子供の頃からの憧れのクルマをついに手に入れた!
群馬の「桐生八木節まつり」に、1968年式の珍しいオランダ車・DAF「44」が展示されました。日本ではあまり知られていませんが、DAFは世界で初めて本格的にCVTを採用したメーカーとして知られています。このクルマのオーナー羽島さんは、スバルで働く若いエンジニアです。幼い頃から旧車が好きでDAFに憧れ、苦労しながらも母国の専門店からエンジンを取り寄せて蘇らせました。
日本では馴染みのない…オランダのDAFとは
1968年式 DAF 44でエントリーしていた羽島恭章さんは、子供の頃から旧いクルマが好きだった。現在のDAFは商用自動車メーカーとしてオランダに本拠地を置きトラックを生産。欧州市場ではボルボに匹敵する人気のメーカーである。しかし、我が国には輸入されていないため、未知のメーカーと言ってもいいだろう。
日本では未知のトラックメーカーDAFだが、かつては乗用車の生産も行っていた。DFAF 44は、DAF初の量産自動車「600(590cc)」から受け継いだ空冷の水平対向2気筒エンジンの排気量(844cc)に拡大して搭載。同社の真骨頂ともいえるヴァリオマチックを採用した。さらに前モデルであるDAF「33」の古いデザインを、ジョヴァンニ・ミケロッティを起用し、スタイルを一新したのが「44」である。
そう、現在では小型乗用車の変速機としてポピュラーである無段変速機(CVT)を本格的に採用したメーカーがDAFなのだ。
その後、DAFの乗用車部門は1974年にボルボに買収されるも、ヴァリオマチックの特許はオランダVDT社へと移された。VDT社は1995年にボッシュに買収されると、さらにその技術は進化し、瞬く間に欧州小型乗用車へと採用される。
日本では1987年、スバルの初代ジャスティが国産車初のCVT搭載車となった。VDT社の開発した金属ベルト式CVTをベースに電磁クラッチを組み合わせ電子制御化した量産CVTは、現在の小型車用ミッションの礎となる。そのようなスバルに勤務する若きエンジニア羽島さんが1968年式のDAF 44オーナーとは、なんとも妙縁である。
「世界初のCVT」に魅せられた若きスバルエンジニア
羽島さんが小学校2年のとき、父親が読み終わり玄関に置いていた自動車雑誌の表紙のポルシェ 356の姿に惹かれ、古いクルマの本ばかり読む少年になったという。そして自動車メーカーに就職し、エンジニアとして日々新しい技術開発に勤しんでいる。
「就いている職種はCVTではありませんが、世界初のCVTヴァリオマチックの機構には感銘を受けます。現代のスクーターのCVTはほとんど同じ構造です。それからも想像してもらえると思いますが、34psしかない非力なエンジンでも、効率の良い回転数を維持したまま走行できるため、なかなか力強い走りをするんですよ」
そんなDAF 44との出会いは、前オーナーがエントリーしていたイベントでDAFの話で盛り上がり
「手放す時がきたらあなたに譲りますよ」
というきっかけがあった。小学生の頃からDAFに興味があったという羽島さんに、前オーナーも安心して愛車を任せる気持ちになったのだろう。結果的には、今から約2年前に譲り受けたそうだ。
「譲ってもらったときは、エンジンがもう寿命が来ていまして、オーバーホールするにもパーツを探すのが大変です。さすがに母国オランダには専門店があり、そこでオーバーホールされたリビルトエンジンを取り寄せました」
完調となってからは、前オーナーと出会ったイベントへと参加し、特別賞を受賞したことが、今のところの一番の思い出だとか。
「趣味で古い街並みを巡り写真を撮っています。同じ年代の建物の前に愛車を置いて、撮影をする旅をしたいですね」
日本国内では見かけることのない希少車だが、さらにこの個体はDAF 44のなかでも初期型のSというグレードならではのコストのかかった内外装がお気に入りだという羽島さん。これからもオリジナル状態を維持して行きたいそうだ。
