モデナ工場に生産を移管してブランド価値を高める
マセラティは、「グラントゥーリズモ」と「グランカブリオ」の生産を2025年第4四半期からイタリア・モデナ工場に移管すると発表しました。この決断の背景の裏側には、どのような理由があるのでしょうか?
主力2モデルを2025年から再びモデナで生産
マセラティは、「グラントゥーリズモ」と「グランカブリオ」を生誕地であるイタリア・モデナに再び迎えることにより、自らの歴史に新たな一章を刻もうとしている。モデナの工場は、高性能エンジンの開発および生産も行われている。そのなかでも特許取得済のマセラティ・ツインコンバッション(MTC)技術を採用したV6エンジン「ネットゥーノ」は、F1由来のプレチャンバー燃焼技術を備え、マセラティが完全自社開発・設計・製造したユニットとして注目を集めている。また、同工場に設けられた専用スペース「オフィチーネ・フオリセリエ・マセラティ」は、顧客の要望に応じたカスタマイズが可能だ。
グラントゥーリズモおよびグランカブリオのモデナ工場での生産は、2025年第4四半期に開始予定である。このタイミングは、マセラティの象徴であるトライデント・ロゴの誕生から100周年という節目の年にあたる。さらにこの流れは、ブランドがモータースポーツ参戦100周年を迎える2026年へとつながっていく。1926年にマセラティが初めて冠した「ティーポ26」が、タルガ・フローリオでクラス優勝を含むデビューウィンを飾ったことは、今なお語り継がれているのだ。
世界で4万台超を販売した人気モデル
2007年から2019年にかけて、グラントゥーリズモおよびグランカブリオは全世界で4万台以上を販売し(グラントゥーリズモが2万8805台、グランカブリオが1万1715台)、数多くの成功を収めた。
モデナで生産された最後のモデルは2019年の「グラントゥーリズモ ゼダ」であり、先代の生産終了を象徴するモデルとして、新型グラントゥーリズモへとバトンを託す役割を担った。以降、生産はトリノのミラフィオーリ工場へと移り、同工場ではマセラティ史上初となる100%バッテリー電動駆動モデル「フォルゴーレ」が誕生している。
AMWノミカタ
マセラティの中枢であるクーペおよびコンバーチブルの両モデルが、モーターバレーの卓越性を象徴し、歴史あるヴィアーレ・チーロ・メノッティ工場にて生産されることとなった。モーターバレーという言葉は聞き慣れないかもしれないが、イタリア北部エミリア=ロマーニャ州を中心とする地域で、自動車やオートバイのメーカーや関連産業、そしてモータースポーツ文化が集まっているエリアを指す。
幹線道路であるSS9号線沿いには北からマセラティのモデナ、フェラーリのマラネロ、パガーニのサン・チェザリオ・スル・パナロ、ランボルギーニのボローニャという街が並ぶ。イタリアでは地域により産業が固まっている傾向があり、オートバイのドゥカッティやビモータもこの街道沿いに本社を構えている。
モデナはマセラティの故郷であり、今回のグラントゥーリズモおよびグランカブリオの生産をモデナに移すという決断は、ブランド・アイデンティティを強固なものにするだけでなく、モーターバレーのトップレベルのサプライヤーの高い技術力の恩恵を受けることができ、さらにはEV開発センターがあることからも未来の研究開発拠点により近い場所に位置できるメリットがある。また地域社会も今後このブランドが果たす責任と貢献を大いに歓迎してくれることだろう。
