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特注カラーに24金ロゴ? シンガーが手がけた究極のポルシェ911「ザ・ビーチランド」は2億円!?

非公開で落札されたポルシェ「911 シンガー」(C)Courtesy of RM Sotheby's

落札価格が完全非公開の秘密オークションに出品されたシンガー911

ここ数年、国際コレクターズカー市場において見かけるようになったのが「シールドオークション(Sealed-bid Auction=封かん競売)」形式です。他のオークション参加者がいくらで応札したかわからず、何度も競り合うことなく一瞬で決着がつくのが特徴です。一方で、限られた顧客だけを対象として、原則として少数の超高額商品が出品されることがほとんどです。2026年3月にRMサザビーズがオンライン開催したオークションには、ポルシェを芸術の域まで高める「シンガー・ヴィークル・デザイン」の車両であるポルシェ911が登場しました。その驚愕の詳細をレポートします。

世界中から注文が殺到した究極のポルシェ911

国際コレクターズカー市場で注目を集める「シールド」形式のオークションは、ごく一部の限られた顧客と条件のもとでおこなわれる。

2026年3月18日から25日にかけてオンライン形式で入札がおこなわれた「Sealed – The Singer Drop」は、おなじみRMサザビーズ社が開催したクローズドなオークションであり、出品車両も「シンガー・ヴィークル・デザイン」が製作したレストモッド(レストアとモディファイを掛け合わせたカスタマイズ手法)車両の2台のみとなった。

シンガー・ヴィークル・デザイン社の創業者であるロブ・ディキンソン氏は、少年時代からポルシェ「911」に憧れ、長じてミュージシャンとして成功したのちに念願の911を手に入れる。そして理想とするポルシェを創ってみたいという思いに駆られ、自身の愛車に手を加えたことからシンガーの伝説は始まった。

その後、彼の改造したポルシェの魅力に目をとめた友人たちから「同じような911を作ってほしい」という依頼が集まり、2009年に北米カリフォルニア州トーランスにて小さなレストア会社として創業することになる。

シンガー最初の作品となったのは、ポルシェ 911(964型)をベースに、ナロー時代(1960年代から70年代前半の初期型モデル)のスパルタンな雰囲気をセンス良く体現したレストモッド車両「クラシック」だ。

ベース車両である964型のスチールパネルを比較的多く残したボディに、同じく964型由来となる空冷フラット6(水平対向6気筒エンジン)を、シンガーの手で高度にチューンアップして搭載する。排気量は3.8リッターないしは4.0リッターが選択可能で、5速または6速のマニュアルトランスミッションが組み合わされた。

このレストモッドの製作サービスについて、当初は「数台程度ならば」と想定していたとのことだ。ところが、ディキンソン氏の信条である「すべてが重要(ネジの1本からエンジン内部に至るまで徹底的にこだわり抜く)」を如実に示したクオリティが話題を呼び、予想を遥かに上回る勢いで注文が殺到する。

結局、約450台が完成した段階で、粗製濫造によるマーケット価値の低下を避けるため、サービスプログラムを終了することになったとされている。

特注カラーに24金ロゴと専用カーボンシートを奢った至高の1台

先ごろ「Sealed – The Singer Drop」にシールド出品された「ザ・ビーチランド」は、カリフォルニア州トーランスのファクトリーにてクラシック・サービスのもと製作された450台のうちのひとつだ。

すべてのシンガー・クラシックにはそのコンセプトを体現した「コミッション(特注プログラム)」ネームが授けられるが、この個体は注文主でもある現オーナーのこだわりで調合された特注ボディカラー「Beachland」にちなんで命名されたという。

2023年11月に本社工房にて完成したこのビーチランド・コミッションは、4.0リッターエンジンと6速MTを組み合わせ、「オーリンズ」社製の調整式スポーツサスペンションとカーボンセラミックブレーキを装備。フルカーボンファイバー製のボディに加えて、シーム溶接の強化やカーボン製ルーフも組み合わされるなど、最終期のサービス作品ならではのアップデートも盛り込まれた1台であった。

エクステリアは、特別調合のカラーサンプルにしたがったペイントが施され、ボディ全体がペイントプロテクションフィルムで保護されている。浮き彫り加工されたポルシェのレタリングとシンガーのロゴは、いずれも24金で仕上げられている。

サイドストライプに調和するピスタチオ色に塗装された、フックス(ポルシェ伝統のホイールデザイン)スタイルのアロイホイールには、黒を基調としたニッケル製RSホイールセンターが装着され、黒のレタリングが施されたブレーキキャリパーともども美しいコントラストを成している。

一方で、インテリアの目玉となるのが、シンガー「スペシャル・ウィッシュズ」でワンオフ製作されたカーボンファイバー製バケットシートだ。現オーナーとの数カ月におよぶ緊密な協議を経てデザインされた専用シートは、座面に厚みのあるパッドが施されている。長距離ドライブを想定した追加パッドでありながら、シート本来のトラック走行向けサポート性を損なうことなく、まさに両方の長所を兼ね備えたものだ。

インフォテインメントに関しては、「Apple CarPlay」対応のポルシェ・クラシック・ナビゲーションが搭載されるうえに、アップグレードされた「オーディソン」社製アンプに加えて、「ダイナオーディオ」社製スピーカーとサブウーファーも装備されている。

特別オプションとしては、初期の911を彷彿とさせるロゴが入ったニッケルメッキのドアシルプレートなども設置。フロントフードの燃料給油口は、往年のル・マン24時間レースで活躍したポルシェ「カレラRSR」にインスパイアされた特注デザインを採用している。

締めくくりとして、このレストモッド製作に関わったシンガー社のスタッフ全員が、フード裏面にサインを残しているという徹底ぶりだ。

1.8億円超えの予想価格と明かされないオークション結果

現在でもオーダー主のもとで大切に所蔵されているビーチランド・コミッションは、シンガーのリメイクが完了して以来、約5000マイル(約8000km)を走行。現在でもシンガー社の完全保証が付帯しており、直近にも本社にて点検を受けているとのことだ。

RMサザビーズは「クラシックなスタイリングと卓越したカスタマイズ性を備えつつ、現代的なエンジニアリングとパフォーマンスを実現するために再構築されたポルシェ911であり、愛で、そして眺めるに値する1台です」とアピールしつつ、入札者が相互に提示価格を知ることができない「シールド・ビッド」の形式をとった。

オークションの通例であるエスティメート(推定落札価格)は、115万ドルから135万ドル(邦貨換算約1億8300万円〜約2億1500万円)が目安とされていた。

こうして2026年3月に秘密裏に競売がおこなわれたはずなのだが、途中経過は未公開のままだ。さらに、オークションが終了して2カ月の時を経ても、公式WEBページではハンマープライスはおろか、落札に至ったか否かも公表されていない。

これがシールドオークションの基本ルールであることは納得しつつも、「はたしていくらで販売されたのか」という好奇心については、やはり否定できない。しかし、そのミステリアスなベールに包まれているからこそ、究極のポルシェ911であるシンガーの価値はさらに高まっていくのだろう。

(※為替レートは1ドル=159円で換算)

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