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270万台の大ヒットで「壊れないメルセデス」神話を確立! 生誕50周年メルセデス・ベンツ「W123」の魅力を再確認!!

圧倒的な耐久性を誇るディーゼルエンジン搭載車は、世界各国のタクシーとして重宝され大活躍した

Eクラスの礎を築いた生誕50周年を迎えたメルセデス・ベンツ「W123」の偉大な功績を再考する

2026年は、1886年にメルセデス・ベンツが誕生して140周年にあたります。そして今から50年前の1976年1月、のちの「Eクラス」の礎となるミディアムクラス「W123」が正式に発表されました。生産台数約270万台という驚異的なヒットを記録し、世界中のタクシーや過酷なラリーでも活躍した伝説の名車です。その50周年を記念し、W123が自動車史に刻んだ偉大な功績と先進的なメカニズムの数々を詳しく振り返ります。

元祖オーバークオリティの「ミディアムクラス」が打ち立てた10年で生産270万台という大ヒット

1970年代のメルセデス・ベンツを象徴するモデルのひとつが、1976年に発表されたメルセデス・ベンツ「W123」シリーズだ。先代の「W114/W115」シリーズの後継として開発された。

このW123は、メルセデス・ベンツの哲学である「最善か無か」を具現化した存在である。同社の歴史のなかでも屈指の成功を収めたモデルだ。1986年までに生産された台数は約270万台。これは当時のメルセデス・ベンツとしては驚異的な数字である。のちに「Eクラス(W124)」と呼ばれるミディアムクラスの地位を確立した、記念碑的モデルでもあるのだ。

若々しさをまとった新世代のデザイン意匠とはばひろい車種バリエーションが123シリーズ成功のカギ

W123が正式に公開されたのは1976年1月。スタイリングは先代の縦目(W114/W115)に比べて、スリムで洗練された印象となった。従来の顧客層だけでなく、より若い世代にも訴求するデザインであると筆者は痛感した。

ヘッドライトは4気筒モデルが丸型4灯式、6気筒モデルは角型だった。当時、4気筒モデルを角型ライトに変えるカスタマイズが流行した。しかし1977年9月のロンドン〜シドニー・マラソンラリーで「280E」が優勝すると、このラリー仕様のマシンが「4灯式ヘッドライト+ドライビングライト」を装着しており、それがかなりカッコよかったため、慌てて丸型に戻したというエピソードが世界中で聞かれた。

技術面では、当時のフラッグシップであるメルセデス・ベンツ「Sクラス(W116)」のコンポーネントを受け継いでいた。発売直後から市場の反応は極めて良好で、生産初年度の車両はすぐに完売した。顧客のなかには納車まで1年以上待たされるケースもあったほどだ。

W123の魅力はそのバリエーションの豊富さにもある。1976年に登場したセダンに続き、1977年にはBピラーを持たない優雅なハードトップスタイルの2ドアクーペ(C123)を発表。同年9月には「Tモデル(TouringやTransportを意味する)」と呼ばれたステーションワゴン(S123)が追加された。さらにホイールベースを延長したリムジン仕様や、救急車などの特殊架装モデルも用意され、幅広い用途に対応するシリーズへと発展した。

市販車ベースで史上最長のマラソンラリー優勝やタクシー使用で証明された圧倒的な耐久性と信頼性!

中古車市場でも高い価値を維持し、価値落ちの少ないクルマとしても知られた。とくに耐久性に優れるディーゼルモデルは世界各国のタクシーとして採用され、その信頼性の高さを証明する存在となった。

W123の耐久性を世界に知らしめた出来事として有名なのが、1977年のロンドン〜シドニー・マラソンラリー1977年大会は、走行距離が約30,000kmという「史上最長のラリー」として知られている。この過酷な長距離ラリーに参戦した「280E」は総合優勝を達成した。アンドリュー・コーワンが見事にゴールまでトップで走り切ったのだ。しかも2位にもトニー・ファウクスの280Eチームが入ったほか6位、8位とトップ10に4台がランクインする圧倒的な成績を残した。中でも6位入賞したクルマは、驚くべきことにドライバーの疲労軽減を目的としたメルセデス製4速オートマ搭載車両だったのだ。

