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オリジナルと異なる内外装色の「ディーノ246GT」でも約6400万円と高値で落札!

43万4000ドル(邦貨換算約6388万円)で落札されたフェラーリ「ディーノ246GT」(C)Courtesy of RM Sotheby's

わずか357台の初期型がオークションに登場

フェラーリ初のミッドシップ2シーターとして誕生した「ディーノ206GT」。その後継として1969年に登場した「246GT」は、排気量を拡大し実用性を高めた進化版でした。2025年8月に開催されたRMサザビーズのモントレー・オークションに登場したのは、そのなかでも貴重な初期型「ティーポL」。7年かけて丁寧にレストアされ、鮮やかなイエローへと改められたボディが美しい個体です。車両のあらましとオークション結果についてお伝えします。

フェラーリ初の量産V6エンジンを搭載したディーノ206

流麗でコンパクトなボディに、レーシング・フィールドに端を発するV型6気筒エンジンを搭載して1967年に誕生した「ディーノ206GT」は、フェラーリにとっては初のミッドシップ・2シーターとなったモデルである。

車名に掲げられたディーノとは、フェラーリの創始者であるエンツォ・フェラーリの息子、アルフレード・フェラーリの愛称だ。24歳という若さで他界したディーノは生前、エンツォにV型6気筒エンジンの必要性を強く進言したとされるが、その真偽は残念ながら定かではない。だがフェラーリが、それに前後してV型6気筒エンジンの開発をスタートさせていたのは事実だった。

1957年シーズンに投入されたF2マシン「156F2」に搭載されたエンジンは1.5LのV型6気筒であった。そのユニットはその後すぐに2L、2.4Lと排気量拡大を続けた。一方、バンク角をそれまでの65度から60度に、そしてヘッドをDOHCからSOHCとした新たなV型6気筒エンジンも登場(さらには120度V型6気筒さえも誕生している)。フェラーリはこの時代、じつにさまざまな仕様を試していたのだ。

そのV型6気筒エンジンが初めてロードカーに搭載されたのが、最初に紹介したディーノ206GTだ。1967年に発表され1969年まで生産が継続された206GTはトータルで150台(152台と数える見解もある)。ミッドに搭載された65度V型6気筒DOHCエンジンは車名のとおり2Lの排気量で、最高出力は185psであった。ボディは軽量なアルミニウムが素材として使用されていた。

生産性と商品性を高めるために246GTへとマイナーチェンジ

だが206GTは、その生産効率の低さと、逆に生産コストの高さから、この頃からすでにフェラーリの市販車部門を統括する立場にあったフィアットにとっては、商品力をより高めることが必要なモデルだった。

そこで1969年にマイナーチェンジ版として発表されたのが「246GT」である。246GTは、エンジン排気量を2.4Lに拡大するとともにホイールベースを60mm延長した。そしてボディもプレス加工による大量生産が可能なスチール製へと改め、キャビンの居住性向上のために車高を20mm高めるなどの改良が施されたのだ。

ミッドのV型6気筒エンジンにもブロックが鋳鉄製になるなどの変更が加えられたが、最高出力は195psに向上し、さらに排気量拡大によって実用域での扱いやすさは高まった。

生産後すぐにアメリカへ渡った希少なティーポLのヨーロッパ仕様

ちなみに246GTには仕様によって、「ティーポL」、「ティーポM」、「ティーポE」の3タイプが存在するが、今回RMサザビーズがモントレー・オークションに出品したのは1969年から1970年にかけて生産されたもっとも初期型のティーポLである。ホイールがセンターロック式であることがこのティーポLの外観では最大の特徴だ。ただし、スピンナーは206GTとはデザインが異なっている。

出品車の246GT ティーポLは、「00908」のシャシーナンバーを持つもので、1970年6月8日にマラネロ工場でのアッセンブリーが終了したことが記録されている。ボディカラーは「ロッソ・キアーロ(明るい赤)」、またインテリアは「ネロ(ブラック)」のビニール製だった。

ヨーロッパ仕様として生産された「00908」にはキロ表示のスピードメーターが装備されていたが、フェラーリから出荷されるとすぐに、アメリカのネバダ州リノに住むカジノ王、ウィリアム・ハラー氏が経営するモダン・クラッシック・モーターズを経由してオレゴン州のカスタマーへと売却された。その後はカリフォルニア州で複数のオーナーの手に渡ることになる。

1998年には同州のフェラーリ・スペシャリスト、フランコルシャン・オブ・アメリカで、7年という時間をかけて完全なレストアが施された。この時、エンジンとミッションのナンバーマッチングも確認されている。鮮やかなイエローのボディと、ネイビーのインテリアにカラーが改められたのもこの時である。

レストアが終了した後には、フェラーリ・クラブ・オブ・アメリカが主催するイベントなどで、数多くのプライズを受賞した「00908」。RMサザビーズがオークション前に提示したエスティメートは40万ドル~50万ドル(邦貨換算約5887万円~7359万円)というものだった。

ディーノ246GTの中でもわずかに357台しか存在しないLシリーズということもあり注目度は高く、最終的にそれは43万4000ドル(邦貨換算約6388万円)という金額で落札されている。まずは順当なリザルトといったところだろう。

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