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オートマオイルの交換は必要なのか?無交換によるデメリットは?メーカーも指標を示し始めている

新車時から定期的にATFを交換している場合は、全量交換してもトラブルを誘発する可能性は低い

昔から論争が続くATF交換!時代とともに考え方に変化が

オートマチック・トランスミッション・フルード(ATF)は、潤滑油であると同時に動力伝達や油圧制御を担う重要な作動油です。熱や圧力で確実に劣化しますが、交換頻度はメーカーや整備工場によって意見が分かれ、「交換するべきか否か」は長年の論争となっています。最新車種では交換サイクルが見直されつつある一方、走行距離が多い車は方法を誤ると故障のリスクも。交換の目安やトラブル症状、作業を依頼する際の注意点を整理しました。

メーカーの交換サイクルに従えば保証対象になるケースも

ATFの交換については、昔から論争が続いている。一般的に「オートマオイル」とも呼ばれるが、潤滑だけでなく、エンジンからの動力伝達やギアチェンジ用の油圧制御にも使用されるため、「フルード(作動油)」と呼ぶのがより正確だ。

それだけにATFの使用環境は過酷で、劣化は確実に進む。しかし、メーカーの交換指示がとても長くされていたり、整備の現場では2万kmごとの交換を推奨していたりするため、「何が正解なのか?」という論争に発展するわけだ。

しかし最近は、純正の交換時期がかなり変わってきている。車種や年式にもよるが、トヨタが5万kmごと、日産が4万kmごとなど、現実的な数値になってきた。最近の車であれば、これらの指定通りに交換していれば問題はない。万が一ATが故障しても、一定期間は保証が適用される。

問題となるのは、車齢が経っていたり、走行距離が多いクルマだ。どう対処すればよいのだろうか。ATF交換の問題点と注意点とともに考えてみよう。

ATFの全量交換には専用機器が必要で工賃も高くなる

そもそも劣化するというなら、エンジンオイルぐらいのスパンで交換すれば良いと思うかもしれない。しかし、まず交換方法と費用が問題となる。ATFはエンジンオイルのようにミッションケースの下から抜いたり、点検用スティックの穴から吸い出しても、全量どころか2~3割しか抜けないのが一般的だ。

しかし、新油を大量に使い、何回か抜いては入れるを繰り返したり、専用機器でATFオイルクーラーの配管から圧送循環させたりすれば、ほぼ全量交換は可能だ。だが、その分手間と費用はかなりかかる。ATFを交換するだけでなく、内部にあるストレーナーと呼ばれるフィルターも同時に交換したほうが良いとされているため、これらを含めて行うと安くても交換費用は5万円ほどかかるのが難点だ。

さらに、ATFの交換自体がトラブルを引き起こすことも多い。これが「劣化したATFは交換不要」という説の最大の理由だ。AT内部に溜まったスラッジ(劣化物)が、洗浄力の強い新品のATFによって剥がれ、ATの細かい油圧経路などに詰まってしまうというものだ。確かに、ATF自体は熱や圧力で劣化し、スラッジも発生する。内部には摩擦材を使ったクラッチがあり、その削れたカスも出てくるため、この説も間違ってはいない。

無交換によるATのトラブルと交換する場合の注意点

逆に、交換しないことによるトラブルも存在する。変速ショックの増大や変速タイミングのずれ、レスポンスや燃費の悪化など、良いことは何もない。

整理すると、以下のようになる。

・新車や高年式&低走行車: メーカーの指定に沿って定期的に交換する。

・低年式&多走行車: 交換しないという選択肢もある。もし交換するなら、一気に全量交換するとスラッジが詰まる可能性があるため、少しずつ交換して汚れの溶解を見ながら数回にわたって交換するのがベストだ。

最後に、メカ的なトラブルではない注意点を紹介しておこう。

ATF交換は高額請求が可能なため、実際は全量交換せずにごまかす業者もいる。ディーラーであれば安心と思いがちだが、作業効率を優先して「ある程度替えておしまい」となったり、「交換しなくてもよい」と言われる場合もある。作業を依頼する際は、内容を明確に確認してから依頼したほうがよいだろう。

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