47年オーナーに守り続けられたベーシックなTA40
イギリスの名門オークションハウスとして、世界中のコレクターから一目置かれる「アイコニックオークショネアズ」。2025年11月8日に開催された「The Iconic Sale at The NEC Classic Motor Show 2025」にも、ミントコンディションの名車から個性的なカスタマイズ車両まで、多彩な車種が顔を揃えました。数ある出品車両のなかで、目を引いたのがビビッドなイエローカラーをまとったトヨタTA40型「カリーナ」です。ただし、エントリーされたのは走りのGTグレードではなく、もっともベーシックな仕様。何の変哲もないセダンがなぜコレクタブルオークションの舞台に立つことになったのか? クルマの歴史を振り返るとともに、その理由も紹介していきます。
セリカとコンポーネンツを共用するスポーティなセダンとして誕生
トヨタ カリーナは1970年から2001年まで生産されたトヨタのアッパーベーシックセダンである。そのコンポーネンツはトヨタ初のスペシャルティカーであるセリカと共用していたことから、スポーティなセダンとしての立ち位置が確立された。60代以上のクルマ好きであれば、CMキャラクターに俳優の故・千葉真一を起用し、「足のいいやつ」というキャッチコピーを掲げていたことを覚えている人も多いのではないだろうか?
車体バリエーションは2ドアセダン、2ドアハードトップ、4ドアセダンの3タイプ。1971年にはセリカ譲りの1.6Lツインカムエンジンを搭載し、名実ともにスポーツセダンの仲間入りを果たした。
以降、6代目を除いてスポーツツインカムエンジン搭載車を設定。4代目以降はセダンのみとなったが、後継のアリオンにバトンタッチするまで、初代が掲げたスポーティなセダンのコンセプトは一貫して守られてきた。
初代の素性を磨き上げその地位を確立した2代目
今回のオークションに登場したのは1977年にフルモデルチェンジされた2代目モデルだ。初代のイメージを色濃く受け継ぐ丸形4灯ヘッドライトは前期型のみの特徴。後期型は角型4灯ヘッドライトに改められ、全長を伸ばしたスラントノーズスタイルへと刷新されるなど印象を大きく変えている。
エンジンバリエーションは2Lツインカム、1.6Lツインカムに加え、2LのSOHC、1.8LのOHV、1.6LのOHVの5タイプを用意。初期型は1.6Lのツインカムを除き、すべてキャブレター仕様であったが、後期型は1.6Lツインカムがラインアップから外れ、1.8L SOHCのEFI仕様を追加、さらに2L SOHCエンジンが新世代型へと入れ替えられている。
足まわりは先代から継承されたフロントはストラット式、リアがラテラルロッド付き4リンク式を採用。走りを意識したセッティングが施され、スポーツライクなハンドリングが高く評価された。初代の築いた素性を磨き上げ、スポーツセダンの地位を確立したのが、この2代目と言っていい。
走行距離はわずか2万2697マイル(約3万6500km)という奇跡の個体
出品車両は日本から輸出された個体ではなく、UK仕様として1978年に新車登録された1台。グレードはツインカムエンジンを搭載するGTグレードではなく、1.6LのOHVエンジンを搭載するベーシックモデルだ。しかし、この個体が注目を集めた理由は別にある。1人のオーナーが、じつに47年間にわたって大切に所有してきた奇跡のサバイバー(未再生の生き残り)であることだ。ボディは新車のような光沢を保っており、タイヤは1978年当時のオリジナル品。走行距離も2万2697マイル(約3万6500km)と極めて少なく、まるで現役時代からタイムスリップしてきたかのようなコンディションを誇る。
トヨタのサービスブックには3つのディーラーのスタンプが残され、最後のMOT(イギリスの車検)の記録は2448マイル(約3900km)であることから、使用頻度は非常に少なく、長期間にわたり車庫で保管されていたことがうかがえる。
そのため、オークション出品に際して、安全に公道走行できるようにブレーキシステムの分解・清掃とラジエータのリフレッシュ、ゴムホース類やバッテリーの交換などのメンテナンスが施された。
歴史的な価値はあるがコレクションとしての価値は「?」マーク
アイコニックオークショネアズは、47年前のファミリーセダンが、フルオリジナルのままミントコンディション(極上状態)をキープしている例は非常に稀であり、自動車史を後世に残す観点から非常に価値ある存在であると判断。エスティメート(予想落札価格)を2万〜2万5000ポンド(約420万0000円〜526万0000円)と設定した。しかし、オークションでの入札は最低落札価格に達することはなく、この動く歴史遺産が新たなオーナーの手に渡ることはなかった。
やはり、いかにサバイバーとして希少な存在であっても、コレクターズカーとしての価値を持たないモデルには、収集家の食指は動きにくいということなのだろうか。もしかしたら、イギリスではなく日本のオークションであれば、国産車という観点から、その価値を認めてくれるオーナーが現れたかもしれない。そう思わずにはいられないレアなモデルであった。
