1992年から毎年進化したランサー・エボリューションシリーズ
2025年5月1日〜5月8日に英国のアイコニックオークショネアーズ社が開催した「Online Auction」。そこに出品された三菱「ランサー エボリューションV」をピックアップします。モデル解説と、注目のオークション結果をお伝えします。
アイコニックオークションは日本車の人気が高い
かつてオートオークションの世界では多くの実績を持っていたシルバーストーンオークションが、2011年に同じイギリスのアイコニック・オークショネアーズと合併。以来彼らはアイコニックオークショネアーズとして、イギリス最大規模のオークショネアに成長を遂げた。そのひとつの理由がインターネットを通じて出品車の売買が可能なオンラインオークションのシステムを開発したことにあった。同社のオート・オークションは、通常の「ライブ カーオークション」と、オンラインの「オンライン カーオークション」に分けられるが、後者は比較的ポピュラーなモデルが出品されるため、一般のカーマニアからも人気が高い。
このアイコニックオークショネアーズでも、日本車の人気は高い。とくにスポーツ系のモデルの人気は圧倒的で、ここで紹介する三菱のランサー エボリューションは、ラリーでの活躍というモータースポーツのイメージもあって、とくに高い人気を博している。さっそく出品車を紹介しよう。
GSRのブレーキはブレンボ製が標準装備
三菱とラリーとの関係は深い。それは1973年に始まり、以来ギャラン、ランサー、スタリオンによって、世界各国のラリーで成功を収めてきた。そして1992年になると、その活動をより強化するために、世界ラリー選手権(WRC)参戦への本格的なワークス活動の取り組みが決定されることになる。
それまでWRCに活躍してきたギャランVR-4で培ってきたAWD技術などをフルに導入して、ギャランよりコンパクトなランサーをベースとした1992年登場のランサー エボリューションが投入された。このモデルをスターティング・ポイントとし、三菱はそれからランサー エボリューションを積極的に進化させていく。1993年にはエボリューションII、1995年にはエボリューションIIIと、激的に進化を見せていった。そしてこの進化を続けるランサー エボリューションシリーズは、市場においてもスポーツサルーンのファンから常に高い支持を得たのである。
出品車はピレネーブラック
今回アイコニック・オークショネアーズが、オンラインオークションに出品して、1万8000ポンド~2万2000ポンド(邦貨換算約348万円~425万円)というエスティメートを掲げたのは、1998年式の「ランサー エボリューションⅤ」だ。1996年に登場したエボリューションIVからシャシーを一新し、さらにエンジンの搭載位置も左右逆にするなど、大幅な進化を遂げている。そしてエボリューションVでは、全幅が1770mmとワイドボディを初めて採用。それはタイヤサイズを225/45R17へと拡大することが直接の理由だった。
ブレーキはブレンボ製が出品車のGSRでは標準となり、フロント倒立式ストラットやアルミ鍛造ロワアームなど、サスペンションのさらなるチューニングとともに、運動性能を大きく向上させることに貢献した。
搭載されるエンジンは2Lの直列4気筒ターボ(4G63型)で、最高出力は280ps、最大トルクは373Nmを発生する。最高出力のデータはそれまでとは変わらなかったが、最大トルクはブースト圧の向上などでより魅力的な数字となっている。ほかには改良型インタークーラーの装備やツインスクロール型ターボのノズル面積拡大、ピストンの軽量化、改良型ラジエータとオイルクーラーなどが、エボリューションⅤでの技術面での特徴だ。ミッションは5速MTが唯一の設定。車重はこのGSRでは1360kgとされた。
1998年に1年のみ生産されたエボリューションⅤには、5色のボディカラーが設定されていたが、出品車はその中のピレネーブラック仕様。現在までの走行距離は、9万2000kmを超えたところで、さまざまな整備履歴があり、ここ数年はメカニックであるオーナーが大切に維持してきた。
注目のオークションの結果は、1万8020ポンド(邦貨換算約348万円)と、エスティメートを超えたラインでの落札。日本の中古車市場を見ても300万円〜540万円といった価格帯を考えると、入札者にとっては非常に良い買い物になったようだ。
