走りの性能とカーボンニュートラルを融合したLサイズミニバン
エントリ−グレードの車両本体価格が510万円からという国産Lサイズミニバンのトヨタ「アルファード/ヴェルファイア」。高額車ながら新車販売台数は常にベスト10にランクインするほどの人気車です。今回は2024年12月に追加されたプラグインハイブリッド車(PHEV)で東京〜大阪1000kmのロングドライブを行い、走行&燃費性能をチェックしました。
ノーズダウンを抑制する「スムーズストップ」制御により、快適なフラットな乗り味を実現
国産Lサイズミニバンは、初代日産エルグランドが開拓した市場だ。しかし一般社団法人 日本自動車販売協会連合会の発表した2025年5月の新車販売台数を見ると、トヨタ アルファードが5324台で10位。そしてトヨタ ヴェルファイアが2065台で23位にランクインしている。
対して、このクラスのパイオニアである日産エルグランドは120台、ホンダのフラッグシップミニバンであるオデッセイは443台と、まさにひと桁違う販売台数となっているのだ。しかも、2023年に登場した現行モデルはエントリーグレードのアルファードハイブリッドX 2WD車でも510万円という高価格車。それでもアルファード、ヴェルファイア合わせて7000台以上売れているというのだから驚異的と言える。
キングオブミニバンという位置を手に入れてもトヨタアルファード/ヴェルファイアは守りに転じることはない。2024年12月に日本初のミニバンPHEVをアルファード/ヴェルファイアに導入し、ライバルにつけいる隙を与えない。
1085万円のヴェルファイアPHEV エグゼクティブラウンジで東京~大阪で燃費テスト
2024年12月、カーボンニュートラルに貢献する日本初のミニバンPHEVとしてトヨタアルファード/ヴェルファイアPHEVが登場した。ご存じのとおり現行モデルはアルファードとヴェルファイアは外観のバッヂ違いだけでなく、細部に渡って個性が主張されており、車両本体価格はアルファードPHEVエグゼクティブラウンジが1065万円、ヴェルファイアPHEVエグゼクティブラウンジは1085万円と20万円差がある。
この価格差は、ヴェルファイアは意のままの走りを追求した専用チューニングが施されているからだ。ヴェルファイアは、エンジンルーム内のラジエータサポートとサイドメンバーを繋ぐ部分にフロントパフォーマンスブレースと呼ばれる専用のボディ剛性部品を追加。走り出しから車両がしっかりと動く応答性の良さを実現し、運転する楽しさを味わうことができる。
搭載されている2.5Lエンジンのプラグインハイブリッドシステムは、満充電時のEV走行換算距離は73kmを達成。バッテリーに充電した電力だけで、街乗りの多くをEV走行、長距離移動時はエンジンを併用して電欠の心配なくロングドライブを楽しむことができる。
出力密度の高い駆動用モーターを搭載したハイブリッドシステムは、システム最高出力306psを発生。モーターアシスト領域を増加し、エンジン回転数を抑制したことによりエンジンノイズを低減するだけでなく、ハイブリッド燃費はWLTCモードで16.7km/Lを実現している。
AC100Vのほか住宅に電気を供給することもできる
プラグインハイブリッドシステムは、200V普通充電に加え、CHAdeMOによる急速充電も可能。充電時間は約38分で満充電量の約80%まで可能となっている。そのうえ、停電・災害時などの緊急時やアウトドアに役立つ、最大1500W(AC100V)の外部給電機能を標準装備している。またクルマに蓄えた電気を住宅に供給するV2Hを設定。災害などの停電時でも、頼れる“蓄電池”として活用できる。
充電時にパワースイッチをONにすると、外部電源の電力を利用してエアコンやオーディオの使用が可能になる「マイルームモード」を搭載。エンジンをかけずに車内で快適に過ごすことができ、テレワークや休憩などに活用できる。
アルファード/ヴェルファイアPHEVは、大容量リチウムイオンバッテリーを車体中央床下に搭載することで、室内空間の広さをスポイルすることなく、ハイブリッド車に対して35mmの低重心化を実現。ボディ骨格の最適化と相まって、揺れの少ない乗り心地と安定した走りを追求している。
ブレーキとサスを統合制御する「スムーズストップ」採用
さらに、停止間際の急激なノーズダウンを抑制する「スムーズストップ」制御を新たに採用するなど乗員の姿勢を安定させることで、上質な乗り心地を実現している。この機能は、車両のブレーキとサスペンションを統合制御することで、ブレーキを掛けた際に揺り戻しを抑えてくれるというもの。また、ドライバーがブレーキペダルを強く踏み込んだことで、車両が前のめりになるのを抑えるブレーキ車両姿勢制御(ピッチ制御)も採用。ドライバーを選ばず発進時やブレーキ時の前後方向の動きを抑えてくれるスグレモノだ。
