンは、アメリカのAMC社製となる5.9L V型8気筒だったが、ランボルギーニは同時に自社製の4.7L V型12気筒エンジンを332psの最高出力で搭載することにも着手。
さらにそれをリアに配置することは走行安定性の面で問題を残すという理由で、フロント搭載へと変更。そうして誕生したのが、プロトタイプの「LMA」であり、ここで紹介するプロダクションモデルの「LM002」だったのだ。
4輪ダブルウイッシュボーンサスペンションやパワーステアリング、5速MT。そしてパートタイム4WDなどのメカニズムが採用されたLM002は、カウンタックが5000クワトロバルボーレに進化した後のDOHC48バルブエンジン(450ps)を搭載した。オーバー200km/hの最高速に象徴されるように、まさに陸の王者の名にふさわしい運動性能を披露したのである。さらにLM002は、「LM003」、「LM004」へと進化するが、じっさいにプロダクションモデルとしてデビューを飾ることはなかった。
走行距離も控えめの2万2657km
今回RMサザビーズから、マイアミオークションに出品されたLM002は1993年式と生産の最終年式で、走行距離は2万2657kmというモデル。わずか328台が生産されたのみとされるLM002のなかで、ドイツへとデリバリーされたものである。
そのコンディションは良好で、おそらくは新車時に発表された運動性能データを確実に達成できる1台と推測できる。ブラックのボディカラーと、レッドのパイピングが鮮やかなインテリアのコンディションにも不満はない。
2019年にはブレーキと5速MTの整備が行われた。そのほかにも、電気系のメンテナンス、そしてピレリ製スコーピオン・タイヤへの交換も行われた。そして出品車には、オーナーズマニュアルや保証書など、一連のドキュメントが備わるというのだから、ランボルギーニのコレクターにとって、それは大いに魅力的なモデルといえる。
RMサザビーズはこのLM002に35万ドル〜45万ドル(邦貨換算約5220万円〜6710万円)の予想落札価格を提示。最終的な落札価格はその上限をわずかに超える、45万500ドル(邦貨換算約6715万円)という数字で落ち着いた。それが今後のLM002のオークションでの取り引きに大きな影響を与えることは、間違いのないところといえそうだ。
