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わずか18台という歴史的価値と3オーナーに止まった由緒正しい経歴の欧州仕様正規フェラーリ「365GTS/4 デイトナ・スパイダー」の圧倒的価値

価格非公開で落札されたフェラーリ 365 GTS/4 デイトナ・スパイダー(C)Courtesy of RM Sotheby's

本家の純正か否かで価値が激変するフェラーリ「デイトナ・スパイダー」の希少性

国際コレクターズカー市場において、「シールド(Sealed)」と銘打ったオークションを見かける機会が増えている。多数のバイヤーを対象に対面やオンラインのパブリックな場で競売を行う通常のオークションとは異なる形式で、ごく一部の限られた顧客と条件のもとに行うものであり、原則として台数も少ない高額商品が出品される。2026年7月16日が入札締め切り日と設定されていた、オンラインのみで行われた「Sealed July」もそのひとつだ。おなじみRMサザビーズ社が開催したこのクローズドなオークションでは、6台のクルマが落札に至った。そのなかでもひときわ異彩を放つフェラーリ「365 GTS/4 デイトナ・スパイダー」の歴史と落札の背景に迫ってみた。

本家スカリエッティで欧州向けに正規生産された超レアな欧州仕様の一台

前任モデルにあたる「275 GTS/4 NARTスパイダー(NART=North American Racing Team / ノース・アメリカン・レーシング・チームはルイジ・キネッティが率い、彼の進言により10台のみ作った幻のコレクターズアイテム)と同じく、当初は米国マーケット向けとして企画された。それが1969年のフランクフルト・ショーでデビューしたフェラーリ「365 GTS/4 デイトナ・スパイダー」である。限定台数で生産されたV型12気筒エンジンを搭載したオープンタイプのグラントゥリズモだ。マラネッロの長く輝かしい伝統を受け継ぐモデルとなっている。

当時から数多く製作されていた、365 GTB/4ベルリネッタのルーフを切り落とした改造車などではない。フェラーリの正規モデルとして「スカリエッティ」社が製作した本物のデイトナ・スパイダーだ。その大部分は北米マーケットに割り当てられた。ショーでの評価も高く、生産台数はNARTスパイダーの10台よりもはるかに多い121台に及んでいる。しかし、ヨーロッパのフェラーリ愛好家向けに製作されたのは、わずか18台のみと伝えられている。

今回RMサザビーズ「Sealed July 2026」に出品された365 GTS/4デイトナ・スパイダーのシャシーNo.15911である。これはフェラーリ本社が欧州スペックに基づいて製造したわずか18台のうち、16台目にあたる個体となる。

ボディカラーはシルバーグレーの「グリージョ・アルジェント(106-E-1)」を採用する。英コノリー社製レザーハイドで仕立てたインテリアは「ネロ(VM 8500)」だ。もとより左ハンドル仕様としてオーダーされており、エアコンとパワーウィンドウもオプション装備されていた。

半世紀以上の車齢ながら歴代オーナー3人が拘ったオリジナルコンディション

1972年5月にモデナ市内のスカリエッティ工場で完成し、その1カ月後にラヴェンナで登録(RA 187453)された。のちに工場からほど近いボローニャの正規代理店「モーターS.A.S.」社を介して、新車として販売されている。最初のオーナーとなったのは、ラヴェンナ在住のアヴォカート(弁護士)であるロドヴィコ・コンスタンティーノ・ジャルディーニだ。

フェラーリ史研究の大家、マルセル・マッシーニ氏によると、このデイトナ・スパイダーは興味深い経歴を持っている。ジャルディーニ弁護士が所有していた期間中、1975年に公開された映画「スイス・コンスピラシー(邦題スイス・コネクション)」にも登場した実績があるのだ。

1976年5月、ジャルディーニ弁護士はこのシャシーNo.15911を2代目オーナーへ売却した。当時わずか35歳だったエミリア・ロマーニャ州レッジョ・エミリア在住のエリオ・パテルリーニだ。パテルリーニ氏はこの個体を地元で再登録(RE 274524)し、その後30年以上にわたり愛用し続けることになる。

彼の所有期間中にも数回公の場に姿を現している。なかでも注目すべき登場は、イタリアを代表するクラシックカー専門誌「ルオーテクラシケ(Ruoteclassicheは、イタリア語でクラシックな車輪のこと)」第226号(2007年10月)に掲載された「マセラティ ギブリ5000SSスパイダー」との比較テストだった。

