本格的泥系競技が7月に開催される!
オフロードで争われる競技といえば、WRCなどのラリーを思い浮かべる人が大多数だと思いますが、じつはクロスカントリービークルを使った競技イベントがありました。その名も「Rainforest challenge JAPAN」。2025年は7月26日と27日に開催が決定。どのようなイベントなのか、2024年の模様を紹介いたします。
RFCとはどんな競技?
街にSUVとカテゴライズされているクルマが、ミニバンと同じように目にするようになって久しい。腰高のボディに4WD(2WDもあるが)という取り合わせの装備で街中から自然の大地までというメーカーのイメージ戦略はともかく、一般の人にとって万能な走行性能を得たクルマの印象だが、そのSUVを凌ぐ本当にヘビーデューティなクルマのカテゴリーにクロスカントリービークルがある。そのクロスカントリー車が人気を吹き返し、新型のモデルが投入のラッシュとなっている昨今、車両の持つオフロード走行性能は着実に上がっており、そこに起因するタイヤや足廻りなどの様々なパーツ類の進化も目覚ましい勢いだ。
そんなクロカン車の走破力を存分に楽しめるイベント「Rainforest challenge(以下RFC)JAPAN」が本年も開催される。そこで、昨年2024年7月6日と7日にオフロードゾーン茂木にて行われたRFCの模様を振り返ってみよう。
そもそも、「Rainforest challenge」とはなんだろうか。主催する本部が、熱帯雨林生い茂る森の国マレーシアに拠点を置く、Rainforest Challenge International(以下RFCI)なる管理会社が運営するオフロードイベントの一つである。
RFCは、プロローグ スペシャル ステージ(SS)およびプレデター、ターミネーター、トワイライト ゾーン、サバイバル、フィナーレSSと呼ばれる特定のレース セクションで一般公開され、4×4、ATV、エンデューロ バイクを含むUTVのエクストリーム オフロードレースであり、タイム計測で競い合う。要は設定された「SS」なるセクションごとに制限時間内で、いかに早くコース走行クリアするかというタイムトライアル競技なのだが、コースのレイアウトが複雑かつ、難地形なコース設定になっている為、当然、各SSに決められたターゲットタイム内でクリアできなければそのSSは不完走となってしまう。各SS順位の早い順よりそれぞれポイントが与えられ、最終的に合計ポイントが、より高得点を獲得した者が優勝となるのだ。
RFCが2012年以降、RFC グローバル シリーズ (RFCGS) にまで広がり、アジア、オセアニア、ユーラシア、ヨーロッパ、アメリカ大陸でイベントが開催され、30か国以上に主催者と代表者が存在する。RFCGS イベントは、60か国以上の4×4愛好家に熱心にフォローされており、RFCGS イベント サーキットは、6大陸の多くの国をカバーするように世界中に拡大している。毎年各国のイベント上位者が、1997年以来11月末から12月初めにかけて、マレーシアで RFC Grand Final イベント(またの名をマザー RFC とも呼ばれる )世界一決定戦を開催、世界中のオフロード愛好家がマレーシアに集結。RFC JAPANは日本国内でのファイナル挑戦権を獲得する予選会のようなものなのだ。
クロカンで冒険しよう!
この他にもレース形式を伴わないイベント、レインフォレスト トロフィー(RFT)があり、遠征、冒険、観光の発見に重点を置いたイベントで、2017年より開催されている。RFTは現在、4×4オーナーが操縦し、4×4の走破性能を体験し、4×4について学び、旅の途中で興味深い場所を発見する為のもう1つの象徴的なイベントと見なされている。
参加者は団結して、しばしば広大な道路を旅し、母なる自然と共に生きることの真髄を体験。このように、RFCIのすべてのイベントは発案者であるルイス J.A.ウィー氏によって創設され、1997年より、今年で27年を迎えるに至っている。
まるでラグビーを思い起こさせる選手間の関係性
2024年で4回目の開催を迎えたRFC JAPANは、ドライバー/コドライバーの2人一組となるチームで3組、6名の参加者で競われる少数精鋭の競技となった。参加者を紹介すると、04号車:安田・早川/ジムニー、16号車:小柴・桜井/JKジープラングラー、17号車:志熊・泉/BJ74ランドクルーザーという車種、車格、車重、ホイールベースなど、三者三様のマシンが同一コースをそれぞれのメリットを活かすべく、どう走破するかがとても見応えのある内容だ。
また、すべての競技車に備えられたウィンチなどのギアをどこでどう使うかという技能や勘所など、それぞれコンビの経験値も試される部分も見どころとなる。コースを走り抜けるより、時にはウィンチングで車両を引っ張り進む方が早い場合もあるような、とても一筋縄ではいかないコースレイアウトなので、それぞれの車両の違いを含めた判断がなんとも興味深いのだ。
競技は一日目のステージをターミネーターゾーン、二日目のコースステージをプレデターゾーンと呼び、それぞれSS1~5、SS6~9の2日間、全9SSで争われた。コースは森の中にレイアウトされた起伏が伴う鬱蒼とした中でのコースであったが、天候が1日目の日没後に夕立に見舞われたくらいで、概ね晴れの気温35度という真夏の気温の中で行われた。中にはすり鉢状の泥水が車体のウェストラインあたりまで浸かるような池を走り抜けるトリッキーな障害などもある難攻不落なSSが目白押し。そんな中、日本では見かける事のない脱出器具のグラウンドアンカーを用いるSSを用意。予め、競技前に参加者に使い方をレクチャーした上で、この器具を使って臨むSS5のようなセクションがあり、悪路踏破においてのノウハウを初体験しながらコースクリアを狙う。こんなアカデミックな要素も併せ持つイベントなのだ。
この日、SSをいくつか終わった時点で04号車にトラブルが発生。車体の軽さが一つのアドバンテージだったジムニーはウィンチングで前進する走法がコースクリアをしていく上で有効的なのだが、肝になるウィンチにトラブルを抱えてしまった。何度かSS間のインターバルに修理を試みるが改善がみられず、1日目終了後にウィンチを下ろして分解して見ると、中のパーツが割れていたことが判明。
普通ならこの時点でリタイヤとなるのだが、ここからがこの競技の真骨頂。周りのエントラントも協力して、知恵を出し合って、持っている機材を駆使してなんと、ウィンチを修復してしまうのである。タイムトライアル中はライバルである関係も、SSが終わると四駆仲間として、みんなで知恵を出し合い、助け合う。ラグビーを思い起こさせるような選手間の関係性だ。
ラングラーが優勝を勝ち取る
競技は2日目のプレデターゾーンに入り、昨日何とか修復した04号車も無事競技に加わって、SS6に突入した。
この日も気温は35度前後の猛暑の中、山の中にある道なき道のコースを3チームの車両がそれぞれの方法で様々なレイアウトのSSをクリアして行き、SS9を走り終わって競技終了。力量感たっぷりな走りで終始リードを保った16号車の小柴/桜井組のJKラングラーが優勝を掴み取った。
この競技の紹介の最後に創設者ルイス J.A.ウィー氏のこのイベントへの呼びかけの言葉を紹介したい。
「人生は冒険です。人生を最大限に楽しみましょう。今日できることなら明日まで待たないでください。人生のあらゆる瞬間を毎日楽しんでください。」
果たして、2025年度はどのようなドラマが待ち受けているのか、楽しみである。
