貴重なタイプCエンジンを“ハコ替え”で今も楽しむ
旧車ファンが集う早朝の奥多摩。なかでも第1日曜日は、いすゞ車が多く集まることで知られています。その現場を訪れると、希少な限定車のエンジンを移植したジェミニに出会いました。早速紹介をしていきます。
新車で購入した限定モデルを事故で失うことに
奥多摩の駐車場に、まだ空きがある時間帯から白い3代目ジェミニが姿を現した。大きなエアダムを装着し、側面にはRSのステッカーが備わりスポーティな雰囲気だ。不思議なオーラに惹かれ、オーナーの土師(ハジ)さんにお話を伺ってみた。
「じつは1992年式のジェミニの限定車でイルムシャータイプコンペティションというクルマを新車で購入してずっと乗っていたんですが、2013年に事故にあってしまって、車両をダメにしてしまったんです。そこでこの1992年式を購入して、エンジンやトランスミッションはもちろんですが、ハンドルや追加メーター、シリアルナンバーが刻印されたプレートなど、可能な限り移植してあります」
手組みエンジンを搭載する“幻の競技ベースモデル”イルムシャー タイプコンペティション
イルムシャータイプコンペティションは、1992年に50台限定で発売された競技向けの車両。ボディカラーはレッドのみで、4WDモデルが30台、土師さんが購入したFFモデルはたった20台しか発売されなかった幻のモデルだ。エンジンは手組みされ、バランス採りなどが行われているほか、トランスミッションはクロスレシオという特別な車両。それゆえラリー競技などに使われていたケースが多く、現存台数は極めて少ないと思われる。
残念ながら事故にあってしまった土師の愛車は、貴重なエンジンなどを別の1992年式イルムシャーのボディに移植したというわけだ。エンジンにタイプコンペティションの証であるCの文字がブロックに刻印されているのが特徴。ボンネットは土師さんがDIYでドリルド加工して軽量化している。
ホイールは懐かしいスプリントハートのCP-R
コンポーネンツを移植したこの白いイルムシャーは、元々名古屋の専門店JERALDの車両だったようで、リアガーニッシュ部分を外して同社のロゴが貼られている。フロントバンパーはガレージG5で、フロントグリルやサイドステップなどは純正オプション、ルーフスポイラーはタイプコンペティション純正、リアウイングはJERALDのカスタム品だ。
ちなみにドアのRSステッカーは、先代ジェミニに設定されたラリースペシャルという特別仕様車のステッカーを前オーナーが貼ったそうだ。ホイールは懐かしい15インチのスプリントハートCP-Rをチョイス。これに195/50R15サイズのタイヤを組み合わせている。
見た目はことく異なってしまったが、土師さんが新車で購入したタイプコンペティションは、このクルマの中に生き続けているわけだ。
