3日間で10万人超の観客が押し寄せたDTM最終戦の熱気が凄い!
今年のレース取材の最後となるDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)の最終戦のために、ホッケンハイムリンクを訪れたモータージャーナリストの池ノ内みどりさん。土曜日・日曜日に本戦が開催されるスプリントレースのDTMは、土曜日のレースではまだシリーズチャンピオンが確定しません。最後の最後までチャンピオン争いが持ち越されてドキドキです。
チャンピオン獲得を伺う名手たちにのしかかる新レギュレーション
DTM最終戦ということでサーキットは早朝から大賑わい。この週末はドイツの東西統一記念日の連休と重なったこともあり、あふれんばかりのモータースポーツファンがホッケンハイムに詰め掛けました。ADAC(ドイツ自動車連盟)の発表によるとこの3日間のレースウィークを訪れた来場者数は10万2000人に上ったそうです。
2021年までのDTMは日本のスーパーGT500クラスの車両と同じレギュレーションのクラス1規定で運営されていましたが、2021年からはレースフォーマットはそのままで、世界統一規格のGT3マシンでの開催へと変更されました。
DTMではスプリントレースのなかに、決められた時間以内で1度のピットストップをしてタイヤ交換の義務があります。しかし今季はレギュレーションが変更され、日曜日のレースでは2度のピットストップが義務付けられました。1時間のスプリントレースで2度のピットストップはかなり慌ただしい上に、いつピットに入るのか、戦略をひとつ間違えれば、勝てる見込みはなくなってしまいますから、ドライバーとエンジニアたちの団結力も勝負のカギを握ります。
2019年に日本のスーパーフォーミュラで参戦していたルーカス・アウワーがもっともチャンピオンを穫れる確率が高いポイント数でしたが、土曜日の予選やレース、日曜日の予選でもあまり前に出られず苦戦していました。しかし、決勝レースの結果によってはまだまだチャンピオンになる可能性は残っています。
長年アウディのワークスドライバーを務めた後、BMWへ移籍したレネ・ラスト。この最終戦をもってDTMからは卒業し、WEC(世界耐久シリーズ)のハイパーカーの活動へ集中することが発表されました。理由は「家族との時間」でした。幼い2人の子供を持つパパとしてDTMとWECのふたつのシリーズ参戦は、育児に関われる時間が少なく、キャリアと天秤にかけたときに家族を選択することになったそうです。
DTM史上初のトルコ出身ドライバーが2025年の王者に輝く!
日曜日の決勝は、アストン・マーティンがポールポジションからスタート。DTMさよならレースのレネ・ラストが上手く前に出るも、マンタイ・レーシングのポルシェをドライブするアイハンチャン・ギュヴェンに押し出され、スピンしたところへ他のマシンが突っ込んで1周も走らずにリタイア。記念すべきDTMの引退レースが一瞬で終わってしまいました。その後にもセーフティカーの導入や2度のピットストップでレースは何度もシャッフルされ、その度にスタンドから大きな歓声やため息が聞こえてきました。
レネ・ラストをリタイアに追い込んだアイハンチャン・ギュヴェンが生き残り、最後の最後までBMWのマルコ・ヴィットマンと激しいバトルを繰り広げて、なんとわずか0.169秒差で執念のDTMチャンピオンを勝ち取りました。チャンピオン最有力候補のアウワーはわずか4ポイント差でその座を逃してしまいました。
ウィニングラップの後には最終コーナーで何度もドーナツターンをして、その喜びをファンと分かち合いました。また何名かのドライバーもアイハンチャン・ギュヴェンの横でドーナツターンをして彼の初優勝を祝い、会場からは暖かい拍手と声援が送られました。
DTMの長い歴史のなかでトルコ人ドライバーの優勝は史上初となり、何度もトロフィーを抱きしめて感涙にむせび泣いているアイハンチャン・ギュヴェンでしたが、その一方で、ただうつむくしかなかったレネ・ラストのなんとも言えない表情の方が印象的でした。
決勝ではランボルギーニとフェラーリの2名のドライバーにブラックフラッグが出されるなど波乱万丈のレースとなり、2025年のDTMのシーズンが終了しました。