フェラーリ・クラシケ認証が証明する圧倒的な歴史的価値の裏付け

パテルリーニ氏は33年にわたって愛用していたが、2009年5月にジョヴァンニ・ヴェントゥレッリ氏へ譲渡した。2016年になると、モデナ市内の「エンツォ・フェラーリ博物館」に展示されている。その直後、シートはオリジナルと同じ「ネロ(黒)」のレザーで張り替えられた。ただし、ダッシュボードとソフトトップについてはオリジナルの内装が現在も残されている。

2024年までイタリアのヴェントゥレッリ氏の所有下にあったこのデイトナ・スパイダーである。40年以上にわたりわずか2人のオーナーによって大切に保管されてきたおかげか、極めて良好な保存状態を保っている。前述の「ルオーテクラシケ」誌によると、パテルリーニ氏は愛車を完全なオリジナル状態に保つように目指していたという。この2代目オーナーの所有期間中にも定期的な機械的メンテナンスが確実に施され、現在も良好な走行状態を維持している。

3代目オーナーたるヴェントゥレッリ氏の所有期間中にも、確実な整備記録が残されている。フェラーリ専門の整備ファクトリーとして世界的な名声を得ている「アウトオフィチーナ・ボニーニ・カルロ」から発行されたサービス請求書だ。直近は2024年11月に実施されたもので、総額は6230ユーロだった。

さらに特筆すべきは、2009年にこの車両が「フェラーリ・クラシケ」の認定を受けたことである。このときの精査により、オリジナルのシャシーとエンジン、ボディワークが維持されていることが証明された。純正の交換用ギアボックスが搭載されていることも確認されている。

RMサザビーズ北米本社ではオークション出品にあたり、次のようにコメントしている。

「この個体は間違いなく同モデルの中でも最高峰の一つであり、世界中のどのフェラーリ・コレクションにおいても誇り高く輝き続けることでしょう」

オークションは入札者が相互に提示価格を知ることができない「シールド・ビッド(封かん競売)」の形式をとった。この希少な個体に設定されたエスティメート(推定落札価格)は、230万ユーロから280万ユーロ(邦貨換算約4億1400万円から5億400万円)とされていた。こうして今年7月にはオンラインで秘密裏に競売が行われ、無事に落札されたことまでは判明している。ただし、公式WEBページでハンマープライスは公表されていない。

365 GTB/4デイトナをベースとした改造スパイダーならば、工作精度や仕上がりによって差異は発生する。しかし、多くの場合ベルリネッタとほぼ同じ価格帯で取り引きされているようだ。

他方で、同じRMサザビーズ欧州本社が開催した「MONACO 2024」オークションに出品されたフェラーリ365 GTS/4 デイトナ・スパイダーは、343万6350ユーロ(当時の為替レートで約5億8200万円に相当)という目が醒めるような落札価格となった。スカリエッティで正規に架装されたホンモノのデイトナ・スパイダーには、然るべきプライスが認定されるのが通例となっている。

昨今の市況を考慮すれば、今回のハンマープライスもそれに近い価格であったとみて間違いないものと思われる。

為替レートは1ユーロ=180円(2026年8月3日時点)で換算

■ RMサザビーズ Sealed July 2026 フェラーリ「365 GTS/4 デイトナ・スパイダー」の注目ポイント

◇欧州仕様の正規生産車:121台のうちわずか18台のみ製造された希少な欧州スペック
(北米市場がメインだった正規スパイダーの中で、欧州向けは18台しか存在しないため市場価値が跳ね上がっている)

◇フェラーリ・クラシケ認定:2009年にオリジナルコンディションを立証済み
(シャシー、エンジン、ボディワークがオリジナルであることを公式が証明しており、価値を確実なものにしている)

◇映画出演歴と3人の歴代オーナー:半世紀でわずか3人しか所有していない奇跡の個体
(1975年公開の映画出演歴を持ち、2代目オーナーが33年間保管していたため極めて良好な保存状態が維持されている)

■スペック

RMサザビーズ Sealed July 2026 出品車両
車種:フェラーリ 365 GTS/4 デイトナ・スパイダー by スカリエッティ(1972年式)
シャシーナンバー:15911
エンジン:4.4L V型12気筒
生産台数:121台(うち欧州仕様18台)
認証:フェラーリ・クラシケ取得済み(2009年)
落札価格:非公表(シールドビッド形式)

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