クラシック・フェラーリとして1440万円の価値とは
1994年に登場したフェラーリ「F355」は、今なお多くのファンを魅了し続ける名車です。なかでも1995年に追加されたフルオープン仕様「F355スパイダー」は、ラグジュアリーな雰囲気と軽快な走りを兼ね備え、オークションでも高い人気を誇ります。ボナムスが主催する英国グッドウッド・オークションに出品された1998年式のF355スパイダーは、予想を大きく上まわる高値で落札されました。
名作F355に加わった電動フルオープンモデル
フェラーリが1994年に発表した「F355」は、現在でもなお多くのファンに支持される名作として知られている。そのF355シリーズに1995年、フルオープン仕様の「スパイダー」が追加設定された。
F355にはそれ以前にも、タルガトップを備えることでオープンエアの爽快感を味わえる「GTS」が存在していたが、やはりソフトトップを採用したスパイダーの注目度はGTSを大きく上まわった。
F355の前身である348シリーズにもスパイダーは存在したが、F355スパイダーではソフトトップの開閉が電動化された。ドライバーはフロントのロックを手動で解除する以外、スイッチ操作だけでオープンとクローズを切り替えられる仕様となっている。
エクステリアデザインはベルリネッタ(クーペ)やGTSと同様にピニンファリーナが担当。オープンスタイルのサイドビューは軽快かつラグジュアリーで、走りへの期待感を高めると同時に、高級感も漂わせている。この魅力こそが、F355スパイダーの人気が衰えない理由のひとつである。
右ハンドル仕様がイギリスのファンに注目されたのか?
ミッドシップに縦置き搭載されるパワーユニットは、F355のために新設計された3495ccのV型8気筒DOHC5バルブエンジン。最高出力は380psを発揮し、当初は6速MTが組み合わされていたが、シリーズ途中からはクラッチとシフト操作を自動化したセミAT「F1マチック」も選択可能となった。
グッドウッド・オークションに出品されたのは、このF1マチックを搭載した1998年式モデルで、F355の生産終了が翌1999年であったことから、ほぼ最終型といえる。
主催者のボナムスによれば、この車両は1998年1月28日にイギリス・エセックス州のカスタマーへ納車され、5人のオーナーを経て2007年から現オーナーが所有している。1999年から2006年までに6回のメンテナンスを受け、さらに2009年と2022年にも整備記録が残る。走行距離はわずか1万5800マイル(約2万5280km)で、コンディションは良好だ。
右ハンドル仕様という点もあり、イギリスのフェラーリファンから注目された今回の個体。ボナムスは5万〜7万ポンド(約740万〜1034万円)の予想落札価格を提示していたが、入札は予想を大きく上まわり、最終的に9万7750ポンド(邦貨換算約1444万円)で落札された。なお、同じオークションには同年式のF355ベルリネッタも出品されたが、こちらは予想価格6万〜7万ポンドに届かず、流札となっている。
新車デリバリーから20年以上が経過したF355シリーズは、クラシック・フェラーリとしての地位を確立している。今後ますます入手困難になることは間違いなく、相場を把握するためにもオークション結果のチェックは欠かせない。
