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世界に29台しか存在しない特別なボディカラーのフェラーリ「246GTS」が7680万円で落札

44万8500スイスフラン(邦貨換算約7680万円)で落札されたディーノ「246GTS」(C)Bonhams

幻のシルバーが美しく蘇った1台

2025年6月28日にスイスで開催したボナムズの「THE BONMONT SALE」オークションに出品された1974年式のフェラーリ「ディーノ246GTS」。新車時にわずか29台しか存在しなかったシルバーボディを持つこの個体は、アメリカ仕様として生産された1台です。クラシック部門「クラシケ」の支援を受けて当時の仕様が見事に復元され、約7680万円で落札されました。

フェラーリが築いた“もうひとつの系譜”

1966年にフェラーリがスポーツカー選手権に投入したディーノ「206S」は、期待どおりにさまざまなレースで大活躍することになる。当時、ポルシェ「911」に匹敵するコンパクトなニューモデルを市場に導入することを考えていたフェラーリにとって、206Sの成功はそれを目的とする新型車の開発に大きな追い風となった。

1968年、206Sと同様にV型6気筒エンジンをミッドシップに搭載して誕生したディーノ「206GT」は、フェラーリに新たな市場を築かせたモデルである(なお206Sと206GTとでは、エンジンの搭載方向が異なる)。

206GTから246GTへ、進化する小型ミッドシップ

2LのV型6気筒エンジンをミッドシップする206GTは、しかしながらアルミニウム製のボディを採用していたことなどもあり、生産効率はあまり高くなかった。実際、1969年までに出荷された台数は152台にすぎない。

この状況を打開するため、フェラーリとフィアットが選択したのは、ヘッドこそアルミニウム製としたものの、より生産効率に優れるスチール製ブロックを採用。排気量を2.4Lに拡大することで扱いやすさを高めた新型エンジンを搭載することだった。ボディも加工が容易なスチール製とした進化型「ディーノ246GT」をリリースし、1969年から生産が開始されると、すぐに市場で高い評価を得ることとなった。

追加されたオープン仕様の246GTS

ディーノ246GTは、そのディテールによって「L」「M」「E」の各タイプに分類される。今回オークショネアのボナムスがスイス・シェズレで開催した「ザ・ボンモント・セール」に出品したオープン仕様の「246GTS」は、1971年に発表されたモデルで、ベースはタイプEの246GT。エンジンもミッドに横置き搭載される2.4LのV型6気筒で、最高出力195psという点も246GTと同じである。

アメリカ仕様として出荷された1台

今回出品されたディーノ246GTSは、「07884」のシャシーナンバーを持つ個体。フェラーリの記録によれば、1974年3月25日にアメリカ仕様としてラインオフされたモデルだ。アメリカ仕様では排出ガス規制に対応するため、最高出力を180psに抑えた専用エンジンを搭載。灯火類なども独自の仕様とされていた。

この「07884」はアメリカに輸出されたのち、ペンシルベニア、ニューヨーク、ニュージャージーの各州を渡り歩いた。その後、スイスのヴォーレンに在住する世界的なフェラーリ・コレクター、フランク・フィッシャー氏の手に渡ったという事情もあり、のちにヨーロッパ仕様と同様の仕様に改められている。

カラー・レシピを入手して新車時の色合いを復活

この車両は新車時、「セレスティ・メタリッツァート」と呼ばれるシルバーでペイントされていた。アメリカでの所有期間中にはレッドへと変更された記録が残るが、2002年に入手したスウェーデン在住のオーナー、すなわち今回の出品者は、フェラーリのクラシック部門「クラシケ」の支援を受けて当時のカラー・レシピを入手。美しいシルバーが再び復活することになった。

なお、同色でラインオフされた246GTSはわずか29台しか存在していない。また、ブルー・コノリー・ヴァンムールを基調とするインテリア・トリムも美しく再現されており、スピードメーターがマイル表示からキロ表示へと変更されたことを除けば、新車時の仕様が見事に再現されている。ちなみに、交換されたマイル表示のスピードメーターも今回のオークションに含まれていた。

オリジナルエンジン付きで将来性も抜群

現在この「07884」に搭載されているエンジンは新車時のものとは異なるが、オリジナルのナンバーを持つエンジンも落札者に引き渡される予定。つまり、新オーナーが望めば、それを搭載し完全なオリジナル状態へ戻すこともできる。クラシケ認定の取得も視野に入ることから、これは大きなセールスポイントであった。

気になる落札価格は?

今回、ボナムスが提示したエスティメート(予想落札価格)は45万〜50万スイスフラン、日本円にして約7700万〜8560万円という高額なレンジ。しかし、最終的な落札価格は44万8500スイスフラン、日本円にすると約7680万円で決着することになった。

今後もこのディーノ246GTSは、世界のオークション・シーンで高い注目を集める存在であり続けるだろう。

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