エスティメートを大幅に超える1224万円! レース由来のキットが放つ魅力
ポルシェ界の世界的インフルエンサーであるマグナス ウォーカー氏の個人コレクションが、RMサザビーズのオークションで放出されました。空冷911のイメージが強い氏のコレクションのなかに含まれていた、アル ホルバート製ワイドボディキットを纏う1980年式「ポルシェ 924ターボ」の概要と、驚きのオークション結果についてレポートします。
マグナス・ウォーカーが秘蔵した、伝説のレーサーによる「アル・ホルバート製ワイドボディ」のポルシェ924ターボ登場!
2026年3月18日から25日にかけて、RMサザビーズ北米本社は「Magnus Walker:The Outlaw Collection」と銘打ったオンライン限定オークションを開催した。ポルシェ界におけるワールドワイドのインフルエンサー、マグナス ウォーカー氏の個人的コレクションが放出されることになった。
そしてその販売対象には、彼のスタイルを象徴する空冷911のみならず、ちょっと意外にも感じられそうな水冷FRポルシェが複数含まれていた。
今回はそのなかから、アウトローな雰囲気を漂わせるポルシェ 924ターボに注目する。マグナス ウォーカー氏自身は、この特別な愛車について次のように語っている。
「私の1980年式924アル ホルバート ワイドボディ ターボは、本当に、本当に特別なクルマです。この車両はもともと1980年の7月31日に、ニュージャージー州の『ハーマン ミラー ポルシェ』社に納車されました。1983年には、同じくニュージャージー州で、アル ホルバート製のワイドボディキットが装着されました。忘れてはならないのは、アル ホルバートがポルシェのワークスドライバーであり、レーサーであり、ディーラーでもあったということです。ル・マンにも参戦するかたわら自身のディーラーを経営し、1980年代初頭には1980年のル・マン参戦車である924GTPをベースにした、924ターボ用の独自のワイドボディ ファイバーグラス コンバージョンキットを提供していました。これは45年前の話です。その時代を遥かに、遥かに、遥かに先取りしていたのです。私はこの極めて特別な、唯一無二のポルシェを10年前の2016年、3代目オーナーから入手しました。フロントに9インチ、リアには11インチという非常にレアな3ピースのBBSホイールを装着しています。さらに、サイドを走るマルティーニ レーシングのストライプと、極めてクールなインテリアが相まって、この924を真に特別な1台にしています」(マグナス ウォーカー)
この興味深いトランスアクスル仕様のポルシェは、ペンシルベニア州ウォリントンにある「ホルバート レーシング」が製作した、特徴的な超ワイドなFRP製ボディキットを備えている。
アル ホルバートは「インディカー」や「SCCA」、「NASCAR」そして「IMSA」の各選手権で活躍したいっぽう、彼の父親はウォリントンにて全米で最初のポルシェ正規ディーラーのひとつを開設していた。
アルも自身のチームを率いる傍ら、一時期は「ポルシェ ノースアメリカ」のモータースポーツ部門を統括し、「ローエンブラウ」がスポンサーとなったポルシェ 962とともに1985年と1986年にIMSA GTP選手権を2年連続で制覇したほか、ロスマンズがスポンサーとなった962で総合優勝を果たすなど、数多くの輝かしい勝利を収めた。
これは、そんなレジェンド的人物が924ターボのポテンシャルをさらに高めるべく開発した、レース由来のスペシャルキット装着車両だったのだ。
924カレラGT譲りのワイドボディに負けず、エンジンもカレラGT心臓部を宿した「アウトロー的ポルシェ」が競売へ
このほどRMサザビーズ「Magnus Walker:The Outlaw Collection」オークションに出品された、マグナス ウォーカー所有の1980年式924ターボは、FIAホモロゲーション申請のため1980年1月1日付で生産が完了したと称されるうちの一台だ。また、もとより米国での販売が予定されていたUS仕様車である。
新車としてラインオフしたときには「アルパインホワイト」のボディに、ブラックの一部レザー内装、そしてベンチレーテッドブレーキディスク、大型アンチロールバー、コニ製ショックアブソーバーを含む、非常に人気の高い「スポーツグループパッケージ(オプションコード471)」が装備されていた。