また地球の4分の3を走るという過酷なラリーに出場したこの280Eは、特別に仕立てたワークスマシンではなく、市販車にロールケージやフロント&アンダーガードなど長距離ラリー用に強化を施しただけという仕様だったのだ。この280Eの成績により、W123の高い信頼性と耐久性を象徴するエピソードとして現在でも世界中で語り継がれている。とくに優勝したカーNo.33の280Eは、現在メルセデス・ベンツミュージアムに展示されている。

徹底した乗員保護の安全設計と高度なシャシー先進技術を様々な耐久試験を経て惜しみなく投入!

W123の開発は1968年に始まり、設計の中心には安全性が据えられた。ボディは前後に衝撃吸収式構造と、頑丈なセーフティセルを組み合わせた設計となっている。また、コンピューター設計システム「ESEM」が導入され、客室剛性の最適化やルーフピラーの角度などが計算によって決定された。オフセット衝突試験や90度バンク高速走行テストなど、数多くの耐久試験を経て完成したモデルである。

事故の際にはドアが外から開き、乗員を素早く救出できる2重のドアロック構造を採用。ステアリングコラムは新設計の「コルゲート・チューブ・タイプ」として衝撃を吸収し、安全性を向上させた。燃料タンクは衝突時の変形ゾーンを避けた安全なトランク隔壁とリアシート間に配置。メルセデス・ベンツ独自の救急箱はハットシェルフに格納され、手が届きやすい位置にセットされた。

足まわりにも先進技術が投入された。フロントサスペンションはSクラス(W116)と同じ構造を採用。これは「走る実験室」と呼ばれた「C111」で開発した、スクラブ半径がゼロになるジオメトリーだ。片方のタイヤがバーストした時などでも、優れた安定性を発揮してくれる。

多彩なエンジン種類と得意の長距離ドライブを支える「呼吸するシート」など快適な安全性を注入!

W123には多様なエンジンが用意された。ガソリンエンジンは4気筒の「200」「230」と、6気筒の「250」「280」「280E(Eは、燃料噴射を意味する Einspritzung:アインシュプリッツング) 」。燃料噴射システムにはボッシュ製Kジェトロニックが採用されている。

ディーゼルエンジンは「200D」「220D」「240D」に加え、革新的な直列5気筒の「300D」が設定された。この5気筒ディーゼルは耐久性に優れ、長距離走行を得意とするエンジンとして高い評価を受けた。さらに1980年にはターボチャージャーを装着した「300TDターボディーゼル」が登場している。整備性も特筆もので、ボンネットは90度の角度まで開き、オイルチェンジも上から抜き取ることができた。

広い視界の確保や、雨水でサイドウインドウやテールライトが汚れないようなボディ形状の工夫など、ドライバーの安全性を重視した設計が随所に見られる。

とくに素晴らしいのが「呼吸するシート」と呼ばれた多層構造のシートだ。常にシートのなかの空気の循環を保ち、身体の湿気や汗を吸収して発散させる。サポート性の良い硬めの座り心地で、長距離運転しても疲れないシートだった。W123の時代、筆者は日本仕様のカタログ撮影のために箱根などで各モデルを運転する機会を得たが、メルセデス・ベンツが長年追求してきた「快適な安全性」を肌で体験させてもらったのを昨日のことのように思い出す。

誕生から半世紀を過ぎた現在も色あせない「信頼性の象徴」こそW123ミディアムクラス最大の魅力!

1975年から1986年までに約270万台が生産されたW123シリーズは、メルセデス・ベンツのミディアムクラスの地位を世界的に確立したモデルである。安全性、耐久性、快適性を高い次元で融合させたW123は、中型車の理想像と呼ぶにふさわしい存在だ。

1984年には後継モデルのEクラス(W124)が登場し、その役割を引き継ぐことになる。しかし、W123が築いた評価は今なお色あせることはない。メルセデス・ベンツの140年の歴史のなかで、W123は「信頼性の象徴」として誕生からすでに半世紀を経たいまでも語り継がれる名車なのである。

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