30年間でわずか走行4640km!奇跡のE36型BMW M3
英国のオークションハウス、ボナムスが「タイムワープ・コンディション」と称した1995年式BMW E36型M3が、グッドウッド・オークションで約1274万円という驚きの価格で落札されました。走行距離はわずか2900マイル(約4640km)。30年もの間ほぼ手つかずで保管されてきたその保存状態と希少性が、落札価格を押し上げました。
M3の歴史とE36型の位置づけ
オークショネアのボナムスは、それを「タイムワープ・コンディション」。すなわち「時空を超えたコンディション」であると表現した。先日同社が開催したグッドウッド・オークションに出品された1995年式BMW M3が、そのタイムワープ・コンディションとされるモデルだ。
BMWのM3といえば、1985年に誕生した初代モデルから現在の6代目モデルに至るまで、多くのファンに愛され続けてきたスポーツカーである。今回の出品車は「E36型M3」と呼ばれるもので、M3の歴史においてはセカンド・ジェネレーションにあたる。
E36型M3の大きな魅力は、そのコンパクトでスタイリッシュなボディーにある。1993年のデビュー時には2ドアクーペのみが用意されたが、翌1994年にはカブリオレと4ドアセダンも追加設定され、いずれも高い人気を誇った。
先代E30型M3では直列4気筒を搭載していたが、E36型M3ではBMWファンから強く支持される直列6気筒へと進化。前期型(1993〜1995年)は排気量2990ccで最高出力286ps、後期型(1995〜1998年)は3201ccで最高出力321psを誇った。今回出品されたのは前期型の2990ccエンジン搭載車で、5速MTとRWDを組み合わせている。
イタリアのガレージで保管されていた“新車同様”の1台
このE36型M3は新車でのデリバリーから30年が経過しているが、コンディションはまさにタイムワープ級だ。英国ロンドンのBMWディーラーから販売された車両で、ファーストオーナーはイタリア人。購入直後、シンガポールへの移住を前に故郷アルアッシオへ持ち帰り、プライベートガレージで大切に保管してきた。
その後、ほぼ手つかずの状態で維持され、2024年に再び英国へと渡った。走行距離は2900マイル(約4640km)以下で、現存するE36型M3のなかでも極めて低走行の部類に入る。オリジナルキー2本、オーナーズマニュアル、救急セットや各種ドキュメントも完備している。
ボナムスが提示した予想落札価格は8万〜10万ポンド(約1180万〜1480万円)。1993年の日本市場導入時における正規輸入モデルの価格が730万円だったことを考えれば、その差は希少性と保存状態のプレミアムによるものであることは明白だ。
現行M4との価格比較が示す価値
最終的な落札価格は8万6250ポンド(邦貨換算約1274万円)となった。
仮にこのコンディションで、3201cc直列6気筒+6速MTの後期型であったなら、さらに高額の評価がついた可能性もある。参考までに、現行のM3クーペ直系にあたるM4クーペ(M4コンペティションM xDrive)は税込1504万円。これを踏まえれば、今回の落札価格がいかに驚くべきものかが分かる。
クラシックBMWにおいて、E36型M3は確実にその地位を確立したといえる。
