2モデルが同時発売されたが両方を購入することはできなかった
フェラーリのなかでも、限られた人しか手にできない特別なシリーズが存在します。それが、ブランドの歴史に残る名車を現代の技術でよみがえらせた「Icona(イーコナ)」シリーズです。レーシングバルケッタの系譜を受け継ぐ同シリーズのファーストモデルとなる「モンツァSP1/SP2」は、なぜ発表から時間が経った今も高い価値を保ち続けているのでしょうか。オークションでの動きから、その理由をひも解いていきます。
レーシングバルケッタの系譜を受け継ぐモンツァSP1/SP2
2018年9月18日。フェラーリはマラネロの本社で開催した投資家向けのイベント、「キャピタル・マーケット・デイ」において、新しいコンセプトを掲げたスペシャル・シリーズとなる「Icona(イーコナ)」の誕生を発表した。それはフェラーリが1947年の創立から刻み続けてきたヒストリーのなかでも、とりわけエンスージアストの心を魅了してやまない刺激的な作品からデザインのモチーフを得るとともに、最新のエンジニアリングによって世界最高水準のパフォーマンスを実現したモデルを、フェラーリ自身によってセレクトされた特別なカスタマーのために限定生産するという、非常に魅力的なシリーズだった。
このIconaシリーズのファーストモデルとなったのが、フェラーリのレーシング・バルケッタ(オープン・レーシングカー)の祖ともいえる、1948年製の「166MM」を想起させるディテールをそのデザインのなかに採り込んだ、「モンツァSP1」と「モンツァSP2」の両車だった。ちなみにモンツァというネーミングもまた、1950年代のレーシング・バルケッタ、「750モンツァ」や「850モンツァ」から継承されたもの。フェラーリはこれらのきわめてスパルタンなレーシング・バルケッタを世界スポーツカー選手権へと投入し、そこで多くの勝利を重ねてきたのだ。
「モンツァSP1」と「モンツァSP2」に与えられた、ウインドウスクリーンやルーフも持たないボディは、軽量なカーボンファイバー素材によって製作されたもので、その基本的なスタイリングはお互いに共通している。しかし、前者はキャビンの助手席側がトノカバーで覆われているシングルシーターとして、そして後者はドライバーとともにパッセンジャーもその走りの楽しさを体験できる2シーターとしてデザインされているところに大きな違いがある。
参考までに当時フェラーリから発表されたドライウェイトは、SP1が1500kg、SP2は1520kgという数字。このボディに包み込まれるメカニズムは当時の12気筒ベルリネッタ(クーペ)、812スーパーファストのそれがベースとなっており、フロントに搭載される6496ccのV型12気筒エンジンは、さらに10psが強化され、810psの最高出力を誇った。これに7速ミッションを組み合わせ、0→100km/h加速では2.9秒、0→200km/h加速は7.9秒、そして300km/h以上の最高速を実現するというのがフェラーリからの発表値だった。
限定499台だからこそ生まれる希少価値
今回RMサザビーズのアブダビ・オークションに出品されたのは、2シーターの「モンツァSP2」、その2022年モデルだ。フェラーリはこのSP2とSP1を合計して499台を限定生産しているが、いかにセレクトされたカスタマーであっても、その両方を同時に購入することはできなかった。
つまりこのオークションは、新たにモンツァSP2を入手することを考える者はもちろん、あるいはSP1をすでに所有しながら、さらにSP2をコレクションに加えたいと考える熱狂的なフェラーリのコレクターにとっても、大いに気になるものだったことは容易に想像できる。
ちなみにRMサザビーズがオークション前に掲げた予想落札価格は225万ドル~275万ドル(邦貨換算約3億4785万円~4億2515万円)。新車価格は2018年の発表時には158万ユーロ(邦貨換算約2億698万円)とされていたから、その価値は確実に、そして大きく高まっていることが理解できる。
オークションで示された現在のモンツァSP2の市場評価
出品されたモンツァSP2は、グリジオ・ティターニオ・メタリッツァート(シルバーメタリック)のボディカラーに、ネロ(ブラック)のアクセントが施されたロッソ(レッド)を基調としたインテリアを組み合わせたもの。2021年10月に生産が終了した後、新車でドバイのカスタマーにデリバリーされた記録が残されている。
走行距離はわずかに812km。レザーとカーボンで製作されたフェラーリ・ブランドの専用ヘルメットを始め、純正のバッテリー・チャージャー、オーナーズマニュアルなども備わる、まさに新車と変わらないコンディションが保たれていた。最終的に落札価格は253万6250ドル(邦貨換算約3億9210万円)という数字を記録。フェラーリのIconaシリーズに対する注目度は、これからも変わることはなさそうだ。
