サイトアイコン AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

幻の「イオタ」を作り上げたボブ・ウォレスがV12を手組み! P400SをSV化した極上ミウラの立ち位置

ランボルギーニ ミウラP400S(C)Courtesy of RM Sotheby's

幻の「イオタ」を手掛けた男がエンジンを仕上げた極上ミウラ

幻のレーシングカー「イオタ」を手掛けた伝説のテストドライバー、ボブ・ウォレス氏自らがV12エンジンを組み直した1969年式のランボルギーニ「ミウラP400S」がオークションに登場した。後期型SV仕様へのアップデートやエアコン追加など、実用性とパフォーマンスを極限まで高めた極上個体に仕上がった。約4億円の予想価格が設定されたP400SのSV化マシンが辿ったヒストリーと、現在の相場からその立ち位置を読み解いてみたい。 

独自の進化を遂げたP400Sに後期型SVのテクノロジーを注入

1965年、イタリア・トリノショーのランボルギーニブースで4LのV型12気筒エンジンを搭載したシャシー「TP400」が公開された。手掛けたのはジャンパオロ・ダラーラだった。ショーでは、顧客からの熱狂的な要望を受けわずか1年(1967年)でデリバリーにこぎつけた。

カロッツェリア・ベルトーネ(マルチェロ・ガンディーニ)が手がけた流麗なスタイリングを纏い、最高出力370馬力を発揮する4LのV型12気筒エンジンをキャビン後方へ横置きに搭載する。最高速度は285km/hを誇り、まさにスーパーカーの原点として君臨した名車だ。その後も改良を加えながら「P400(1967年〜1968年/生産台数265台)」「P400S(1969年〜1971年/生産台数338台)」「P400SV(1971年〜1973年/150台)」へと独自の進化を続けた歴史遺産的スーパーカーである。

1969年1月22日にサンタガタ・ボロネーゼの工場で完成したこの個体は、初期生産型のミウラP400Sとして生を受けた。イタリア本国でデリバリーされたのち、1970年代半ばには太陽の降り注ぐアメリカ・南カリフォルニアへと渡っている。数人のエンスージアストの手に渡ったのち、1995年にスティーブン・コレッティ氏が取得すると、4年にも及ぶ徹底的なレストアを受けることになった。

ただ美しく直すだけではなく、生産期間中に進化したミウラの技術を盛り込むことがこのレストアのテーマであった。ボディワークとシャシーをベアメタル(地金)まで剥離し、フロントシャシーの補強やソリッドフロントショックタワーブレースの追加など、後期型であるSVのエンジニアリングが惜しみなく組み込まれた。さらに、ラジエーターとフロントブレーキローターへより多くの走行風を導くためのフレーム修正まで行われている。

足回りもKONI(コニ)製のショックでリビルドされ、ブレーキはSV仕様のクロスドリルドローター(放熱穴付きブレーキローター)やカーボン・ケブラー製パッドへと強化されるなど、本気で走らせるためのモディファイが施されている。

イオタの生みの親であるボブ・ウォレスがV12エンジンをチューニング

この個体を特別な存在にしている最大の理由は、心臓部であるV12エンジンのリビルドを、元ランボルギーニのチーフテストドライバーであるボブ・ウォレス氏が自ら担当したことにある。幻のワンオフレーシングカー「イオタ」をプライベートで製作したことでも知られる彼は、JAE(高性能エンジン用のアフターパーツを手がけるアメリカの名門エンジニアリング会社)製のカスタムピストンとピストンリングを使用し、0.5mmのオーバーボア化を実施した。

さらにマニアを唸らせるのが、スプリットサンプ(分割式オイル潤滑)システムへのアップデートである。初期のミウラP400Sはエンジンとトランスミッションの潤滑オイルを共有していたため、ミッションのギア欠けによる金属粉がエンジンにダメージを与えるリスクがあった。これを分割式に変更することで、弱点を完全に克服しているのだ。

これにリミテッド・スリップ・ディファレンシャル(LSD)を追加し、ANSA製スポーツエキゾーストを組み合わせたこのV12エンジンは、まさに伝説の男が魂を込めた至高のパワーユニットと言える。

エアコン追加と徹底メンテナンスが施されるミウラP400SVアップデート仕様だったが…

ボディカラーはイエローの「ジアッロ・フライ」へと再塗装され、シルバーのサイドシルやホイールと相まって、極めて華やかなオーラを放っている。レストア後、オーナーたちはペブルビーチ・コンクール・デレガンスへのドライブなど、実際にステアリングを握ってこの車を楽しんできた。直近のオーナーは、暑い時期でも快適にドライブを楽しむためにエアコンを追加している。実はP400Sの生産途中からエアコンがオプション設定されるようになったが、この個体はそれ以前に生産されたため、後付けで実用性を高めた形だ。

最近では、キャブレターのチューンアップやオリジナル燃料タンクの修復、さらにはエンジンを降ろしての整備とトランスミッションのリビルドまで行われている。クラシックラリーに参加し、完璧に走行をこなすほどコンディションは抜群である。

RMサザビーズでは、220万ドル〜260万ドル(邦貨換算約3億5640万〜4億2120万円)というエスティメート(推定落札価格)が掲げられた。競売ではエスティメートに届かず流札となった。2026年1月23日〜30日にブロードアローオークションズが開催したGLOBAL ICONS:EUROPE ONLINEに出品されたミウラP400Sが171万6000ユーロ(当時のレートで約3億1918万円)で落札されている。また、RMサザビーズが主催した2月27日に開催されたMIAMIオークションでは187万ドル(当時のレートで約3億400万円)で落札されている。この結果を踏まえても3億円前後が現在の相場と推測できる。

本個体は初期のP400Sでありながら後期SV仕様のチューニングが施され、さらにイオタの生みの親であるボブ・ウォレス氏の手による極上リビルドという比類なき付加価値を備えている。そのため、約4億円という強気のエスティメートも決して的外れな評価ではなかったと言える。

為替レートは1ドル=162円(2026年7月15日時点)で換算

モバイルバージョンを終了