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シャシーを共有する兄弟はいるが「ジュニア」にはアルファ ロメオらしさが宿っている

アルファ ロメオ ジュニア:個人的な感想としてはフロントマスクのデザインは、よりアートな作風のトナーレのほうが好みだったりする

乗り始めると気持ちがザワめき出した…!

アルファ ロメオが送り出した新型「ジュニア」は、ステランティス・グループの共通プラットフォームCMPをベースにしたSUVです。数値だけを見れば「ほかの兄弟車と同じ」と思われがちですが、いざ試乗してみると、その走りと雰囲気に「やっぱりアルファだ」と思わせる魔法がかかっていました。筆者が思わず「アルファ164の再来」と感じた理由を、詳しくお伝えします。

ティーポ4プロジェクトを思い出した

「おお、これはアルファ164の再来だ」と思った。どういうこと? と思われるかもしれないので少し説明しよう。1980年代にヨーロッパの自動車メーカー4社が協業した「ティーポ4プロジェクト」というがあった。その基礎となるコンポーネンツの共用化により生まれたのが、当時のアッパーミドルクラスのサルーン4車、ランチア「テーマ」、サーブ「9000」、フィアット「クロマ」、そしてアルファ「164」だった。

他の3車がジョルジェット・ジウジアーロが手がけた外観デザイン(4枚のプレスドアの形状が共通なことでそれは見て取れた)を基本にしていたのに対し、そのなかでもとりわけアルファ164だけはピニンファリーナによる低くウェッジを効かせた外観スタイルと、アルファロメオらしい、しなやかながらもスポーティな走りを実現し、4車のなかで異彩を放つ存在だったのである。

転じて、今回の試乗車の“ジュニア”である。

このクルマも、今やステランティスのコンパクト系の多くの車種で共通のプラットフォーム「CMP(BEVはe-CMP)」がベース。プジョー「208」、プジョー「2008」、フィアット「600」、シトロエン「C4」、「DS3」、ジープ「アベンジャー」や、日本市場には未導入のランチアの新型「イプシロン」、フィアット「グランデパンダ」などCMP由来の車種が存在する。アルファ ロメオ ジュニアもこのCMPを採用した1台であり、そのことだけを捉えると「ふーん」という印象だった。

前述のCMP由来の(日本市場導入済みの)各車にはひととおり試乗して、どのクルマもそれなりにブランドごとの味やキャラクターにしっかりと仕立てられていることは承知している。が、何故かこのジュニアだけは

「アルファ ロメオなだけに果たしてどうかな?」

と懐疑的な気持すら持っていたのである、少なくとも試乗するまでは……。

が、ジュリアの試乗車を受け取り、実際に乗り始めてみると、徐々に気持がザワめき出した。

期待を裏切るパフォーマンス

さらに走らせてみると

「やるじゃん!」

と思わせられたのだった。試乗車はハイブリッドの「Ibrida(イブリダ)コア」で、1199ccの直列3気筒DOHCターボ(100kW/230Nm)とフロントモーター(16kW/51Nm)を搭載。これに6速デュアルクラッチを組み合わせた、いわゆるマイルドハイブリッドだ。

が、ハイブリッドであることを忘れさせるパワーフィールというべきで、モーターのおかげで出足は十分に力強く、アクセルに対するツキもよい。エンジンはストレスなく高回転まで回り、それに伴うエンジン音も小気味よく、アルファ ロメオと受け止めるにも十分に及第点以上のサウンドを聞かせてくれる。デュアルクラッチのため変速もスパッと瞬時だ。

ハンドリングも軽快。ステアリングの切り始めが過敏ではないが敏捷で、そこから先も思いのままに切り込んでいける。それとしなやかにロールする様もアルファ ロメオらしいところ。ここで思い出さなければいけないのは、このジュニアはSUVに属するクルマだということ。しかしミズスマシのような軽々とした身のこなしは、ちょうどかつてのコンパクトカー、ミトを運転しているような感覚を味わわせてくれた。

試乗車はコアと呼ばれるグレードで、タイヤは215/60 R17インチサイズのSUV用のグッドイヤーで、3名乗車までに指定内圧は前後とも220kPaだったが、60ながら、ごく限られた場面で路面からの入力を伝えることがあるのは、クルマの重心高を前提にしてサスペンション設定が行われているからなのかもしれない。

乗り心地もワンだふるSUV!

飼い主が気分上々で試乗しているのを横目で見ていたらしく、我が家の乗り心地・NVH評価担当の飼い犬のシュン(柴犬・3歳半・体重15kg)も、試乗中はクルマの挙動に身を委ねていて、試乗が終わるとクルマの前部に自分で回り、スクデット(盾グリル)の中のalfa Romeoのロゴのあたりをふーんと確認していた。

内外観のいたるところにビショネがちりばめられ(右空調吹き出し口の中央のそれは照明が入るが夜間は窓映りもする)、アルファ ロメオでござい……の主張がある。インパネのふた山のメーターナセルは往年からのアルファ ロメオらしい形状(できれば液晶メーターも長方形のパネルそのもののデザインではなく、丸型アナログメーターの描写に合わせて模ったベゼル形状にしてほしかった)であったり。

個人的な感想としてはフロントマスクのデザインは、よりアートな作風のトナーレのほうが好みだったりするが、そういうことはきっと忘れられそうな、CMP由来ながらも見事に“アルファ・マジック”がかけられたクルマである。

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