加えてPHEVの専用装備として品格を際立たせるシルバースパッタリング塗装の専用19インチアルミホイールをはじめ、インテリアでは本杢ステアリングホイール、ウルトラスエード貼りの天井の採用により上質で特別感のある室内空間を演出している。
今回東京~大阪のロングドライブを行ったのは車両本体価格1085万円のヴェルファイアPHEVエグゼクティブラウンジ。6人乗りで、駆動方式はE-Fourと呼ばれる電気式4WD。オプションとして、ヴェルファイア専用のボディカラー、プレシャスメタル5万5000円。ユニバーサルステップ(スライド左右/メッキ加飾付)6万6000円、ITSコネクト2万7500円、15mの充電ケーブル8800円、フロアマット13万2000円、セカンドシート前方に敷くラグマット1万5400円の合計1115万4700円という仕様だ。
ナビで目的地をセットすると低燃費なルートを選択
東京出発時ガソリン満タンそして満充電でスタート。メーター上での走行可能距離は、ガソリンで507km、バッテリーが69kmの合計576kmで大阪には無給油、充電なしで到達できる。しかし、取材当日は最高気温33℃という夏日で、エアコンの使用量が大きく影響しそうだ。
今回のロングドライブは、ナビゲーションで目的地設定すると、目的地までの経路における各区間、例えば市街地か山岳路かの走行負荷を先読みし、最適な区間でEV走行することで効率的な走りを実現。低燃費に寄与する先読みEV/HEVモード切替制御を積極的に使用して走行した。
またPHEVはエネルギーの地産地消が特徴なので、走行中でもシステムバッテリーを充電できるバッテリーチャージによる燃費の影響を、大阪での給油後から泊地の滋賀県近江八幡までの約100kmでテストした。
またテスト車のヴェルファイアPHEVエグゼクティブラウンジの車両重量は2470kg。ハイブリッド車のエグゼクティブラウンジ4WD車は2310kgなので、160kgの車両重量増となっている。この車両重量増が走行&燃費性能にどのような影響を与えるのだろうか。
ドライバーだけでなく同乗者も安定性の高い乗り心地
ヴェルファイアPHEVエグゼクティブラウンジの走りは、人が乗ると2.5tを超えるヘビー級のクルマとは思えないほどスムースかつ静かな走りが特徴だ。これだけ大きなボディながら身のこなしはしなやかで、東名高速の大井松田~御殿場間のワインディング区間も素晴らしいハンドリング性能により気持ち良く走ることができる。
気持ち良いのはドライバーだけでなく、セカンドシートに乗った乗員も同様だ。補強されたボディにより、ねじり剛性が向上。コーナーを曲がる際でもリアの遅れをまったく感じない。またセカンドシートの床面の揺れも抑えられており、まさにエグゼクティブな空間に仕立てられている。
運転支援機能の制御も抜群だ。レーダークルーズコントロール使用時に先行車との差が詰まっても、ブレーキの介入がとても穏やかで、クルマの前後の揺れがまったくない。これは小さなお子さんなどのクルマ酔いには効果があるだろう。
結論としてハイブリッド車からの車量増をまったく感じさせない動力性能。エグゼクティブラウンジの名前に相応しい静粛性とフラットな乗り心地を実現していた。
カタログ燃費の約90%相当の15.3km/Lを記録
そして注目の燃費性能は、車載燃費計で計測を行った。東京出発時はバッテリーによる走行可能距離が69km。ガソリンによる走行距離は507km。合計で576kmが走行可能距離だった。大阪に到着して給油した際の走行距離は546.9kmで残走行距離は61kmという表示。じつに満タン・満充電で600km走行可能だ。
給油後、宿泊地の滋賀県近江八幡までバッテリーチャージモードを使用して走行すると、一般道と高速道路を約83km走行し、54km走行分充電された。しかしその際の燃費性能は8.3km/L。通常のハイブリッドモード走行時と比べると、エンジン音も大きくなるし、燃費性能もかなり悪化してしまう。エネルギーを地産地消できるのがPHEVの特徴であるが、これほど燃費が悪化するとなると、駐車している際に充電し、通常はハイブリッドモードで走行したほうが得策かもしれない。
復路も通常のハイブリッドモードで走行。大井松田から御殿場間で約14kmの渋滞があったものの、この区間の平均燃費も14.7km/Lで留まり、全行程の平均燃費は15.3km/Lと、カタログ燃費の91.6%という高い達成率を実現。ハイブリッド車はカタログ燃費と実燃費の乖離が大きいと言われるが、見事に打ち破ってみせた。これはEV走行比率51%という効率の良さが大きく貢献しているのだ。この計測結果で計算するとガソリンとEV走行を合わせた航続距離は約780kmとなる。
テスト前は、ハイブリッド車のタンク容量60LからPHEVは47Lへと減少していることが、長距離走行における航続距離が懸念材料だったが、それはまったくの杞憂に終わった。2日間で1000km以上走行したが疲労度の低さを実感し、これまで乗ったミニバンとは一線を画す性能をもつスーパーラグジュアリーミニバンであるのは間違いない。