1939年式ベントレーを海外からネットで購入! 若き女性オーナーの情熱がファンを圧倒する
関東を中心としたクラシックカー愛好家たちの新年初顔合わせとして1月に行われるのが、国内外のクラシックカー約50台が集結する人気イベント「ニューイヤーラリー(千葉県成田市のホテル日航スタート)」だ。1960年代を中心とした個性豊かなクルマが並ぶなか、ひと際存在感を放っていたのが1939年式のベントレー「4 1/4リッター ハイビジョン サルーン」だ。しかもオーナーは、日本の公道を走れるすべての免許を制覇したという若き女性。世界にわずか6台という戦前車を「海外からネットショッピング」で購入し、ラリーへと挑む驚き無くしては聞けなかった彼女とベントレーの自動車ライフに迫る。
フルコンプリート免許を持つ異色の若き女性オーナーは無類の旧車好き
幼少時に街で見かけたことからクラシックカーへの興味を持ち始めたという、オーナーの髙階桜子さん。
「運転も大好きなので、ロンドンバスの運転手をしていたこともあります」
聞けば、ラッピング広告のアドトラックや貸切利用など、ロンドンバスを使ってサービスを展開する会社で、社員ドライバー兼運行管理者の仕事に就いていた経験があるそうだ。
すでに学生時代には、準中型車までの普通自動車第一種運転免許のみならず、大型自動車第二種免許、大型特殊自動車第二種免許、牽引二種免許、さらには大型自動二輪車も二種まで取得していた。つまり、日本国内の公道で走れるあらゆる車両の運転が可能という「フルコンプリート免許」の保持者であり、並外れたクルマ好き・運転好きなのである。
そして2022年には、日本最大規模を誇るクラシックカーラリー「ラフェスタ ミッレミリア」のスタッフ募集を同僚から紹介されて参加。以降、ほかのイベントでも同様にスタッフを務め、クラシックカーの世界が身近なものになっていったそうだ。
今回コドライバー(助手席でナビゲートを行う役割)として参加した鈴村結子さんは、ラフェスタ ミッレミリアのスタッフとしてペアを組んだことから意気投合し、さまざまな楽しみを共有する間柄である。
同世代からの刺激を受け「ネットショッピング」で海外から戦前車を購入!
そうしたイベントでの関わりと前後して、SNSを通じてクラシックカー好きの若者たちとも繋がり、クルマ好きの若者の集まりに参加したことが、髙階さんに大きな転機を与えてくれた。
「同世代で戦前車(第二次世界大戦前に製造されたクルマ)を維持している人が何人もいることに衝撃を受けて、自分もその世界へと飛び込む決意を固めました」
中学生の頃にはすでにロールスロイスとベントレーの思想哲学に感化されていたこともあり、最初からこの2メーカーに的を絞り、約1カ月間探し続けてついに理想の個体に出会う。2025年1月のことであった。
イギリスのクラシックカー専門店で見つけたのは、ロールスロイス傘下時代のベントレー 4 1/4リッター ハイビジョン サルーン。工場のあった地名から「ダービーベントレー」と呼ばれる時代のものだ。当時はオーナーの注文によってコーチビルダー(車体製造業者)がボディを架装しており、この個体は著名なH.J.マリナーが製作した6台のうちの1台である。フロントガラス上部の窓と後部にあるサンルーフまでの特徴的なデザインから「ハイビジョン」のネーミングを持っている。
「日本にも輸送してくれるということで、ネットのやり取りで決めました! つまり海外ネットショッピングです(笑)」
とあっけらかんと話す彼女であるが、これまで頑張ってきた自分へのプレゼントという意味も込めて、この極上の1台を手に入れたのであった。
世界にわずか6台の希少車を駆りラリーで好成績をマークする女性コンビ登場
「じつは2025年のニューイヤーラリーには友人のコドライバーとして初めて参加しました。その時、来年はドライバーとしてベントレーで出場すると決めていたんです。距離の書いてないコマ図(コースの指示書)は初めて……」
と戸惑いながらも挑んだ走行を終え、無事に戻ってきた2人。
「一度ミスコースしてしまいましたが、途中で気付いてなんとか修正できて良かったです」(鈴村さん)
「迷子になっている区間にチェックポイントがなくて本当にラッキーだったね」(髙階さん)
と笑い合う姿が印象的だ。
そして結果発表。ジムカーナ的な走行技術を競うオートテストではなんと4位を獲得。タイトなコースで決して有利とはいえない戦前の大型サルーンでのこの順位は、大いに誇れるものだろう。総合順位でも見事9位という好成績を残し、美しきベントレーと若き女性ペアの挑戦は、会場のファンを大いに魅了して幕を閉じたのである。
それにしても今回の取材を終え、世の中にはなかなか現実を突きつけられないと、にわかには信じがたい不思議な世界があることをまざまざと見せつけられた。そして最近の若い女性たちの圧倒的な行動力にも、あらためて驚くばかりである。
