フェラーリ348シリーズはスパイダーも順調に高値安定?
日本国内でもCSディスカバリーチャンネル「名車再生!クラシックカー・ディーラーズ」の名でカーマニアに高い人気を博している英国のレストア番組「Wheeler Dealers」。2025年6月1日、同番組は英国の新興オークションカンパニー「アイコニック・オークショネア」社をパートナーに迎え、これまで番組内やスピンオフ版「名車再生!ドリームカー大作戦」などで取り扱ったクルマと同型車を中心に販売するオークション「The Classic Sale at Wheeler Dealer Live 2025」を開催した。今回はそのなかからフェラーリ「348スパイダー」を紹介する。
2シーターV8フェラーリ初のフルオープン!348スパイダーとは?
「348」シリーズのデビューから約3年半後となる1993年2月、ロサンゼルス・ビバリーヒルズのロデオドライブで行われたワールドプレミアにて発表された「348スパイダー」である。量産フェラーリ・ストラダーレ史上でも初のチャレンジとなる、2座席フルオープン×ミッドシップのコンビネーションに成功したモデルだ。
同じミッドシップでも、2+2の「モンディアル スパイダー」では後席スペースを若干狭めることによって、折りたたんだソフトトップを納めるスペースも比較的容易に確保できた。しかし、もとより2シーターでリアスペースの乏しい348では、折りたたみ式のフルオープン化はかなりの苦労を要した。ソフトトップの開閉は、運転席シートバック脇のレバーで操作する、コンベンショナルなマニュアル方式とされていた。
いっぽう主要メカニズムは、ほぼ時を同じくしてデビューした348tb/tsのマイナーチェンジ版「348GTB/GTS」と共用される。V型8気筒DOHC 32バルブ・3405ccのエンジンは320psを発生。車両重量は348GTBと比べてもわずか20kg増(メーカー公表値)にとどまり、そのパフォーマンスは当時のオープンスポーツカーとしては世界屈指のものであった。
翌1994年になると、後継モデルたる「F355」シリーズが登場。348シリーズとしては究極的なモデルとなるはずだった348GTB/GTSは、1年余りの短命に終わるが、348スパイダーはF355にスパイダーが設定される1995年春まで生産が継続された。
もっともリーズナブルな2シーターV8フェラーリの取引価格が大変貌
このほど「The Classic Sale at Wheeler Dealer Live 2025」に出品されたフェラーリ348スパイダーは、スピンオフシリーズ「名車再生!マイクのワールドツアー」シーズン1最終ステージのイタリア篇にて、マイクが最終目標を達成して購入した個体と、ハンドル位置や内装色を除けばほぼ同じモデル。フェラーリとしてはクラシックな選択である「ロッソ・コルサ(Rosso Corsa)」のボディに、「クレーマ(Crema:クリーム色)」のコノリー社製レザー内装を組み合わせた新車時代の仕様が、現在もそのまま維持されている。
また、トランスミッションは「355F1」で世界初のパドル式シーケンシャルMT「F1マティック」が採用される以前は唯一の選択肢であった3ペダルのマニュアル。この時代は前進5速である。
歴代のオーナーは1990年代のフェラーリとしては極めて少ない。総計3人の所有者しか記録されていないためか、ボディは美しく保たれており、インテリアも清潔。異常な摩耗や損傷はないとのことだ。
公式オークションカタログ作成時点での走行距離は約2万8000マイル(約4万4800km)で、現在に至るメンテナンス履歴は、新車当時にフェラーリの正規代理店だった「マラネッロ・コンセッショネアーズ(Maranello Concessionaires)」をはじめ、「グレイポール(Graypaul)」、「ディック・ロヴェット(Dick Lovett)」など、イングランドにおけるフェラーリの主要なディーラーによるものが大部分を占めている。
直近の大規模メンテナンスは、2024年2月23日に英国サリー州エプソムのフェラーリ専門工場「オート・オフィチーナ(Auto Officina)」において、走行距離2万7647マイルの時点で実施。「360」シリーズ以前のV8フェラーリでは必須とされるカムベルトをはじめ、オルタネーターベルトやエアコンベルトなどを交換。また、スパークプラグやワイパーブレード、オイルパイプ、クラッチプレート、イグニッションコイル、イグニッションリード、オイルとフィルター交換、燃料フィルター、エアフィルター、トランスミッションオイル、ブレーキ液などもそれぞれこの時点で新品に交換された。
さらに、プロフェッショナルによるパウダーコーティングを施した純正アロイホイールに、4本の新品ミシュランタイヤを装着するなど、万全のコンディションを誇っている。
人気上昇の兆し?1100万円超で落札された348スパイダー
昨今のコレクターが1980年代と1990年代のヤングタイマー・クラシックに注目するなか、348は再び人気を博しているという。それゆえか、アイコニック・オークショネア社では今回の出品にあたり、5万5000ポンド〜6万5000ポンド(邦貨換算約1090万円〜1290万円)という、以前の348スパイダーの相場を大きく上まわるエスティメート(推定落札価格)を設定した。
そして、ビスター・モーションの特設会場で行われた競売では、ギャラリーに見守られるなかビッド(入札)が順調に伸び、終わってみればエスティメート上限を超える5万6250英ポンド。現在のレートで日本円に換算すると約1100万円に相当する、かなりのハンマープライスで落札に至ったのだ。
あくまで推測ながら、生産から20年以上を経たフェラーリが対象となり、国際マーケットでの評価を大きく底上げする「フェラーリ・クラシケ」の認定をもしも受けているならば、当然のごとく公式オークションカタログにも堂々と記されるはず。それが存在しないのであれば、現時点でクラシケ認定は受けていないとみるのが妥当である。
にもかかわらず、これまで「もっとも安価な2座席V8フェラーリ」などと称されてきた348スパイダー、しかもクラシケ認定なしの個体であってもこれだけのハンマープライスが獲得できるというのは、このモデル全体の相場価格が上昇している……? と考えるのが妥当かと思われたのである。
