シビックからプレリュードへ変更したホンダの空力戦略と、タイヤコンペ最終年の勢力図とは!?
いよいよ2026年シーズンのAUTOBACS SUPER GT(S-GT)が開幕します。今季最大のトピックスは、ホンダがGT500クラスのベース車両をシビックからプレリュードへと変更したことです。ストレートスピードとコーナリングの両立を目指す空力戦略は功を奏するのでしょうか。また、2027年からのコントロールタイヤ導入を控え、マルチメイク最後の年となる今シーズンの勢力図と、テスト走行から見えてきた最新の動向を紐解きます。
シビック投入から2年でスイッチしたプレリュードGTのトップスピードはライバル2車に勝てる!?
2026年4月11/12日にもてぎ(モビリティリゾートもてぎ)で新シーズンが開幕した全日本スーパーフォーミュラ選手権(SF)。それに続いて、4月18/19日には岡山(岡山国際サーキット)でAUTOBACS SUPER GTシリーズ(S-GT)が開幕の予定だ。国内モータースポーツも、いよいよ本格的なシーズンスタートが切られることになった。
モータースポーツがレーシングカー=高度で複雑な機械を使う競技である以上、“技術競争”な一面を持っているのは事実だ。そういった意味では、シャシーがワンメイクで“ヒューマン・モータースポーツ”を謳っているSFよりも、S-GTのほうがメカ好きには堪らないレースと映るのも否定できない。GT500クラスでは、トヨタと日産、ホンダの国内トップ3メーカーが鎬を削っているからだ。
そんなS-GTの2026年シーズンだが、トヨタと日産はカウルワークを新スペックに進化させている。しかし、基本的にはベースモデルをそれぞれGRスープラとZで継続している。それに対して、ホンダがベースモデルをシビックからプレリュードに変更しているのが目新しい。2025年までのシビック タイプRをベースにしたマシンは、S-GTでは珍しい5ドアハッチバックだった。しかし新しいプレリュードは3ドアクーペだ。丸っこいシビックからスリークなプレリュードへと、ルックスも一新された。
共通モノコックが採用された2014年以降のS-GTにおいて、ホンダは長い間NSXを主戦マシンとして戦ってきた。スタイル的にはいかにも“スポーツカールック”なNSXをベースにしたマシンは、ストレートでの最高速よりも高速コーナーでの旋回速度を重視したコーナリングマシンであった。そのため、長いストレートを持つ超高速レイアウトの富士では苦戦を強いられることが多かったのだ。
しかし2024年に登場したシビックは、前述したように丸っこいビッグキャビンを持っている。これまで以上にストレートでの速度競争で大きく後れを取るのではと危惧された。だが、シェイクダウンテストからストレートが速いとライバルにも注目されるようになったのだ。ただし、ストレートが速い≒コーナーが遅いという法則があり、当初はコーナーが弱点となっていた。これを開発とセットアップでカバーし、ストレートのトップスピードを少し削ってダウンフォースを確保。コーナーでもライバルと同等の速さを見せるようになった経緯があった。
これを受けてか、新たな主戦マシンのベースとなったプレリュードは、キャビンがスリークな3ドアクーペスタイルとなっている。念のために付け加えるなら、ベースモデルが決まったら、そのシルエット(ボディ形状)をベースにスケーリングという作業によってマシンのボディ形状が決定する。
こうして誕生したプレリュードのGT500仕様、車名はHonda HRC PRELUDE-GTだったが、シェイクダウンテストでストレートのトップスピードが伸びないことが判明した。同じラップタイムでも、ストレートが遅ければレースで不利になることは明らかだ。ここからの開発とセットアップでは、多少コーナリングスピードを犠牲にしてでもドラッグを減らす必要がある。つまりダウンフォースを削ってでも、トップスピードを稼ぐしかない。誰かの歌ではないけれど、まるで『行ったり来たりすれ違い…』の状況と言えようか。
岡山国際と富士SWの公式テストから読み解く最新のトヨタ/ニッサン/ホンダのシン勢力図とは!?
