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最低落札額に届かず不成立!わずか55台のポルシェ「911カレラRS 3.0」の真価とは

100万~150万ユーロ(邦貨換算約1億6245万~2億4365万円)で現在も販売中のポルシェ「911カレラRS 3.0」C)Courtesy of RM Sotheby's

シャシーナンバーとエンジンナンバーが一致する希少モデル

1974年にわずか55台のみが製造されたポルシェ「911カレラRS 3.0」。名車「ナナサン・カレラ」の後継にあたるこの貴重な1台が、2025年5月22日に開催されたRMサザビーズのミラノ・オークションに登場しました。レース参戦の歴史を持ち、コンディションも申し分ないモデルでしたが、予想に反して落札には至りませんでした。その背景を探ります。

RS 2.7を超える進化型として55台が生産された「カレラRS 3.0」

RMサザビーズのミラノ・オークションに、ポルシェ 911カレラRS 3.0が出品された。1974年にわずか55台のみが生産されたこのモデルは、1973年に登場した「911カレラRS 2.7」、通称“ナナサン・カレラ”の進化型ともいえる存在だ。

ポルシェ911のファンにとって、ナナサン・カレラは究極的なコレクターズアイテムとして広く知られているが、それでも生産台数は約1580台に達していた。それに対し、911カレラRS 3.0の生産55台という数字が、いかに希少であるかがよくわかる。

モータースポーツのホモロゲ取得を目的に誕生

911カレラRS 3.0が開発された背景には、モータースポーツでの活躍を見据えたポルシェの戦略があった。1974年シーズンに向け、ポルシェは新開発の3L水平対向6気筒エンジンを搭載する「911カレラRSR」を投入する計画を立てていた。FIAのホモロゲーション(公認)を取得するために生産されたロードカーこそが、この911カレラRS 3.0である。

900kgのボディに230psの軽量&高剛性なエンジンを搭載

911カレラRS 3.0の魅力を端的に物語るのが、そのリアに搭載される3Lエンジンだ。軽量で高剛性なアルミニウム合金「シルミン」で製作されたクランクケースを採用し、内部構成はまさに911カレラRSRそのもの。最高出力は230psとされ、車重はわずか900kgという驚異的な数値を実現している。

この軽量化は、ボンネットやエンジンフードに複合材を用い、軽量ウインドウの採用、消音材の削減など、徹底したダイエットによって達成された。

シャシー構成にも特筆すべき点が多い。サスペンションはRS 2.7と基本構造を共通としながらも、セッティングは刷新。前後に装着されるフックス製ホイールは、RS 3.0ではよりワイドなサイズとなった。

加えてブレーキには、レーシングマシン「917」から流用されたドリルド・ベンチレーテッド・ディスクと4ピストン・キャリパーが採用され、高い制動性能を誇る。

イタリアのクラブマンレーサーが長期所有

今回出品されたのは、RMサザビーズによれば1974年1月にドイツ・シュトゥットガルトで新車デリバリーされた個体。ボディカラーのグランプリホワイト、ゴールド仕上げのカレラ・ストライプなどはすべてオリジナルのままだという。

1975年には、セカンドオーナーとなるイタリアのクラブマン・レーサー、アントニノ・グアリアルド氏が所有。彼は同年7月の「タルガ・フローリオ」にこの車両で参戦した記録も残されている。惜しくも完走は果たせなかったが、彼がこの911の性能に惚れ込んでいたことは想像に難くない。

コレクション経歴も申し分なし、だが落札には至らず

グアリアルド氏が30年にわたって所有したこの911は、その後フランスやベルギーを経て、2015年にはRMサザビーズの「ザ・シュトゥットガルト・レジェンド・コレクション」の所有となった。2025年2月には、ポルシェ専門家アンディ・プリル氏による検査を受け、シャシーナンバーとエンジンナンバーが一致することも確認されている。

RMサザビーズはこの911に対し、100万~150万ユーロ(邦貨換算約1億6245万~2億4365万円)の予想落札価格を提示し、注目の出品車として扱っていた。

しかし、今回のミラノ・オークションでは最低落札価格に届かず、不成立に終わった。ちなみに、同じ911カレラRS 3.0は2024年、アメリカ・モントレーのオークションにおいて239万ユーロ(邦貨換算約3億4700万円)で落札された記録もあるだけに、今回の結果を意外と感じたエンスージアストやオークション・ウォッチャーも少なくないだろう。

今後、再出品の可能性も含め、その動向に注目したい1台である。

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