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フェラーリが約1030万円で落札!ベルトーネ・デザインの2リットルエンジン「208 GT4」の価値とは

5万7500ユーロ(邦貨換算約1030万円)で落札されたフェラーリ「208GT4」(C)Bonhams

2Lのフェラーリはベルギーのオークションで市況どおりの評価が下される

2025年10月、ベルギーの高級リゾート地ノッケ・ハイストで開催されたボナムズ社が主催する「Zoute Car Week」には世界中の愛好家が集まり、多くのクラシックカーが競売にかけられました。今回注目したのは希少な2Lモデルのフェラーリ「208 GT4」です。税制を背景に誕生したこのモデルが、現在の国際市場でどのような評価となったのか……? その結果と背景を紹介します。

3L V8エンジンを2L化!ライバルを凌駕する170psを発揮

かつての日本と同じく、2000ccを境に自動車税額が大きく跳ね上がったイタリア国内マーケットに向けて、スーパーカーを専業とするメーカーたちも1970年代から1980年代にかけて排気量を2L以下に縮小したモデルをイタリア市場限定で販売した。その一例がランボルギーニは「ウラッコ P200」、マセラティも「メラク 2000」だ。

そしてフェラーリも負けじとばかりに、「ディーノ 308 GT4」およびフェラーリ「308 GTB」に搭載されていた3L V8・4カムシャフトユニット「ティーポ F106A」型エンジンをベースに、総排気量を2926ccから1991ccまで縮小した「F106C」を開発した。4基のウェーバー社製ダウンドラフト式キャブレターを組み合わせて、当時の2L級エンジンとしては世界トップクラスに相当する170psをマークした。

この2L版V8ユニットは、1975年のジュネーヴ・ショーにてデビューした「ディーノ 208 GT4」の心臓部として、初めてラインナップに加わることになる。1973年にディーノ・ブランドから誕生した2+2ミッドシップ車「308 GT4」に追加設定された、イタリア市場専売モデルである。

208 GT4は、エンジン以外は基本的に308 GT4と共通のモデルであり、カロッツェリア・ベルトーネ時代のマルチェッロ・ガンディーニが生み出した傑作の数々と同じテイストを感じさせる、シャープなウェッジシェイプ・ボディが与えられていた。ただし、フロントフードやエンジンフードのエア抜きルーバーが、308のマットブラック塗装仕上げからアルミ地肌のシルバーとされていることなど、外観にも相違点が存在する。

また、1976年春にはディーノ・ブランドは308 GT4ともどもフェラーリ・ブランドに一本化され、エンブレムやホイールに「フェラーリ化」が図られた。それ以外にも補助灯に小変更が施されたほか、グリル類も308 GT4と同じブラック塗装仕上げがデフォルトとなった。

そして1980年をもって、308 GT4ともども生産を終了した。その生産台数は、ディーノとフェラーリ両ブランドを合わせた総計640台(諸説あり)という、かなりの希少モデルとなった。

イタリアで新車登録され2024年にリトアニアへ移り大改修を受ける

このほどボナムズ社「The Zoute Sales 2025」オークションに出品された、この愛らしい208 GT4は、1977年式のシャシーNo.#12884である。すなわち、フェラーリ・ブランドに移行してからのモデルである。

ほぼすべての208 GT4がそうであったように、イタリア国内市場にデリバリーされた個体。このディーノはかつて南イタリアの都市バーリで登録されていたこともあるようだ。1991年にフィレンツェの女性オーナーによって購入されたことは判明しているが、それ以前の来歴については詳らかにされていない。しかしいずれにせよ、2024年にリトアニア在住の最終登録所有者に譲渡されるまで、生涯の大半をイタリアで過ごしてきた。

そしてリトアニアの新オーナーは購入ののち、大規模な整備と修理に着手した。部品はドイツの専門業者「ディーノ・パーツ」社から供給された。純正の「ミシュラン XWX」タイヤを新品に換装したほか、ディーノ由来のV8ユニットでは必須のタイミングベルト、および強化テンショナーを含む徹底的な整備を実施した。くわえて燃料ポンプの交換、キャブレターのオーバーホール、ホース類の交換を含む冷却システムの整備、そのほかさまざまな修理と改良が施行されたことについては、この際に発行された請求書によりすべての作業が確認できる。

今回出品されたフェラーリ 208 GT4について、ボナムズ社では自社の公式オークションカタログにおいて「重要な整備が完了したばかりの、魅力的なエントリーレベルのフェラーリ」とPRしつつ、5万ユーロ~6万ユーロ(邦貨換算約890万円〜1068万円)という、このモデルとしては順当ともいえるエスティメート(推定落札価格)を設定した。また、この出品ロットについては「Offered Without Reserve(最低落札価格なし)」で競売のステージに乗せることとした。

この「リザーヴなし」という出品スタイルは、ビッド(入札)価格の多寡を問わず確実に落札されることから競売会場の購買意欲が盛り上がり、エスティメートを超える勢いでビッドが進むこともあるのがメリットである。しかしその一方で、たとえ出品者の意にそぐわない安値であっても強制落札されてしまうという、不可避的なリスクもある。

そして10月12日に行われた競売では、ビッド(入札)が順調に伸びた。終わってみればエスティメートの範囲内に収まる5万7500ユーロ、現在のレートで日本円に換算すれば約1030万円で落札されるに至った。

ちなみに、数年前にクラシケ・フェラーリの価格相場が暴騰した際の国際マーケットでは、前述した希少性も手伝って、308 GT4と同等かそれ以上の価格で取引されているという208 GT4だが、今回のハンマープライスもまた、その市況を裏づけるかたちとなった。

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