大衆車をベースにした競技用モンスターマシンの先駆け
2025年11月7〜9日、バーミンガムの見本市会場「NEC(National Exhibition Centre)」で開催された英国最大規模のクラシックカートレードショー「Classic Motor Show」のオフィシャルオークション「The Iconic Sale at the NEC Classic Motor Show 2025」は、大会中日となる11月8日に実施された。ヤングタイマー・クラシックカーを中心とした約150台の出品ロットのなかから、ルノー「5ターボ2」をピックアップ。その概要とオークション結果をお届けします。
5ターボの成功をもとに普及版のターボ2をリリース
1980年、ルノーは「グループ4」レースと世界ラリー選手権(WRC)参戦を目的に、純粋なFIAホモロゲーション特別仕様車として、のちに伝説として語られることになる「5(サンク)ターボ」を発表した。
5ターボは、市販のルノー「5(サンク)アルピーヌ」をベースにしていたものの、ルノー・スポールのエンジニアは標準のフロントエンジン前輪駆動レイアウトを廃止。リアシートのスペースにパワートレーンを押し込み、ミッドシップ+後輪駆動レイアウトを採用した。
エンジンは、1970年代までルノーの高性能エンジンを一手に引き受けていた「ゴルディーニ」のあとを受け継いだ「ルノー・スポール」ヴィリー・シャティオン工房にて開発された。初代サンクの高性能版として1977年に登場した「5アルピーヌ」の1393cc直列4気筒OHVをベースに、ボッシュKジェトロニックとギャレット社製T3型ターボを追加。160ps/6000rpmもの最高出力と、21.4kgm/3250rpmの最大トルクをマークした。
ロードゴーイングモデルとしての5ターボは、そのエキセントリックな魅力から市販ロードカーとしても大きな成功を収め、「グループ4」ホモロゲーション取得のためにFIAが要求した400台を遥かに超える、約1800台が生産されたといわれる。
そして1981年のWRCシーズン開幕戦となる「モンテカルロ・ラリー」で、「曲芸師」ジャン・ラニョッティとコ・ドライバーのジャン=マルク・アンドリーが登場する5ターボは早々の優勝。翌年には同じくラニョッティが「トゥール・ド・コルス」でも優勝を果たす。
こうして、5ターボ最初の400台の市販車が「グループ4」公認の生産台数要件を満たしたのち、第2世代にして普及版となる「ターボ2」が開発されることになった。
ターボ2では、ボディパネルをアルミ合金製からスチール製に変更したほか、前任モデル「ターボ1」ではアヴァンギャルド的だったインテリアを、FFの「サンク・アルピーヌ」と共通のデザインにするなどのコストダウンを断行。販売価格を大幅に下げたこともあり、1983年から1986年にかけて約3200台が製造されたといわれている。
そしてラリー競技に向けては、事実上のエヴォリューションモデルである「マキシ5ターボ」で1984年にFIA「グループB」ホモロゲーションを取得し、翌年ラニョッティはマキシ5ターボとともに、再びトゥール・ド・コルスを制した。
定番パーツを満載したターボ2はターボ1並みの価格で落札!
「The Iconic Sale at the NEC Classic Motor Show 2025」オークションに出品されたルノー5ターボ2は、新車として西ドイツにデリバリーされた個体で、シャーシNo.は#943。パールホワイトのボディペイントに、ブラウンのビニールレザー&ベロアインテリアというオリジナルカラーで仕上げられ、
「ラリーで鍛えられたミッドシップホットハッチの傑出した1台……」
とアイコニック・オークショネア社では主張していた。
初代オーナーであるルノー正規ディーラーの経営者の趣味によって、スポーティな外観とサウンドを実現するため、ラリー仕様の数々のアップグレードが新車当時から施されていた。この特別装備にはアルミニウムの「マター」社製ロールケージや「デビル」社製エキゾースト、「ゴッティ」社製スプリットリムホイールなど、当時のルノーおよびアルピーヌ用としては定番とされていた、魅力的なアフターマーケットパーツが含まれている。
また、ドキュメントファイルに収められた「ヘリテージ証明書」はシャーシナンバーとエンジンナンバーの一致を証明しており、詳細な点検によりマター製ロールケージとスペアタイヤも当該モデルイヤーに適合していることが確認できる。
オークション公式カタログ作成時点での走行距離は、わずか2万5346km。パール塗装が輝き、ボディパネルとドアなどの開口部のチリ合わせは均一。デカールは純正仕様で、キャビンは極めて良好な状態を保つなど、外観は極めてシャープな印象を与える。また、見た目と同様にパフォーマンスも申し分ないとのことである。
くわえて、専門知識を持つルノー・スポール認定整備士によるメンテナンスを受け、最近のフル点検では機械的、および外観上の状態が極めて良好であることも確認されている。直近の作業内容としては、適正仕様に修復されたダンパー、等長マニホールドの装着、新品タイヤ、燃料ラインの交換などが挙げられる。
アイコニック・オークショネア社では、現時点において「歴史的車両」としての公的認定資格も有しているこのルノー5ターボ2について
「ルノーのグループB純血種を公道仕様化したターボ2は、画期的な高性能車コレクションに欠かせない逸品。マーケットが最高品質の個体を求めるなか、この驚くほど良好な保存状態の低走行距離なうえに見事に整備された小さなルノーは、真剣な検討に値する1台です」
と自社の公式オークションカタログ内で謳いつつ、7万8000ポンド~8万8000ポンド(邦貨換算約1560万円〜1777万円)という、現況におけるこのモデルの相場を反映したと思しきエスティメート(推定落札価格)を設定していた。
そして、バーミンガムNECのホール2で行われた競売では、順調にビッド(入札)が伸びたようで、終わってみればエスティメートを上まわる8万8875英ポンド。つまり現在のレートで日本円換算すると約1850万円という、数年前なら同じ「5ターボ」でも前任モデルにあたる、いわゆる「ターボ1」につきそうな価格で競売人のハンマーが鳴らされるに至ったのである。
