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初代Zカー「260Z」の極上レストア車がまさかの流札! 後期型DATSUN「S31」に対するコレクターたちの評価とは?

最低落札価格に届かず流札となった「ダットサン260Z」(C)Iconicauctioneers

車重増と関税が壁か!? 極上ダットサン「260Z」不人気の理由とは……

高騰著しいクラシックカー市場において、日産の人気車種における歴史的名車といえば、S30型フェアレディZを思い浮かべる人は多いだろう。イギリスで開催されたアイコニック・オークショネアーズのオークションに、鮮やかな深紅を纏った海外専用のダットサン「260Z」が登場し、コレクターたちの目を釘付けにした。しかし、徹底的なフルレストアが施された極上車であるにもかかわらず、結果はまさかの流札。市場の冷徹な評価と、買い手が 慎重になったオークション内容に迫る。

世界で爆発的ヒット! 見た目・性能・価格の3拍子揃った初代「Zカー伝説」

クルマ好きな方ならご存じかと思うが、初代フェアレディZ(S30型)は日本市場ではなく、北米市場をはじめとする海外市場を主軸に据えて開発が進められたスポーツカーである。海外では「フェアレディ」の名は用いられず、「ダットサン」ブランドで販売されたことから、現地では「Z(ズィー)カー」の愛称で広く親しまれてきた。

ロングノーズ&ショートデッキの流麗なスタイリングに加え、トルクフルな2.4リッターのL24型エンジンを搭載(国内仕様は発売当時2リッターのL20型エンジン)。1トンをわずかに超える軽量ボディと相まって、100マイル(約160km/h)を悠々と超える性能を発揮した。

それでいて販売価格はライバルの約半分の3000ドル前後に設定。見た目よし、性能よし、価格よしという3拍子揃ったスポーツカーを、目の肥えたエンスージアストたちが見逃すはずはなかった。

その結果、世界的に爆発的なヒットを記録。生産が開始された1969年から、生産終了となる1978年までの9年間で累計55万台以上を販売し、そのうちの85%強が輸出仕様であった。初代のトヨタ「86」&スバル「BRZ」の販売台数が10年で約20万台であったことを考えると、いかに絶大な支持を獲得していたかがうかがえる。

英国仕様はスマートな外観を維持! 日本にはないL26型エンジンを積んだ「260Z」

2026年3月20日〜21日に、英国のトレードショー「The Classic Car and Restoration Show 2026」内で開催されたオークションの舞台となったイギリス国内に目を移そう。

海を渡り、英国市場に初めて持ち込まれたのは1970年のこと。イギリスもアメリカと同じくダットサンを名乗り、エンジンも同じくL24型OHCが搭載されるなど基本コンポーネンツは北米仕様に準じるが、保安基準の違いからマーカーやランプ類は異なっている。

ただし、北米仕様は衝突安全基準の強化に伴い、モデル後半には大型の5マイルバンパーが装着されてオリジナルのスタイルがスポイルされてしまった。一方で英国仕様は最終モデルまで、華奢な細身のバンパーにオーバーライダーを組み合わせるスマートなスタイルが継続された。またエンジンについても、北米と比べると排ガス対策は緩く、2代目の日産「フェアレディZ(S130型)」にバトンを渡すまでキャブ仕様のまま販売。本来エンジンが持つ性能を引き出していたのが大きな違いである。

今回オークション会場に持ち込まれた個体は、最終型に近いダットサン 260Z(S31型)だ。「260」の数字はエンジン排気量を表しており、日本仕様には設定されなかったL26型(2.6リッター)エンジンを搭載した海外専用モデルである。国内では日産「セドリック」や日産「ローレル」に採用されていたパワーユニットだが、初期のL24からL26へと排気量アップされたのは、当然ライバルたちの高性能化への対抗策であった。

白ボディから徹底レストア! 現代の交通環境でも安心して走れるアップデート

1977年に英国領ジャージー島で登録されたこの車両は、その後、複数のオーナーを経由し、約15年前に現在のショップが取得した。当初は往年の名車であるフェラーリ「250GTO」のレプリカを製作するためのベース車として購入したが、あまりのコンディションの良さに改造を取りやめ。そのまま大切に保管され、今回車両の整理のために出品される運びとなった。

その履歴を見ると、2000年代前半にホワイトボディ(塗装をすべて剥がした状態)までストリップしたあと、徹底的なレストレーションを実施している。クロームのバンパーやドアトリムといった外装パーツを刷新し、最新の塗装技術でフォードの「ラディアントレッド」にオールペンされた。

インテリアについてはオリジナルのコンディションを維持しており、クリフォード製のカーセキュリティを装着して盗難対策も抜かりはない。

走行距離7万5000マイル(約12万700km)のエンジンは本体に手は加えられていないが、排気系は社外品に交換済みだ。フットワーク系はスポーツサスペンションキットを装着してローダウンし、前輪は4ポットキャリパーとベンチレーテッドディスクを採用することで「曲がる」「止まる」の性能向上が図られている。さらにヘッドライトはHID化されるなど、現代の交通環境でも安心して走れるように各部アップデートも施されているのだ。

なぜ流札となったのか? 後期型「S31」への評価と追加コストの壁

オークション主催者のアイコニック・オークショネアーズは、この個体に対して3万ポンド~3万5000ポンド(邦貨換算約645万円~752万5000円)のエスティメート(推定落札価格)を設定した。約50年前のクルマと思えないほど保存状態は良好で、オリジナルの雰囲気を崩すことなく旧車の弱点を補うセンスの良いモディファイが施された1台として期待されたが、入札額は最低落札価格に届くことはなく、残念ながら流札という結果に終わった。

落札に至らなかった最大の理由は、この車両が後期型のS31型ベースであることだ。じつはS31型は最終進化型としてボディ構造の見直しや剛性アップ、安全対策なども図られ、クルマとしての完成度は高まっている。その一方で、前述の理由などで車重が初期モデルと比べて100〜150kg増加し、「スポーツカーとしての軽快な魅力が薄れた」と見る愛好家も少なくなく、そうした評価が今も市場に根強く残っているのだ。

加えて、この車両は現在アイルランド登録のため、仮に英国の購入者が落札した場合には、関税や各種税金の負担が別途発生する。こうした目に見えない追加コストも、コレクターたちがビッド(入札)を躊躇した要因のひとつだった可能性は高い。

※為替レートは1ポンド=215円(2026年6月13日時点)で換算

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