アメリカ仕様らしいスタイリングが特徴
2025年1月24日〜25日にRMサザビーズがアメリカ・アリゾナで開催したオークションにおいて、ディーノ「246GT」が出品されました。元色はブルー・ディーノ・メタリザート。現在はレッドに全塗装され、オリジナルの保証カード、サービス請求書、レザーウォレット入りのオーナーズブックを含む履歴ファイルが付属。いったいいくらで落札されたのでしょうか。
出品車は最終型のタイプE
ディーノ246GTが登場した1969年には、すでにその市販車部門の経営権をフィアットに譲り渡していたフェラーリ。それはフェラーリにとって、206GTに続くV型6気筒エンジンをミッドに搭載するプロダクションモデルである。今回RMサザビーズのアリゾナ・オークションに出品された1972年式のモデルは、その仕様が細かく分類されるディーノ246GTの中でも、1969年から1971年の半ばまで生産された「ティーポL」。それに続いて1971年中と短期間のうちに「ティーポM」が、そして1972年になると、ここで紹介する「ティーポE」が誕生する。
ティーポEで最大の話題は、アメリカ市場で圧倒的な人気を誇ったタルガトップ形式の「246GTS」が1972年から追加設定されたことだが、ベースとなったクーペモデルにも、ティーポMからさまざまな改良が加えられている。
参考までにここでオークションの舞台を飾ったのは、1973年式のアメリカ仕様。ワイパーがそれまでの中央停止型ではなく並行作動型であることから考えると、同じタイプEの中でもレートタイプと推察できる。
アメリカにはおもに安全対策として独自のレギュレーションが存在したため、このディーノ246GTもそれに沿ったディテールを有している。エクステリアでは角型の大きなフロントサイドマーカーが備わるのを始め、フロントのターンシグナルも垂直にそれがフィットされているのが特徴。さらに4個ともに赤色となるテールランプやリアフェンダー上のマーカーもアメリカ仕様独特のものだ。
内装にもアメリカ独自の対策がされている
インテリアではメーターの表示単位がキロメートル/キログラム/摂氏からマイル/ポンド/華氏へと変更。マニファクチャラーズ・プレートがセンターピラーに備えられるのも、アメリカ独自のレギュレーションによる対応策で、ここにはシャシーナンバーのほかに、車両総重量や生産年月日までが表示されている。さらにミッドのエンジンも、排出ガス規制に対応させるために、キャブレターを、より大型なウェーバー製の40DCNF19型に変更するとともに、エグゾーストポートにはエアインジェクション・ポンプを追加して二次空気を供給する。ちなみにこのエアインジェクション・ポンプは、エンジンスピードが3500rpm以上になると、クラッチが切断されフリーとなる仕組みだった。
元色はブルーにベージュのインテリアだった
フェラーリに残されている記録によると、このディーノ246GTは、1973年1月17日にファクトリーをラインオフしている。新車時の仕様は、ボディカラーがブルー・ディーノ・メタリザート(カラーコード106-A-72)、インテリアはベージュ(同VM3234)のコノリーレザーで、それに与えられたシャシーナンバーは「04566」だった。
この04566にはエアコン、パワーウインドウ、スタンダードなクロモドラ製ホイールなどが装着され、アメリカのネバダ州リノにあるモダン・クラッシック・モータースから、アメリカのフェラーリの輸入業者としても知られる、ウィリアム・F・ハラに納車された。
彼はこの04566に特に魅了されたようで、自身のコレクションとして1980年代初頭までそれを所有。その後リノを拠点とする別のフェラーリスタの手に渡るが、彼もまたこのディーノ246GTに多くの愛情を注いでいる。
結果2014年8月にカリフォルニアで開催されたコンコルソ・イタリアーノではディーノ賞も受賞している。ちなみにブルーのボディカラーが現在のレッドに再塗装されたのは1990年代の話であるということだ。さらにこのモデルには、オリジナルの保証カード、サービス請求書、レザーウォレット入りのオーナーズブックを含む履歴ファイルが付属している。
今回のアリゾナ・オークションでは、残念ながら落札には至らなかったこのディーノ246GTだが、RMサザビーズによれば後日プライベート・セールにて新たなオーナーが決まったとのこと。売却価格は、おそらく37万5000〜42万5000ドル(邦貨換算約5850〜6630万円)という、事前に発表されていた予想落札価格のレンジに収まったのではないだろうか。
