耐久性と走行性を両立させたエッセの魅力とは?
2024年シーズンの「東北660選手権」でチャンピオンの座をつかんだ中田一平選手。その裏には、ダイハツ「エッセ」を駆りながら培った技術と、車両の隅々までこだわったセッティングがありました。勝利を支えたエッセの耐久性とセッティング、そしてコストを抑えた車両作りについて詳しく紹介します。
最終戦で繰り広げられた中田一平選手の大逆転劇
もうすぐ15年目のシーズンが開幕する「東北660選手権」。改造範囲やドライバーの経験に応じて5つのクラスに分けられるが、最も台数が多く予選を通過するのも一苦労なのが3クラスである。2024年にその最大の激戦区を制したのは、シンプルな外観の黒いダイハツ「エッセ」を駆る中田一平選手である。まずは2024年シーズンの戦いを振り返ってみよう。
開幕戦では予選でポールポジションを獲得したが、決勝では最大のライバルである竹中康平選手に敗れ、準優勝に終わった。第2戦では表彰台に立つものの3位という結果に終わり、本人にとっては不本意な結果となった。しかし、ターニングポイントとなったのは第3戦である。初めてのポール・トゥ・ウィンを果たし、さらに決勝ではファステストラップも記録した。この時点でチャンピオン争いはほぼ中田選手と竹中選手に絞られ、最終戦で決着がつくドラマチックな展開を迎えた。
誰もが注目した最終戦では、19歳の若手ドライバー、高岡威選手がデビュー戦でポールポジションを獲得した。中田選手は2番手、竹中選手は3番手というトップを狙う位置に付けていた。決勝では、中田選手が経験の豊富さを見せつけ、大逆転を成功させた。さらに竹中が6番手に沈んだことで、シリーズチャンピオンの座は中田選手の手に渡った。
安価で高耐久を実現した王者の作り込み
王座に輝いたエッセを詳しく紹介しよう。エンジンは車両規則によりノーマルでコストをかけないことが特徴である。吸気系のエアクリーナーは汎用品と市販の塩ビパイプを組み合わせ、トータルで約1500円という非常に低価格で済ませたという。しかし、安さだけでなく遮熱板でエンジンの熱を隔離するなど、限られたパワーを無駄なく使うための対策が施されている。
冷却系に関しては、ラジエーター本体は純正のままで、80℃で開弁するローテンプサーモスタットを使用。これもインターネットのオークションで約700円という非常に安価で入手したという。
耐久性にも強くこだわっており、元々耐久レース用として製作された車両であるため、長時間トラブルなく走りきることが求められる。そのため、ドライブシャフトはエッセよりも太いダイハツ「コペン」の純正品を使用し、ブレーキパッドもサイズの大きいコペン用を採用している。
コイルは信頼性を重視して純正のままであり、ナックルやハブなど、過去にトラブルが発生したパーツは予備を持参している。万が一、練習走行や予選で問題が発生しても、決勝までに修復できるため、安心してレースに臨むことができる。
サスペンションの巧妙なセッティングでレースを制す
走行面では、サスペンションのセッティングにこだわりがある。上位のドライバーがセッティングをあまり変更しないなか、中田選手は毎回のようにセッティングを調整している。キャンバー、キャスター、トーといった各部を細かく調整しており、その調整内容が毎回のレースで成果を上げている。
土壇場でのリセッティングは良い結果を生まないことが多い。しかし、中田には当てはまらないようだ。なお、キャンバーはライバルたちより大きめで、タイヤに荷重をかけやすいよう空気圧は低めに設定している。これはコーナーで早めにクルマの向きを変え、縦のグリップを早く使う作戦だという。
2025年はスプリントレースを一旦休み、同じエッセで東北660耐久レースへの参戦を予定している。速さ、安定感、耐久性のいずれにも定評のある中田の愛機は、同じレースにエントリーするドライバーにとって、強力なライバルとなることは間違いない。
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