そのほかのメーカーオプションには、リミテッド スリップ ディファレンシャルやリアワイパー、電動アンテナ、4つのスピーカー、リアスポイラー、盗難防止のアラームシステムが含まれていた。
ホルバート レーシング製のワイドボディキットは、1983年にニュージャージー州チャタムにある「パテレック ブラザーズ」社によって、初代オーナーのために取りつけられたと伝えられている。そのオーナーは長年の「ポルシェ クラブ オブ アメリカ(PCA)」会員であり、2000年までこの個体を所有していたとされる。
次のオーナーは数年間所有したあと、前オーナーに売却する。前オーナーもまた長年のPCA会員だった。彼は2.0Lの直列4気筒エンジンに「カレラGT」仕様の「6.10 K26」ターボチャージャーやそのほかのコンポーネントを組み込んで改造を施し、地元のクラブイベントでこの924ターボを披露していた。
ベースとなった「ポルシェ 924 カレラGT」といえば、ポルシェがル・マン24時間レースに参戦するために製作したホモロゲーションモデルであり、熱狂的なポルシェファンにとっては神格化された特別な存在だ。その由緒あるパーツを的確に組み込むというアプローチは、まさにポルシェの歴史に敬意を払った「アウトロー」なカスタムといえるだろう。
さらに、慎重に検討されたパフォーマンス向上のための追加パーツとして、「アウディ 200ターボ」の北米仕様車「アウディ 5000」用の大型スロットルボディや「PWR」社製の空水冷インタークーラー、アフターマーケット製オイルクーラー、「ビリー ボート」社製のB&Bステンレススチール製キャットバック(触媒つき)エキゾーストシステムが装着された。
そして前オーナーは、その所有期間中に約7000マイル(約1万1000km)を走行したのち、2016年にマグナス ウォーカー氏にこのポルシェ 924ターボを売却する。
このユニークなポルシェの興味深い特徴としては、一目瞭然のワイドボディキットやBBSホイールに加え、924の北米限定バージョン「マリオ アンドレッティ シグネチャーエディション」専用のMOMO社製ステアリングホイール、緑色の目盛りが入ったメーター類、そして車内から操作するターボブーストコントローラーなどが挙げられる。
マグナス愛車のノーマル924ターボの5倍以上の競値を付けた「アル ホルバート製ワイドボディキット」付きの驚愕の価値
RMサザビーズ北米本社は
「一般的な仕様のポルシェ 924ターボよりも高いパフォーマンスと、それにふさわしいルックスを兼ね備えており、トラックデイや山道でのドライビングに最適な1台となるでしょう」
とPRしつつ、とくに内装のコンディションからすれば過大評価にも映りそうな45000ドルから50000ドル(邦貨換算約715万円から795万円)のエスティメートを設定。そのうえで「Offered Without Reserve」、つまり最低落札価格は設定しなかった。
この「リザーヴなし」という出品スタイルは、金額を問わず確実に落札されることからオークション会場の雰囲気が盛り上がり、ビッド(入札)が進むことも期待できる。ただしそのいっぽうで、たとえビッドが出品者の希望に達するまで伸びなくても、落札されてしまうというリスクも二律背反的に持ち合わせる。
そして1週間にわたって行われたオンライン競売では、エスティメートの上限を大きく超える7万7000ドル。つまり、現在のレートで日本円に換算すると約1224万円という、昨今の国際クラシックカー マーケットにおける924ターボの相場価格を遥かにしのぐ高価格で落札に至った。
ちなみに、同じ「The Outlaw Collection」オークションでは、元マグナス ウォーカーが所持していたという条件は同様ながら、ほぼノーマルの924ターボがエスティメート下限に満たない14万850ドル(約236万円)で落札となった事例がある。
これと比較すると、やはりマグナス ウォーカー氏のコレクションを求めるファンにとってみれば、より「アウトロー」感の強いポルシェこそが魅力的としている傾向を示した結果といえるかもしれない。
※為替レートは1ドル=159円(2026年4月22日時点)で換算
