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極上オリジナルのフェラーリが売れなかった! 208GTBターボが約1900万円で流札

8万5000ポンド~9万5000ポンド(邦貨換算約1770万円〜1980万円)で現在も販売中のフェラーリ「208GTBターボ」(C)iconicauctioneers

税制対策の副産物として登場したフェラーリ初の市販ターボ車

2025年11月7-9日、イギリス・バーミンガムの見本市会場「NEC(National Exhibition Centre)」で開催された英国最大規模のクラシックカートレードショー「Classic Motor Show」。そのオフィシャルオークション「The Iconic Sale at the NEC Classic Motor Show 2025」が、大会中日となる11月8日に実施されました。ヤングタイマー・クラシックカーを中心とした約150台の出品ロットのなかから、今回はフェラーリ初の市販ターボ車「208GTBターボ」をご紹介します。

世界最小のV8エンジンにターボチャージャーを追加!

1975年、かつての日本と同じく排気量2000ccを境として自動車税額に大きな隔たりがあったイタリア国内マーケットに向けて、フェラーリは「ディーノ308GT4」の2L版である「208GT4」をリリースした。V8エンジンのボア径は81.0mmから66.8mmに縮小され、排気量は1991ccにドロップ。それでも、当時の自然吸気2Lエンジンとしては世界最上級に属する170ps/7700rpmの最高出力を発生した。

このダウンサイジングされた「ティーポF106C」系ユニットは、1980年以降の後継モデルである「208 GTB」にも搭載され続けたが、パワーは155psまで低下してしまう。そこで1982年4月のトリノ・ショーにおいて、過給機による大幅なパワーアップを期した「208GTBターボ」を発表。さらに約1年後には、デタッチャブルトップを持つ「208GTSターボ」も追加設定された。

F1のテクノロジーを投影したパワーユニット

新たに「ティーポF106D」と呼ばれることになった新ユニットのターボ過給システムは、同時代のF1マシン「フェラーリ126C2」から大きな影響を受けたといわれるものだ。シングルの「KKK」社製ターボチャージャーとボッシュ製K-ジェトロニック燃料噴射、マレッリ社製の電子点火装置を採用。これらの改良により、最高出力は220psへと劇的に向上した。これは3Lの「308GTB」が持つ255psに迫る数値であった。

一方ボディワークの変更点としては、フロントグリル下に追加された5枚の冷却用スリット、後輪アーチ前方に採用されたNACAダクトが挙げられる。また、リトラクタブル式ヘッドライト直後にはマットブラック仕上げのベントが、フロントのトランクフード前縁部には全幅にわたるベントが配置された。くわえて、リアには小さなセンターグリルを挟んだ分割式バンパーと、対をなすアイコニックな4本出しマフラーが装着された。

その後、インタークーラーの装備などにより254psまでパワーアップされ、328GTB/GTSに準じたルックスを与えられた後継モデル「フェラーリGTB/GTSターボ」に取って代わられる1986年までに、208GTBターボは437台、208GTSターボは250台が生産されたと言われている。

奇跡的なコンディションをフルオリジナル状態で維持している

「The Iconic Sale at the NEC Classic Motor Show 2025」オークションに出品されたフェラーリ208GTBターボは、437台が生産されたと伝えられるベルリネッタ版のうちの1台。「ロッソ・コルサ」のボディに「ベイジェ(ベージュ)」のコノリー社製本革インテリアというクラシックな仕様でマラネッロ工場から送り出された。そして、1985年1月1日付けでミラノのフェラーリ正規代理店「クレパルディ」社を介して、最初の熱心なオーナーに納車された。

この208GTBターボは、2019年4月に英国へ渡るまでイタリアに留まっていたが、その後フェラーリのエンジニアとしても高く評価されるアマチュアレーシングドライバーであり、「イタリア・オートスポーツ」の創設者であるジョン・ポグソンの所有車両となり、今日に至るまで彼のコレクションの一部を構成している。

ここで強調すべきは、この208GTBターボが「並の」コンディションには留まらない極上車であるにもかかわらず、これまでレストアが施されていない点である。つまり、これは完全にオリジナルで修復の手を加えられていない208GTBターボであり、工場出荷時のボディペイントからインテリアに至るまで、一貫して保存されてきたという。

メカニズム系については、ほぼすべての純正ファクトリー部品が、英国を代表する208スペシャリストによって維持管理されており、現時点のオドメーターで確認された走行距離がわずか2万7686km(約1万7200マイル強)であることから、イギリス国内ではもっともオリジナル性の高い208ターボであると言えるだろう。

スペシャリストによる徹底した維持管理と希少な付属品

またクルマの長寿命化を図るべく、エンジン/ギヤボックス/デフの分解を含む全箇所の点検整備を実施。再組み立て前に全パーツを洗浄・検査し、健全性を確認済みとのことである。また、サスペンションはジョン自身の数十年間にわたる競技用/高速走行用チューニングの経験に基づき調整。その走行性能は申し分ないものと申告されている。

さらに特筆すべきは、当時の純正オプションである「スケドーニ」社製ラゲッジセットがオリジナルのまま残されている点で、この傑出したフェラーリの希少性をいっそう際立たせているのは間違いのないところ。添付される詳細なドキュメントファイルには、多数のインボイスや納品書にくわえて、フェラーリのオーソリティのひとりであるトニー・ウィリスによる、この個体の正統性を証明する書簡も含まれている。

アイコニック・オークショネア社では、自社の公式オークションカタログ内で「販売前の実車確認は常に推奨すべきものですが、この個体においてはとくに、年月とともに失われがちなオリジナル性を完全に理解する上で、とても重要な要素になるでしょう」と誇らしげに謳いつつ、8万5000ポンド~9万5000ポンド(邦貨換算約1770万円〜1980万円)という、このモデルとしては比較的高めのエスティメート(推定落札価格)を設定した。

ところが、バーミンガムNECのホール2で行われた競売では、売り手側の期待していたほどにはビッド(入札)が進まず、「No Sale(流札)」に終わってしまった。

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