オークションで高値安定続くランボルギーニBonhamsロンドンに出品された「ハラマS」
名門オークショネア「ボナムズ」社が、ロンドン・メイフェア地区のニュー・ボンドストリートに構える本社ショールームを舞台として2025年12月11日に開催されました、クルマとオートモビリアのオークション「The Bond Street Sale 2025:Important Collectors’ Motor Cars and Automobilia」では、1台のランボルギーニ「ハラマS(400GTS)」が出品されました。今回はその車両概要とオークション結果についてお伝えします。
天才パオロ・スタンツァーニが実現したV12と4シーターの理想主義的パッケージングの絶妙
1970年3月のジュネーヴ・ショーにてデビューした「ハラマ400GT」は、ランボルギーニの第一作である「350GT/400GT 2+2」とその進化版にあたる「イスレロ」の後継車。そして、ランボルギーニのFRグラントゥリズモとしては、最後発のモデルとなった。
また、ジャンパオロ・ダラーラのあとを継いでランボルギーニ技術陣のトップの地位に就いた若きエンジニア、パオロ・スタンツァーニが、直後に相次いで発表した「ウラッコ」および「カウンタック」で一気に才能を開花させる、そしてこの「ハラマ」は、スペース効率の鬼のような理想主義的パッケージングを初めて実現したモデルとしても知られている。
ハラマでは400GTやイスレロ、あるいはフル4シーター車「エスパーダ」などに搭載されたものと同じ、V型12気筒4カムシャフト3929cc・350psエンジンと5速ギヤボックスをキャビン内まで深く侵入させるという、なんとも大胆なソリューションを選択。じつに2380mmという、400GTよりも170mmも短く、現代の軽自動車にも相当するホイールベース内に、長大なV12エンジンと2+2のシートアレンジを実現して見せた。この種の少量生産スーパースポーツでは鋼管スペースフレームが常套だった時代に、モノコック式ボディを採用しているのも、この高度なパッケージングを実現するためだったといわれている。
電動昇降カバーによって部分的に覆われる4灯式ヘッドライトを特徴とするハラマのスタイリングは、傑作「ミウラ」や「カウンタック」を手掛けたマルチェッロ・ガンディーニとカロッツェリア「ベルトーネ」で担当したものの、ボディ組み立てとコーチワークはイスレロと同じく「マラッツィ」社で行われた。
そして1972年には「ハラマ400GTS」、あるいは通称「ハラマS」と呼ばれるハイパフォーマンス版が、365psまでスープアップされたV12エンジンを搭載して登場。この実質的なマイナーチェンジでは、ボンネットにエアスクープが設けられるなどのデバイスが施され、デビュー当初からハラマを苦しめていた熱問題をおおむね解決させたという。またSへの移行ののちには、エアコンディショナーやパワーステアリング、「トルクフライト」3速オートマチックも注文可能となったといわれている。ハラマは1976年まで生産が続き、総生産台数は327台。うち150台が「ハラマS」仕様だったと言われている。
英国で愛された45年間の履歴と波乱のオークション結果
昨2025年末のボナムズ「The Bond Street Sale:Important Collectors’ Motor Cars and Automobilia」オークションに出品されたランボルギーニ ハラマSは、マニュアルトランスミッション+左ハンドル仕様車。1973年にサンタ・アガータ・ボロニェーゼ工場から送り出され、1980年5月に、5万7000キロを走行した段階で、今回のオークション出品者でもある現オーナーの手元にやってきた。
それ以前の所有者として記録されているのは、英国の石油・潤滑油製造会社の「バーマ・カストロール」社。そののち、英国チェシャー州ナッツフォードのディーラー「ニック・シュリグリー=ファイグル」を介して6600ポンドで現オーナーの手にわたり、当時は「UCA 291V」のナンバープレートで登録されていた。
1980年代初頭にボディ色替えのための再塗装、ボディの軽微なリペア、インテリアの張り替え、新品カーペットへの施工が行われ、これらの作業に約6000ポンドが費やされたのち、1982年に「VF 25」というイギリスでは稀少性が高く価値のある、短いアルファベットと数字で組みあわされた特別公布ナンバープレートとともに登録された。
翌1983年、現オーナーは英国の航空機メーカー「BAC(British Aircraft Corporation)」勤務のため滞在していたサウジアラビアから帰国し、英国に永住権を取得。以降の定期メンテナンスはランカシャー州ライザムの「フェルディーズ・ガレージ」に委託され、1985年から2019年までの34年に渡る詳細な作業書が保管されている。
2005年には、走行距離6万7000kmの段階でクラッチアッセンブリーを新品へと交換。また直近の請求書は、2022年に同じくライザムの「モダン・クラシックス」社による新品タイヤとホイール修復(2600ポンド)に支払われたとある。現時点における最後の車検は2018年、走行距離6万8800km時に実施され、ボナムズ・オークション社の公式オークションカタログ作成時の走行距離は、6万9016kmと申告されていた。
さらに、オリジナルのセールスパンフレットや英国内での登録履歴を記した「V5C証明書」、1979年当時の走行距離計表示5万5000キロを記録したものも含む、多数の古いMoT車検証明書もドキュメントファイル内に保管されているとのこと。ただし、先述した特別登録された短いナンバープレート「VF 25」は、その稀少性から別売(!)との由であった。
ボナムズ社では、今回の出品にあたって9万ポンド~12万ポンド(邦貨換算約1908万円〜2544万円)という、現在の市場におけるハラマの評価を熟慮したと思われるエスティメート(推定落札価格)を設定した。ところが2025年12月11日、同社がロンドン市内ニュー・ボンドストリートに構える「ボナムズ・ショーケース」で行われた競売では、エスティメート下限を大きく割り込む7万8200ポンド、現在のレートで日本円に換算すれば約1650万円という、売り手にとってはいささか残念、落札者にとってはリーズナブルと言えるハンマープライスで落札に至ったのだ。この値付け、貴方ならどう思っただろうか。
※為替レートは1ポンド=212円(2025年12月11日時点)で換算
