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14億円オーバー! 廃品置き場にあったメルセデス・ベンツ「300SL」は貴重なアルミボディでほぼオリジナル、しかもルイジ・キネッティの愛車でした

935万5000ドル(邦貨換算約14億3393万円)で落札されたメルセデス・ベンツ「300SL」(C)Courtesy of RM Sotheby's

レストアは必須だが希少なアルミボディでオリジナル度の高い1台

2024年10月26日にRMサザビーズが米国ロサンゼルスで開催したオークションにおいてメルセデス・ベンツ「300SL」が出品されました。メルセデス・ベンツの資料によれば、今回の出品車は1956年に完成した26番目のアロイボディ仕様の300SLでした。

同オークションの落札総額は約45億円

オークショネアのRMサザビーズが、2024年10月末にロサンゼルスで開催した「ジャンクヤード:ルディ・クライン・コレクション」は、まさに同社の歴史に残るオークションとなったようだ。

長い間、噂や憶測の域を超えなかったこの伝説的なコレクションが一堂に姿を揃え、ジャンクとはいえパーツや車体が次々に競り落とされていく様子は、まさに圧巻ともいえるもの。ちなみに3日間にわたって行われたこのオークションでの落札率は100%。落札総額は2961万6400ドル(邦貨換算約45億3960万円)という数字に達した。これがオークション前にRMサザビーズが提示したエスティメート(予想落札価格)の約2倍に相当する額であることを知れば、驚きはさらに高まる。

「このオークションを初めて発表した時、本当に特別な何かがあると感じていました」

とコメントしたのは、RMサザビーズのスペシャリスト、ケイリー・オール氏だ。

「そして、ついにその全貌が明らかになると、世界中の人々から即座に圧倒的な反応が寄せられました。RMサザビーズだけが、このような大規模なイベントを実現し、そして自動車の隠れた歴史的遺産を明るみに出し、それを本当に評価する人々のコレクションやガレージに届けることができるのです」

彼の言葉は熱く、そして雄弁に続いた。

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29台しかないアルミボディだった

その「ジャンクヤード:ルディ・クライン・コレクション」からは、すでにジャンクと化した何台かの歴史的遺産をAMWにて紹介してきたが、はたして今回のオークションにおいて最高値で取り引きされたモデルは何だったのだろうか。それは1956年式のメルセデス・ベンツ「300SL」。

落札価格はじつに935万5000ドル(邦貨換算約14億3393万円)で、その理由は、トータルでも1371台しか生産されていない300SLの中でも、さらに29台が存在するのみの、アルミボディを持つモデルであることだ。

メルセデス・ベンツの資料によれば、今回の出品車は1956年に完成した26番目のアロイボディ仕様の300SLであるという。ちなみに同様のアロイ300SLは、2022年にもRMサザビーズのオークションに姿を現しているが(こちらは内外装とも素晴らしいコンディションだった)、その時の落札価格は501万ドル(同7億6793万円)と今回の半額程度だ。クラシックカー市場での300SLの人気はまだまだ上昇基調と判断できそうだ。

ボディカラーは黒からシルバーへ再塗装

シャシーナンバー「198.043.5500872」が与えられたこの300SLは、出荷時にはブラックのボディカラーに、レッドレザーの内装という、非常に美しいコントラストを持つモデルだった。

それを証明するデータカードには、アルミボディをはじめ、高性能なNSLエンジン、スポーツサスペンション、フロントガラス洗浄システム、3.42のファイナル・ギアレシオなども記録されている。ファースト・オーナーはレーシング・ドライバーとしてル・マン24時間での優勝経験もあり、のちにフェラーリなどの北米レーシングチーム、「N.A.R.T.」をオーガナイズする、かのルイジ・キネッティ。

ルディ・クラインは、1976年のデイトナ500にエントリーした際にキネッティに出会い、レース会場で3000ドルの前金を支払い、この300SLを購入したことがキネッティの書類には残されている。しかし、1977年3月初旬までキネッティの手元にあり、その間に、ボディカラーはシルバーに直されていた。その後、キネッティから受け取ったこの車両は、廃品置き場の中央の建物の中にしまわれ、現在に至る。

現在でも走行が可能なアロイボディの300SL。そのオドメーターには7万3387kmの数字が刻まれている。ボディナンバーの26を始め、エンジン、ギアボックス、リアアクスル、ステアリングボックス、フロントスピンドルはすべてオリジナルのまま。レースで酷使されアクシデントに遭うことも多かった、レースから市販車への道を歩んだモデルの中で、この個体ほど良好な環境で保存されている車両はきわめて稀といえるだろう。驚愕の落札価格は、それをダイレクトに物語っているのである。

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