希少な右ハンドル仕様と453万円分の整備履歴
フェラーリ「308GT4」は、V8ミッドシップ・フェラーリの原点とされるモデルです。今回、1975年式の右ハンドル仕様がボナムス主催のグッドウッド・オークションに出品され、約650万円で落札されました。クラシック・フェラーリの高騰傾向のなか、注目すべき落札結果とモデルの魅力を振り返ります。
登場当初のディーノからフェラーリとして販売された308GT4
フェラーリは、いつの時代もカー・エンスージアストにとって憧れのブランドだ。しかし、それを所有するという夢は誰にでも叶うわけではない。だからこそ「もっとも安く手に入れられるフェラーリは何か」という疑問は、多くの人が抱くものだ。その答えのひとつとして常に名前が挙がるのが「308GT4」である。先日、このモデルがボナムス主催のグッドウッド・オークションに出品されたので、その結果を報告したい。
308GT4は、現在まで続くV8ミッドシップ・フェラーリの原点にあたるモデルで、ディーノ246GTの後継として1973年に登場。当初は「フェラーリ」ではなく「ディーノ」の名が与えられていた。1975年にディーノ・ブランドが廃止されると、1976年以降は「フェラーリ308GT4」として販売されるが、両者は基本的に同一モデルである。また、この308GT4をベースに1975年に登場した「208GT4」は、V8エンジンの排気量を2926ccから1991ccに縮小したイタリア国内専売仕様であった。
直線基調のベルトーネデザインと2+2の実用性
デビュー時に話題となったのは、そのボディデザインである。前任の246GTは曲線美を活かしたピニンファリーナのデザインだったが、308GT4はベルトーネによる直線的なスタイルを採用。この造形は2+2ミッドシップという設計上の要請によるものだったが、246GTの後継とするには好みが分かれた部分もあった。1975年には流麗な2シーターボディを持つ308GTB(ピニンファリーナ作)が登場し、両者の評価は分かれることとなった。
しかし、実用性では308GT4が優位だった。キャビンはフロントシートを極力前方に配置し、必要時には後席に2名を収容可能な2+2GT。ランボルギーニ「ウラッコ」も同時期に似たコンセプトで誕生しており、両社とも実用性を重視した結果といえる。
35年の所有中にコノリーレザーの内装まで張り替え
ミッドに横置きされたV型8気筒エンジンは最高出力255psを発揮。0-100km/h加速は7秒未満、最高速は240km/hという当時の公称値を誇った。全輪に高剛性の独立懸架式サスペンションを採用し、見た目以上のコーナリング性能を発揮したのも特筆点である。
今回出品された308GT4は1975年式で、ボンネット先端にはディーノのエンブレムを装着。右ハンドル仕様で、フェラーリの記録によるとわずか547台のみが製造された希少仕様だ。出品者は35年間所有し、約3万1000ポンド(約453万円)分のメンテナンス履歴を保持。1991年にはインテリアをコノリーレザーに張り替え、最新整備は2024年12月に実施されている。
予想落札価格は3万〜4万ポンド(邦貨換算約600万〜800万円)で、実際の落札額は3万2200ポンド(邦貨換算約650万円)だった。クラシック・フェラーリの相場が高騰するなか、この価格は依然として「入門用フェラーリ」としての魅力を保つ水準といえるだろう。
