サイトアイコン AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

自社で製造するミニバンで挑むラリー参戦!トヨタ車体TEAM NOAHの3年目の挑戦

トヨタ車体TEAM HIACE(喜多見孝弘/浦 雅史組)は全日本ラリー選手権オープンクラスに参戦中

ミニバンを製造するトヨタ車体がラリー地区戦に参加!

ハイエースやアルファード/ヴェルファイア、ノア/ヴォクシー、そしてランドクルーザーなどの製造を担うトヨタ車体。同社は1995年に「TLC(チーム・ランドクルーザー)」を立ち上げ、以来、ダカールラリー市販車部門への挑戦を続けています。その一方で、社内チームによる国内ラリー活動も展開していることを紹介します。

ハイエースからノアへ!社内チームの挑戦は3年目に突入

トヨタ車体の社内チームは、2023年に「トヨタ車体TEAM HIACE」として活動をスタートし、2024年からは「トヨタ車体TEAM NOAH」と名称を変更。社内で開発・生産しているハイエースやノアを使い、ラリー競技に参戦しています。

このチームのドライバーとしてステアリングを握るのは、2021年から全日本ラリー選手権にハイエースで参戦している「CAST RACING」の喜多見孝弘選手。そしてコ・ドライバーの浦 雅史選手をはじめ、チームスタッフはすべて社内メンバーが担っています。活動3年目を迎え、スタッフたちも次第に実戦の現場に慣れ、安定した体制が整いつつあります。

豊田しもやまラリーはレンタルマシン2台体制で挑戦

2024年、トヨタ車体チームは「豊田しもやまラリー(中部・近畿地区第1戦)」に2台体制で参戦しました。ただし、今回ラリーに使用されたのはハイエースやノアではなく、ヤリスとヴィッツのラリーカー。いずれもレンタル車両での出場です。

じつはノアでの参戦が予定されていましたが、翌週に控えた「TOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジ(TGRRC)利府戦」に向けた整備のため、今回は車両を温存。代車での出場となったのです。

DE-5クラスにエントリーしたのは以下の2組

No.45 トヨタ車体ヴィッツ(NCP131):高井義博/伊藤香菜子組

No.49 トヨタ車体ヤリス(MXPA10):伊藤和馬/秋本祐輔組

この4人はいずれも、2023年のTGRRCで「トヨタ車体TEAM NOAH」として参戦した経験を持つメンバー。高井/伊藤組は高岡万葉戦に、伊藤/秋本組はびわ湖高島戦にそれぞれ出場しています。

ラリー推進体制の強化と“人づくり”への想い

チームを率いるのは藤澤 隆さん。ラリー活動を本格化するため、社内の体制づくりにも尽力してきました。

「もともとは業務の一環として活動していましたが、どうしても片手間になってしまうことがありました。今は開発統括部に“ラリー推進グループ”を設け、組織的にラリーに取り組めるようにしています。テストコースでの練習や社内講座の開催など、活動の幅も広げ、今シーズンは全日本ラリーにハイエース、地方戦やラリチャレにはノアとヤリスで挑戦を続けていく予定です」

そんな藤澤さんの言葉どおり、今回の豊田しもやまラリーは、チームとしての経験値を高める貴重な場となりました。

チーム初のリタイア……それでも前へ

大会前夜に降った豪雨により、事前走行(レッキ)時とは路面状況が一変。クラッシュも相次ぎ、予定されていた4本のSS(スペシャルステージ)のうち、2本がキャンセルとなる荒れた展開となりました。

高井/伊藤組のヴィッツはSS3のフィニッシュ直前でコースアウトし、大きな岩に乗り上げてストップ。チームとしては初のリタイアという悔しい結果に終わりました。

一方、完走を果たした伊藤/秋本組の伊藤和馬選手は

「約1年ぶりのラリー参戦ということもあり、かなり緊張しました。でも、自分なりの挑戦ができたと思います。とにかくアクセルをしっかり踏んで走れたのは良かったですね。終盤にブレーキをフェードさせてしまって大変でしたが、今後はラリー全体の組み立てをもっと意識していきたいです」

と語ってくれた。

経験が開発力と“いいクルマづくり”につながる

リタイアという結果に対して

「高井/伊藤組が無事だったのは本当に良かったです。ブレーキへの負担が大きいコースだったので、そのあたりに原因があるかもしれません。とはいえ、現在の4名のメンバーはまだラリー参戦2回目。これから経験を積んでいってくれるはずです」

と藤澤監督は今回のラリーを振り返る。

また、今後の体制づくりについては

「裾野を広げ、層を厚くしていくことが必要だと感じています。乗員だけでなく、メカニックも社内公募で募っています。この活動が社員一人ひとりの技術力や経験値を高め、やがて“もっといいクルマづくり”につながると信じています」と言う。

社内チームの挑戦は、単なるレース活動にとどまりません。そこには、現場で感じた振動や汗、悔しさや歓びが、社員の“血肉”となって次の製品づくりへと活かされていく。そんな“リアル”があるのです。

モバイルバージョンを終了