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オリジナル状態でも1000万円超えならず! 英国で落札された「A80型スープラ」のシビアな現実

3万1500ポンド(邦貨換算約674万1000円)で落札されたトヨタ「A80型スープラ」(C)Iconicauctioneers

トータルで11万kmを超える走行距離が少なからず影響した?

世界的に評価が高まり、国内外のオークションで高値取引が続くバブル期の日本のフラッグシップスポーツカーたち。1993年のデビュー以来、トヨタのトップスポーツとして存在感を放っていた「A80型 スープラ」が、2026年3月に英国で開催された「The Classic Car and Restoration Show 2026」のオークション会場に姿を現した。シルバーメタリックの美しいボディをまとった名車がどのような評価を受けたのか、気になる落札結果と歴史的背景を確かめてみたい。

日本では2代目なのに海外では4代目と呼ばれる数奇な運命をたどる

A80型スープラは、海外では「スープラ Mk IV(マーク4)」と呼ばれる。これは4代目を意味するが、日本国内におけるスープラはA80型、前型のA70型、そして2026年3月に生産を終えたA90型の3世代しか存在しない。それにもかかわらず4代目と呼ばれるのは、国内で「セリカXX(ダブルエックス)」と呼ばれていたA40型とA60型が、グローバル市場ではすでにスープラを名乗っていたからである。

なぜ海外の車名はセリカXXではなく、スープラとなったのか。それは北米において「X」の重複が成人向け映画のレーティングを想起させる表現として受け取られる可能性があり、製品名としてふさわしくないと判断されたからだ。

初代(A40型)はセリカの上級モデルとして誕生し、グランツーリスモ的な味付けであった。しかし代を重ねるごとにスポーツ性能が引き上げられ、4代目のA80型では、次世代のスポーツカーにふさわしい性能を備えることが開発の目標に掲げられる。専門の開発チームが組まれ、ドイツのニュルブルクリンク・オールドコース(新車開発の聖地と呼ばれる過酷なサーキット)で走り込みが行われるなど、徹底的に基本性能を磨き上げたのは有名な話である。

TOYOTA GAZOO Racingのクルマづくりへ通じる礎を築き上げる

A80型スープラの魅力は、3リッター直列6気筒DOHCツインターボが生み出す圧倒的なパワーと豊かなトルクだけではない。そのパフォーマンスを受け止める強靭なシャシー性能と、ドライバーを不安にさせないコントロール性の高さにこそ真価がある。その思想は現在のTOYOTA GAZOO Racing(トヨタ・ガズー・レーシング)のマシンづくりへ確実に受け継がれており、現在のトヨタスポーツの原点というべき存在なのだ。

デザインも大きく進化した。直線基調のスタイリングであった先代のA70型から一転し、流麗な曲面を主体としたボディに力強く張り出したブリスターフェンダーを組み合わせることで、ダイナミックかつマッシブな造形を獲得している。全幅が広がり、3ナンバー専用ボディとなったのも当時の大きなトピックだ。

デビュー当初のグレードは、ターボが「RZ」と「GZ」、自然吸気は「SZ」の計3種類で、GZとSZにはルーフパネルが外れるエアロトップ仕様が用意された。翌年にはターボ仕様の廉価グレードである「RZ-S」と、自然吸気モデルのスポーツグレード「SZ-R」を追加している。さらに17インチホイールと大容量ブレーキ(フロント4ポット、リア2ポットキャリパー)をオプション設定するなど、バリエーションの充実と走行性能の強化を図った。その後も積極的に改良を重ねながら熟成を続けたが、排ガス基準の強化によって2002年8月をもって惜しまれつつ生産終了となっている。

英国に渡ってからの走行距離は23年間でわずか6800km強に留まる

今回、アイコニック・オークショネアーズの競売にかけられたのは、初のマイナーチェンジ後となる1995年式のRZだ。2003年11月に日本から英国へ輸出された個体であり、トータルの走行距離は10万3937km。新車時のオプションである17インチアルミホイールと大径ブレーキシステムがしっかりと装着されている。

カスタマイズされた形跡はなく、サスペンションや排気系を含めて、生産から31年が経過した今も工場出荷時の雰囲気を色濃く残す。社外のセキュリティとDVD内蔵のオーディオシステムが唯一の変更点だ。

英国への上陸後は、2005年から2019年までの14年間、ロンドンを拠点とする建築家が所有した。2021年5月にはアイコニック・オークショネアーズの管理下に置かれ、バッテリーやリアショック、オルタネーター(発電機)などを新品へ交換。さらにECU(エンジンコントロールユニット)やホイール、タイヤをリフレッシュし、ボディコーティングも施されている。

オークションに出品された時点での走行距離は6万8850マイル(約11万800km)だ。英国に渡ってから23年間で積み重ねたマイレージはわずか4247マイル(約6863km)であり、極めて使用頻度が少ないのも大きな魅力である。

オリジナル度が高い極上車の入札が約674万円で止まった理由を探る

手荒に扱われることなく、大切に保管されてきたことがうかがい知れるこの1台には、オリジナルの英国オーナーズマニュアルと、当時の雑誌のコピーも付属する。車検は2026年6月30日まで残っており、登録を済ませればすぐに走り出せる極上のコンディションに仕上がっていた。

オリジナル度が高くメンテナンス履歴もしっかりしている個体だったが、オークションハウスは3万〜3万5000ポンド(邦貨換算約642万〜749万円)と、現在の相場よりもやや低めのエスティメート(推定落札価格)を設定した。

そして迎えたオークション当日の競売では、エスティメートの下限をわずかに上回る3万1500ポンド(邦貨換算約674万1000円)まで入札が進んだところでハンマープライスとなった。

程度の良い低走行車であれば1000万円を軽く超える価格で取引されることも珍しくないだけに、市場の期待値からするとやや物足りない結果と言える。今回低調に終わった理由は、やはりトータルで11万kmを超える走行距離が少なからず影響したのだろう。相場が上昇傾向にあるヤングタイマー(1980〜90年代の名車)だが、愛好家たちの目利きはやはりシビアだ。あるいは、日本や北米と比べて、英国ではスープラの人気がやや穏やかであることも影響したのかもしれない。

とはいえ、最新の電子制御にはない純粋なメカニズムと、直列6気筒ツインターボの咆哮は、現代のクルマでは決して味わえない色褪せない魅力を持っている。日本が世界に誇るフラッグシップスポーツのDNAは、国境を越えて海を渡り、これからも大人のクルマ好きたちの胸を熱く焦がし続けてくれるのだ。

※為替レートは1ポンド=約214円(2026年6月29日時点)で換算

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