ひっそりと価格高騰している1台
2025年2月27日〜28日にRMサザビーズがアメリカ・マイアミで開催したオークションに、メルセデス・ベンツ「560SL」が出品されました。ミッドナイトブルーのエクステリアカラーにダークブルーのハードトップ、そしてブルーオーバーグレイのインテリアと、じつにシックな装いの1台でした。
限られた市場のみにデリバリーされた560SL
1954年、メルセデス・ベンツから300SLと呼ばれるモデルが発表された。美しく、そしてダイナミックな造形を持つクーペボディに、ガルウイング式のドアを持つこのモデルに掲げられたSLの名は、ドイツ語でシュポルト・ライヒト、すなわち軽量スポーツを意味する。300SLは1963年まで生産され、その後継車となる2代目のSLに市場を譲る。
今回紹介するのは1971年まで生産が継続された2代目SLの後継となる3代目SL、すなわちR107型のトップモデルとしてシリーズ後期に生産された560SLだ。ちなみにこの560SLは、アメリカや日本、そしてオーストラリアなど限られた市場にのみデリバリーされたモデルで、その意味でもメルセデス・ベンツのファンから注がれる視線が熱いのは当然だ。
560SLが搭載するエンジンは、排気量5546ccのV型8気筒。最高出力は235psとされ、これはヨーロッパ市場などにデリバリーされた500SLのそれよりも5psほど低いスペックだったが、これは輸出各国で年々厳しくなる排出ガス規制に対応した結果であった。
はたしてR107型SLの人気はどのように推移しているのだろうか。RMサザビーズでは2023年11月に開催されたミュンヘンオークションにも、今回のモデルより1年新しい、すなわち最終モデルの560SLを出品しているが、この時の落札価格は3万9100ユーロ(当時のレートで邦貨換算約630万4000円)。アメリカのフロリダ州に新車で輸出され、2009年に再びヨーロッパに戻ったと考えられるこのモデルは、エクステリア、インテリアともに素晴らしいコンディションを持つ1台だった。
ハードトップやオーナーズマニュアルも付属
今回マイアミオークションに姿を現した560SLは、もちろんアメリカ仕様の1988年式。ミッドナイトブルーのエクステリアカラーにダークブルーのトップ、そしてブルーオーバーグレイのインテリアと、じつにシックな装いの1台である。
ハードトップやオーナーズマニュアル、さらには保証書ももちろん揃っており、こちらもそのコンディションは抜群と評価してもよいだろう。走行距離は2万6000マイル(約4万1600km)。新車でアメリカの地を踏んでから、もうすぐ40年になろうかというのだから、この数字はけっして大きなものではない。
車体に添付されるサービスの記録によれば、この560SLは2023年7月には新しいソフトトップ、フロントのショックアブソーバー、ステアリングリンク、エグゾーストハンガーなどを交換。さらに細かい整備記録としてはオイルやステアリングショックダンパーなどの交換も行われた記録が残っている。
RMサザビーズは、ミュンヘ・オークションを始めとするさまざまなリザルトや、市場での560SLの人気を考慮して、出品車に6万5000ドル~8万5000ドル(970万円~1270万円)の予想落札価格を提示した。それに対しての応札の勢いは衰えず、結果として7万8400ドル(邦貨換算約1170万円)で、この1988年式560SLは落札された。メルセデス・ベンツというブランドの人気。そして全般的にクラシックモデルの値上がりが予想できたオークションだった。
