スタッドレスタイヤとe-4ORCEで雪道も無双だった
日産「セレナ」は2024年1月〜12月の国内販売で8万899台を販売し、ミニバン販売台数No.1に輝きました。このNo.1に輝いた要因のひとつが、2024年10月に「e-POWER」車「にe-4ORCE」と呼ばれる電子制御の4WDを追加したことです。今回はスタッドレスタイヤを装着したセレナ e-POWER 4WD車で約1000kmのロングドライブを実施。高速道路から雪道まで走行したことで見えた、良い点と改善点を紹介します。
2024年10月にe-POWER車に4WDを設定
2024年1月〜12月の国内販売で8万899台を販売し、ミニバン販売台数No.1に輝いた日産「セレナ」。2022年11月の販売開始から10万台の販売を達成するなど好調だ。
セレナの販売好調の要因はさまざまあるが、そのひとつとして、2024年10月にe-POWER車に電動駆動4輪制御技術「e-4ORCE」を搭載した4WD車を追加したことが大きいだろう。今回はこの「セレナ e-POWER e-4ORCE」で、雪道を含む約1000kmのロングインプレションを行った。
6代目となる現行型日産セレナは2022年11月にフルモデルチェンジを実施し、同年12月にガソリン2WD車を販売開始。そして2023年4月にe-POWER車を販売開始した。e-POWER車は販売開始のタイミングで受注台数が2万台を突破しており、現行型セレナの主力グレードだ。
ライバル車のトヨタ「ノア／ヴォクシー」、ホンダ「ステップワゴン」は全車3ナンバーサイズとなったが、セレナは従来同様、グレードによって5ナンバーと3ナンバーの2種類のボディを用意している。
ボディサイズはXとXVグレードは全長4690mm×全幅1695mm×全高1870mmの5ナンバーサイズ。そしてハイウェイスターVとLUXION（ルキシオン）は全長4765mm×全幅1715mm×全高1870mm（ルキシオンは1885mm）の3ナンバーサイズとなる。乗車定員は8人乗りを中心にルキシオンだけが7人乗りだ。
セレナに搭載されているパワートレインは、最高出力150ps／最大トルク200Nmを発生する2L直列4気筒DOHCエンジン＋CVTの組み合わせと、最高出力98ps／最大トルク123Nmを発生する1.4L直列3気筒DOHCエンジンで発電し、最高出力163ps／最大トルク315Nmを発生するモーターで走行する新開発のe-POWERの2種類。燃費性能はWLTCモードで2Lガソリン車は11.6～13.4km/L。e-POWER車は18.4～20.6km/Lを実現している。
運転支援システムは、全グレードに「プロパイロット」を標準装備。さらに最上級グレードのe-POWERルキシオンには、高速道路などでハンズフリーが可能な「プロパイロット2.0」を標準装備している。また前方障害物を回避する際、ドライバーのステアリング操作を支援する「衝突回避ステアリングアシスト」や、一度駐車した場所を駐車枠として記録することができる、メモリー機能付き「プロパイロットパーキング」を日産車として初搭載した。さらにe-POWERルキシオンには、リモコン操作でクルマの出し入れが可能となる「プロパイロットリモートパーキング」を搭載し、狭い場所での乗り降りなどがスムーズに行えるのが特徴だ。
デビュー当初、駆動方式は2WD（FF）中心に2Lガソリン車のみ4WDを設定していたが、2024年10月の一部改良で、e-POWER車に電動駆動4輪制御技術「e-4ORCE」を搭載した4WD車を追加した。
e-POWER 4WD車はフロントに最高出力163ps／最大トルク315Nmを発生するモーターを搭載。さらにリアにも最高出力82ps／最大トルク195Nmを発生するモーターを採用。e-4ORCEが、前後2基のモーターと左右のブレーキを統合制御することで4輪の駆動力を最適化し、雪道や山道を安心して走行できるだけでなく、市街地走行においてもより酔いにくく快適な乗り心地を提供する。e-POWER 4WD車の燃費性能はWLTCモードで16.1〜17.0km/Lとなっている。
今回試乗したのは、防水シート仕様のセレナ e-POWER ハイウェイスターV 4WD車で、車両本体価格は413万2700円（消費税込）。これに100V AC電源が5万5000円（消費税込）、8万2500円（消費税込）の利休のボディカラー。そして55万1100円（消費税込）のナビゲーションやプロパイロットがセットのオプションを装着しており、総額482万1300円（消費税込）。諸費用を入れると500万円オーバーという仕様だ。
4WD車のほうが2WD車よりカタログ燃費に近い数字が出た
さらに今回は雪道の走行を行うということで、ブリヂストンのブリザックVRX3というスタッドレスタイヤを装着しロングドライブを行った。コースは高速道路を中心に東京から滋賀県を往復するコースで、復路は関ヶ原付近で一般道において雪上走行を行った。
スタッドレスタイヤを装着した高速走行では、運転支援機能のプロパイロットを積極的に使用した。夏用のラジアルタイヤに比べて柔らかいスタッドレスタイヤの影響でプロパイロット使用時の直進安定性が低下する。これは仕方ないことなのだが、プロパイロットのようなアダプティブクルーズコントロールはタイヤの特性に影響されるので、交換する際には気をつけたい。
同じe-POWER ハイウェイスターVで車両重量を比べると、2WD車が1810kgに対して、今回試乗した4WD車は1930kgとリアにモーターを搭載したことで120kg重くなっている。この車両重量をカバーするために、リアのサスペンションを硬めのセッティングにしているせいか、突き上げ感が強い。3列目シートにも座って移動したが、突き上げ感が大きかった。
重くなった車両重量をフォローするためリアサスペンションのセッティング変更やe-POWERの採用で旋回性能が向上したことで、2WD車では感じなかったキャリーオーバーのシャシーの物足りなさが明らかになったと言える。
しかし、雪道での走行安定性は抜群で、滑ったりヒヤッとしたりするシーンは皆無。雪道のような滑りやすい道だけでなく、ワインディングのようなカーブの多い道などでもe-4ORCEのアドバンテージは大きい。個人的には最近は突然大雨が降ることもあるので、e-4ORCEを搭載した4WDのほうが安心度は高まってオススメだ。
今回、約1000km走行して燃費は13.9km/L。カタログ燃費が16.1km/Lなので86.3％の達成率だ。以前同じルートを夏タイヤのe-POWER ハイウェイスターV 2WD車で走行した際の燃費が、15.8km/L。2WD車のカタログ燃費が19.3km/Lなので81.8％だったので、4WD車のほうが達成率は高かった。
新車価格は4WD車のほうが当然高いが、リセールバリューは2WD車より4WD車のほうがミニバンは高くなる傾向があるので、リセールバリューと走行安定性の高さでセレナe-POWERは4WD車をオススメしたい。