約489万円のハンマープライス! カリスマの愛車という付加価値が呼んだ好結果
ポルシェ界における世界的なインフルエンサー、マグナス ウォーカー氏の個人コレクションがRMサザビーズのオークションに登場しました。なかでも注目は、ウォーカー氏が10年にわたり日常の相棒として愛用した1978年式ポルシェ「928」です。過小評価されがちなV8モデルが、カリスマの手によっていかに正当な評価を受けたのか、その名の由来や技術的価値とともにレポートします。
マグナス・ウォーカー愛蔵のポルシェ「928」を放出、不朽の意匠と先進の走行性能を誇るGTマシンの魅力
マグナス ウォーカー氏といえば、ポルシェ界におけるワールドワイドのインフルエンサーだ。伝説的なカーカスタマイザーであり、その代名詞でもある「アウトロー(Outlaw)」スタイルを、自動車のみならずファッションの面でも全世界に流布したレジェンドである。
そんなウォーカー氏の個人的コレクションが、RMサザビーズ北米本社の開催による「Magnus Walker:The Outlaw Collection」オークションにて放出された。
マグナス ウォーカーは出品したポルシェ 928について次のようにコメントしている。
「これは、伝説的な911の後継車となるはずだったモデルです。結局、その役割を果たすことはありませんでしたが、独自の歴史を築き上げ、その存在感は50年近く経った今でも色褪せていません。このクルマのデザイン言語を見れば、その普遍性がわかります。本当に過小評価されていると思うクルマですが、忘れてはならないのは、1978年の『ヨーロッパ カー オブ ザ イヤー』に選ばれたこと。また、センターコンソールを見れば、それが今日のポルシェ、タイカンからマカン、そして911に至るまで、すべてのモデルに受け継がれていることがわかります。928は当時としては非常に先進的であり、今でも人々の目を惹きつけてやみません。この1978年式928は、私が約10年前に初めて購入した928です。『オークグリーン メタリック』という素晴らしいカラーで、サンルーフなしの5速マニュアル、ブロンズゴールドの『テレフォンダイヤル』型アロイホイールを履き、インテリアはピーナッツバターのようなタン色です。優れた重量配分により、928は抜群のハンドリングを発揮します。十分なパワーと低回転域のトルク、中速域のトルクを兼ね備えているため、山道で走らせるのに本当に楽しくて機敏なスポーツカーであるだけでなく、日常の足としても最適です。さらにいうなら、ロードトリップに最適なGTカーでもあります。信じられないかもしれませんが、4人乗りで荷室も広々としており、ほかに類を見ないユニークなドライビング体験を提供してくれるからです」
クラシック ポルシェ界の生ける伝説、マグナス ウォーカー氏が熱弁するように、ポルシェ「928」はシュトゥットガルトの伝統から画期的な転換を遂げたモデルだ。数十年にわたってポルシェの象徴となってきたリアエンジン&空冷レイアウトに代わり、928はフロントに搭載された水冷V型8気筒エンジンを採用し、革新的な「ヴァイザッハ」リアトランスアクスルと組み合わせることで、ほぼ完璧な重量配分を実現した。
この「ヴァイザッハ アクスル」と呼ばれるリアサスペンションは、コーナリング中に荷重がかかると後輪をトーイン(内向き)に変化させ、リアの安定性を劇的に高める「パッシブ リアホイール ステアリング」の先駆けといえる画期的な構造であった。 911の後継車として構想された928は、ポルシェの卓越したエンジニアリングと先見の明を体現し、当時のほかの高級GTではほとんど見られなかったレベルで、パフォーマンスと洗練さを融合させていたのである。
伝説的収集家が10年愛用のポルシェ「928」が競売へ、走行25万キロ超でも輝き増すGTの真価
さきごろRMサザビーズ「Magnus Walker:The Outlaw Collection」オークションに出品された、マグナス ウォーカー氏が所有するポルシェ「928」は、このモデルとしてもとくに際立つ魅力を有する1台といえるだろう。
当時から非常に人気があった「Y4オークグリーン メタリック」のボディカラーに、「コルクブラウン」のインテリアが施され、目を引くピンストライプのシートインサートが、この時代を感じさせるアクセントとなっている。
また「スリックトップ」と呼ばれるサンルーフなしの仕様であることも見逃せない。ボディ剛性が高く、ヘッドクリアランスにも余裕があるこの仕様は、本格的な走りを楽しむエンスージアストの間では、現代において標準仕様よりも高値で取引される傾向にある希少なものだ。
トランスミッションは5速マニュアルを搭載し、ひと目でこの時代のポルシェと分かるブロンズ仕上げの「テレフォンダイヤル」型ホイールを履いている。この個体は10年以上にわたりウォーカー氏のコレクションの一角を占めており、公式オークションカタログ作成時点のオドメーターは、15万8515マイル(約25万3600km)の走行距離を示していた。
近年におけるポルシェ「928」は、名作911の後継車として「失敗してしまった」クルマとしてではなく、それ自体がソフィスティケートされ、技術的に革新的なグランドツアラーとして。あるいは、ポルシェブランド全体においてパフォーマンスとラグジュアリーの新たな基準を打ち立てたクルマとして、国際クラシックカー マーケットにおける評価も急速に高めていることは、もはや周知の事実といえよう。
25万キロ超のポルシェ928が、カリスマの付加価値と「走る伝説」の魔法(!?)で予想外の高額落札!
RMサザビーズ北米本社は公式カタログ内で「カリスマ的なV8エンジンのサウンド、バランスの取れたドライビングダイナミクス、そして紛れもない先鋭的デザインを備えた928は、今やポルシェの歴史においても重要な功績の一つとして正当に評価されています」という評価をしつつ、2万ドルから2万5000ドルのエスティメートを表示。そのうえで「Offered Without Reserve」、つまり最低落札価格は設定しなかった。
この「リザーヴなし」という出品スタイルは、金額を問わず確実に落札されることからオークション会場の雰囲気が盛り上がり、ビッドが進むことも期待できる。ただしそのいっぽうで、ビッドが出品者の希望に達しなくとも落札されてしまうというリスクも二律背反的に持ち合わせる。
そして迎えたオンライン競売では順調にビッドが伸び、1週間後の締め切りまでにエスティメート上限を大きく超える3万800ドル、現在のレートで日本円に換算すれば約489万7200円で落札されるに至った。
実際のところ、公式カタログの写真を見る限りでは、とくにインテリアのコンディションはイマイチで、エスティメートの段階からしてこの年式の928としては、いささか高めにも思われた。
しかし、こうしてハンマープライスというかたちで見せられると、やはりアメリカのポルシェ愛好家にとって「元マグナス ウォーカーのポルシェ」のオーナーになるというのは、とても魅力的な付加価値があることなのであろう。
走行25万キロを超えてもなお輝きを失わないデザインと、カリスマが日常の相棒として選んだという事実。この落札結果は、ポルシェ「928」というモデルが持つ本質的な実力と、ストーリーが持つ力強さを改めて証明するものとなった。
※為替レートは1ドル=158円(2026年4月21日時点)で換算