ちなみに富士でのテストでは、#36 au TOM’S GR Supraの坪井翔がトップタイムをマークしていた。しかし2日目には#16 ARTA MUGEN HRC PRELUDE-GTの佐藤蓮がトップタイムをマークしている。いずれもコースレコードから約2秒遅れだった。
また最高速をマークしたのは#39 DENSO KOBELCO SARD GR Supraで、#23 MOTUL Niterra Zが僅差で続いた。プレリュード勢の最速は#8 ARTA MUGEN HRC PRELUDE-GTと#17 Astemo HRC PRELUDE-GTだ。#39から4.6km/h差で同率9番手につけていた。ただし、必ずしもベストラップをマークした周に最高速を記録したというわけでもないため、その相関関係は断言しきれない。
さらに、オフのテストや岡山と富士での公式テストを走りながら開発とセットアップを続けてきた。しかし、岡山や富士の初日では気温/路温が低すぎて有効なデータを取り込むことができなかった(はず)だ。富士の2日目も気温/路温が低かったものの、何とかデータを採れたはずである。はたして岡山の開幕戦と富士での第2戦で、どこまで反映されたものとなるかは不透明だ。
2026年シーズンをもってGT500/GT300クラスともにタイヤ開発戦争終焉と今シーズンの行方
プレリュードの登場以外にも、メカニズム関連では大きなニュースがある。それはタイヤに関するものだ。2027年シーズンからはGT500とGT300の2クラスそれぞれにコントロールタイヤ制が導入される。つまり、2026年シーズンがタイヤ・コンペのラストシーズンとなったのだ。
具体的な変更点としては、KONDO RACINGの#24 リアライズコーポレーション Zがブリヂストン・ユーザーとなった。これによりGT500では、ヨコハマ(TGR TEAM WedsSport BANDOHの#19 WedsSport BANDOH GR Supra)とダンロップ(Modulo Nakajima Racingの#64 Modulo HRC PRELUDE-GT)のユーザーが各1台のみとなっている。
ヨコハマは2025年の第6戦・SUGOでKONDO RACINGが優勝を飾っている。TGR TEAM WedsSport BANDOHも速いところを見せていた。いっぽうでシーズン後半からはダンロップも速さを見せ、第7戦のオートポリスではModulo Nakajima Racingが表彰台を奪った。
先に触れたように、ここまでのテスト結果でどこまで判断できるかは難しいところだ。しかし、#64 Modulo HRC PRELUDE-GTが好調なところを見せて期待が高まっている。同時に、#24 リアライズコーポレーション Zがブリヂストンにコンバートしたことで、全車がブリヂストン・ユーザーとなった日産勢の動向も注目を集めている。
S-GT平日テストでも大盛況の観客動員と日本未発売の新FRO車両登場など楽しめる豊富な話題
それにしてもS-GTの人気の高さには驚かされるばかりだ。富士の公式テストは例年と違って日曜から月曜の2日間で開催された。2日目は平日にもかかわらず、早朝から多くの観客が来場した。朝のセッション開始前の午前8時半過ぎには、カメラを構えるファンでコースサイドが大盛況だった。富士スピードウェイもこれに応えるように、一部のピットを開放して“激感ピット”を設定するなど、観客サービスを充実させていた。
また、レースカー以外にも新シーズンに向けての“ニューマシン”が登場する。それはS-GT独自の安全対策として整備されたFRO(ファースト・レスキュー・オペレーション)用車両の刷新だ。これまでのY62型パトロールNISMO(ニスモ)に代えて、7代目となる新型(Y72型)パトロールNISMOが日産/日産モータースポーツ&カスタマイズから提供されることになった。
じつは、このY72型パトロールNISMOは日本国内では正規販売されていない中東向けの超大型SUVである。そんな希少なモデルが日本のサーキットを駆け抜けるというギャップも、クルマ好きのファンにとっては見どころのひとつとなるだろう。
正式採用はS-GTの開幕戦となる。この日には贈呈式も行われる予定だ。富士の公式テストでもすでにお披露目があり、その偉丈夫な体躯に観客も足を止めて見入っていた。
