魅惑のクラシックスーパーカー入門編。308GTBの市況は今年も堅調?
2026年1月23日に、RMサザビーズ北米本社が米国アリゾナ
フェラーリの成功を決定づけた名作! 308GTBとはどんなクルマだったか
フェラーリの歴史的傑作「ディーノ246GT」シリーズの後継車として、1975年のパリ・サロンにて初お披露目された308GTBは、ディーノGTのグラマラスさを1970年代的なモダニズムにブレンドしたボディラインと、ミッドシップに搭載されたV8エンジンレイアウトで、あっという間に世界中のエンスージアストを魅了してしまった。
キャビン後方に横置きされた2926ccの4カムシャフトV8エンジンは、5速マニュアルのトランスアクスルと組み合わせられ、4基のウェーバー社製DCNFダウンドラフト型キャブレターによる鋭いスロットルレスポンスと、背筋がゾクゾクするようなエキゾーストノートを実現する。
308GTBとのちに登場する308GTSは、ほぼ完璧な重量配分と精密なラック・アンド・ピニオン式ステアリングにより、あらゆるコーナーをスリリングなものに変えた。フェラーリ伝統となる、その象徴的なゲート式シフトレバーは、素晴らしい触覚的運転体験を乗り手にもたらしてくれる。
デビュー当初に生産された車両は、フェラーリ製ストラダーレ(ロードカー)としては特異な軽量FRP製のボディを持つのも特徴だ。そしてこのFRP製の308GTBのことを、イタリアでは「Vetroresina(ヴェトロレズィーナ」の愛称で呼ぶ。「ヴェトロ」とはガラスのこと、そして「レズィーナ」はレジン(樹脂)を意味する。つまりガラス繊維を樹脂で固めた「グラスファイバー(FRP)」をそのままイタリア語としたニックネームだ。
ピニンファリーナがデザインしたボディの架装は、当時フェラーリ社の傘下に収まったばかりのカロッツェリア「スカリエッティ」が担当することになった。ところが、この時代にイタリアで吹き荒れていた労働争議の影響を受けて、開発段階で使用を予定していたスチール製ボディパネルの生産が間に合わなくなる可能性が高まっていたため、発売当初はマラネッロ製ストラダーレとして初めての経験となるFRP製ボディが架装されることになったとのいきさつだ。
しかし、実際に308GTBの生産が軌道に乗ったのち、1977年6月以降の生産分はスチール製ボディパネル(開口部はアルミパネルを併用)に置き換えられることになった。
現在の市場ではスチールボディよりもFRPボディのほうが高評価か?
今回のRMサザビーズ「ARIZONA 2026」オークションに出品されたフェラーリ 308GTBはアメリカ仕様として生産され、その生涯の大半をアリゾナ州内で過ごしてきたと目され、その積算計は49年間でわずか2万2000キロに留まっている。車両に添付されたドキュメントによると、この個体は1977年12月に製造が完了。つまりは1977年式でも、すでにボディがスチールに置き換えられてから生産された車両ということになる。新車時から「ネロ(ブラック)」のボディカラーと「ロッソ(レッド)」の本革レザーという印象的な組み合わせで設えられ、1980年代までさかのぼる整備履歴が文書で残っている。
この記録によれば、ランボルギーニ社の伝説的エンジニア兼テストドライバーのボブ・ウォーレスがアリゾナ州フェニックスに開業した「ボブ・ウォーレス・カーズ」社により、1988年にエンジンがオーバーホール(当時の費用は9596ドル)されたほか、1990年代まで同社による整備が継続された。
また2016年には、フェニックスの「エクスクルーシヴ・モーターカーズ」社により、エンジンの主要ベルト類が交換されたサービスなどが記録されており、同時に内装の全面リニューアルを実施している。シートやドアパネル、ダッシュボード、センターコンソール、リアパーセルシェルフ、ルーフピラーの再張り替えを行ったと残っている。その際にシートとドアパネルは赤革で仕上げられている。
さらに2019年には同じくエクスクルーシヴ・モーターカーズ社がクラッチ一式を新品交換。2022年にはアリゾナ州ファウンテンヒルズの「フェラーリ・モーターサービス」がキャブレター調整、オルタネーター交換、スパークプラグ新品交換などを実施した。
そしてオークション前月の2025年12月には、アリゾナ州アパッチジャンクションの「ウォームスバッハー・モーター・ヴェルクス」がタイミングベルト交換を実施。追加作業としてブレーキフルード交換を含むブレーキ整備、ブッシュ交換を伴うステアリングとサスペンション調整、新品のコニー製リアショックアブソーバーの装着を行った。
RMサザビーズ側は
「圧倒的な美貌、ダイナミックな走行性能、そして記録された整備履歴を備えたこの308GTBは、70年代フェラーリの最高峰を体現しています。次世代へと受け継がれ、走り、賞賛され、愛され続ける1台です」
と高らかに美点を謳ういっぽうで、10万ドル〜15万ドル(邦貨換算約1550万円〜2330万円)という、スチールボディの308GTBとしては自信ありげなエスティメート(推定落札価格)を設定。また、このロットについては「Offered Without Reserve(最低落札価格なし)」で行うこととした。
この「リザーブなし」という出品スタイルは、ビッド(入札)価格の多寡を問わず確実に落札されることから競売会場の購買意欲が盛り上がり、エスティメートを超える勢いでビッドが進むこともあるのがメリットだ。しかしそのいっぽうで、たとえ出品者の意にそぐわない安値であっても落札されてしまうという不可避的な落とし穴もある。
こうして迎えた1月23日のオークション当日だが、今回はリザーブなしのデメリットが露呈した形となった。逆に落札者の立場からすればより好ましいであろう、8万9600ドル。現在のレートで日本円に換算すると、約1390万円という、スチールボディのキャブレター仕様308GTBとしてはあまりに相場感を反映したと思われる価格でハンマーが鳴らされるに至ったのだが、この価格だったら日本の相場をはるかに下回っていると思うのは気のせいだろうか。
※為替レートは1ドル=155円(2026年2月19日時点)で換算
