伝説の希少モデル「ディアブロGT」とはいえ2億円を超えるとは
1990年代を象徴するスーパーカー、ランボルギーニ「ディアブロ」。そのなかでも、わずか80台のみが生産された幻のロードバージョン「GT」が、世界的なオークションに姿を現しました。その圧倒的な存在感と、伝説的な希少性が驚愕の結末を招きました。この1台に秘められたヒストリーと、オークションでの驚くべき舞台裏に迫ります。
突如登場したFIA-GT選手権参戦用に開発された最高峰モデル「GT」
ランボルギーニが1990年代に生産した唯一のモデル、それが「プロジェクト132」と呼ばれる社内コードを掲げて、1985年半ばに開発がスタートしたとされるディアブロだ。そのファーストモデルが誕生したのは1990年で、以降、ディアブロのラインナップからはさまざまなモデルが派生していった。
4WDモデルの「VT」、創立30周年を記念する「SE」、そして軽量で高性能というコンセプトを継承した「SV」などがその代表的な例だ。カウンタックでは実現しなかったオープン仕様の「ロードスター」が設定されたことも、当時大きな話題となった。
ディアブロシリーズのなかでももっとも衝撃的なデビューを飾った1台といえば、やはり1999年のジュネーブショーで、事前に一切の予告なく発表された「GT」の名を忘れるわけにはいかないだろう。それはランボルギーニがFIA-GT選手権への参戦を目的に開発した「GT2」のロードバージョンとも考えられるモデルだ。
ミッドに搭載されるV型12気筒エンジンは、新たに5992ccの排気量が与えられ、専用カムシャフトやチタン製コンロッドなど、その構成部品の多くにはGT2譲りのエンジニアリングが採用されていた。このV型12気筒エンジンが発揮する最高出力575psに対応するため、シャシーもさらにスポーティーなものへと進化を遂げた。減衰力可変機構を持つダンパーは他のディアブロと共通だが、セッティングはGT独自のもの。トレッドはフロントで110mm、リアでは30mm拡大され、これによってコーナリング時の安定性がさらに高められた。
575馬力に車重1490kgのカーボン製軽量ボディ
エクステリアとインテリアのデザインが大幅に見直されていることもGTの特徴だ。前後のフェンダーはトレッドの拡大に対応するためによりワイドな造形となり、ボンネット上には大型のエアアウトレットを装備。ルーフ後端に備わるエアインテークはシングルタイプとなり、さらにテールエンドにはリアビューカメラが内蔵される専用デザインのウイングとディフューザーが、フロントのバンパースポイラーと同様にカーボン素材がクリア塗装されたのみの、スパルタンなフィニッシュで組み合わされている。
ちなみに、このGTでランボルギーニが実現したウェイトは、わずか1490kgだ。これはルーフと左右のドアを除いてボディをカーボン製としていること、そしてインテリアにおいても軽量性を追求するための策を講じたことによる相乗効果によって実現されたものである。
オークションで証明された「伝説」の価値と相場の高騰前兆
ランボルギーニはGTの生産台数を80台に限定したが、実際に購入を希望したカスタマーはそれをはるかに上まわる数だった。もちろんその人気はデビューから25年以上が経過した現在においても変わることはなく、貴重なコレクターズアイテムとしてランボルギーニのエンスージアストから常に強く意識される存在であり続けている。
今回RMサザビーズがモントレー・オークションに出品したモデルは、80台のGTで67番目にラインオフされたもの。イタリアのミラノにあるツーリング・オートにデリバリーされた後、ファーストオーナーの手に渡った記録が残っている。ボディカラーはGTのコマーシャルカラーであるアランシオ・アトラス。オレンジとブラックの美しいコントラストをなすインテリアとのコンビネーションも、新車時から変わっていない。
現在までに6万3566kmを走行した出品車は、これまでのオーナーによって定期的なメンテナンスを受けてきた。とくに2017年にスイスのランボルギーニ・サンガレンで行われたV型12気筒エンジンのオーバーホールは特筆すべき点だ。さらに2024年には同ディーラーによって、ミッションを含むオイル交換や、ブレーキとクラッチのフルード交換、ハンドブレーキシステムの修理、ドアのワイヤーハーネス点検なども行われている。
RMサザビーズは、このディアブロGTに対して130万ドル〜160万ドルの予想落札価格(日本円で約1億9135万円〜2億3550万円)を設定。その希少価値とコンディションの良さを考えれば当然の評価だと入札者も納得したのだろう。最終的には143万5000ドル、約2億1120万円という価格で落札された。ここ数年でクラシックとしての価値を大きく高めているディアブロ。このGTのオークション結果が、今後さらにディアブロシリーズのクラシック市場における評価を高める追い風となるのは間違いないだろう。
