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かつては二束三文だったベルトーネ「X1/9」が再評価!今後の市場価格高騰を予感させる

8100英ポンド(邦貨換算約170万円で落札されたベルトーネ「X1/9」(C)iconicauctioneers

X1/9は近未来のクラシックカー市場の有望株?

言葉は悪いですが、かつて中古車市場で二束三文で売られていたようなクルマが、現在では「コレクターズアイテム」として高値で珍重される。そのような事象は、クラシックカーが高い人気を誇る昨今のマーケットでは、決して珍しい話ではありません。そのような現在の出世株のひとつとして、「フィアットX1/9」と「ベルトーネ X1/9」も挙げられるでしょう。 今回は、X1/9市場による評価とはまた異なる角度から、その価値を紐解く事例のひとつとして、「アイコニック・オークショネアーズ」社が2025年9月にオンライン開催した「The 25th September Online Timed Auction」に出品されたベルトーネX1/9に注目します。モデルの概要とともにオークション結果についてお話ししていくことにしましょう。

FF大衆車のメカニズムをミッドシップに転用するアイデアの先駆者とは?

フィアットX1/9は、イタリアの自動車デザインの真髄といえるコンパクトなミッドシップスポーツカーであり、手の届きやすいパッケージでエキゾティックなエンジニアリングの魅力をドライバーに提供した、エポックメイキングな傑作だ。そして、ベルトーネ所属時代に花開いたマルチェッロ・ガンディーニ天賦の才と、フィアットの優れたテクノロジーがみごとに融合したモデルでもあった。

さらに1970年代初頭という時代に先駆けて、厳しい米国安全基準を最初から満たすよう設計された初のフィアット車、という特筆すべき事実もあった。

その心臓部としては、前輪駆動の大衆向けベルリーナ(セダン)「フィアット128」から借用した横置きエンジンとトランスミッションの「ダンテ・ジアコーザ式レイアウト」が採用されていたが、駆動系を後輪軸の直前に配置するという、きわめて秀逸なアイデアが加えられていた。つまり、このミッドシップレイアウトがX1/9に名高いバランスの取れたハンドリングをもたらし、当時のライバル車たちとは一線を画す存在としたのである。そして、全世界に現れたミッドシップの小型スポーツカーたちの先駆けともなった。

パワーユニットは、当初フィアット128用の直列4気筒SOHC・1290ccを選択。そののち1978年以降は「フィアット・リトモ」用の1498ccエンジンが組み合わされるとともに、内外装にもマイナーチェンジが加えられた。

一方ガンディーニ作品らしい特徴的なウェッジシェイプのスタイリングには、リトラクタブル式ヘッドライト、フロントフード下に収納可能なコンパクトな軽量ハードトップ、そして2人乗りスポーツカーとしては珍しい、実用性を備えた前後のラゲッジコンパートメントが含まれていた。

もともと、製造工程の大部分をトリノ近郊グルリアスコの「グルッポ・ベルトーネ(ベルトーネ・グループ)」工場で行っていたX1/9だが、1972年から1982年までは「フィアット」のブランドとネットワークで販売されていた。しかし、1982年にベルトーネが生産を全面的に引き継ぐと、エンブレムを取り換えて「ベルトーネ X1/9」として再ブランド化される。これらの後期モデルは、内外装も豪奢に仕立てられたほか、とくに大柄なドライバー向けに足元のスペースの確保と全体的な快適性を向上させるための改良など、小規模なアップデートも施されていた。

その後もX1/9は細かい変更や限定バージョンの追加などの延命策を施されつつ、デビューから17年後の1989年まで、フィアットとベルトーネの両ブランド総計で約16万台が生産された。

走行距離は約4万km!オリジナルを維持した上質な個体

アイコニック・オークショネアーズ社は、2011年に「シルヴァーストーン・オークション」として創業。2024年8月に現在の屋号「アイコニック・オークショネアーズ」に改組して再スタートを図ったという、クラシックカービジネス界では比較的新興勢力ともいうべきオークション会社である。

同社では創業当初から、毎月末に期間限定のオンラインオークションを開催しており、2025年9月のオークションでは18日に入札がスタート。1週間後の25日午後7時に締め切る設定をしていた。

この「アイコニック・オークショネアーズ」が開催した「The 25th September Online Timed Auction」に出品されたX1/9は、生産最終期のベルトーネ・ブランドによる英国向けRHD(右ハンドル)仕様車。「1500」エンジンとタルガトップを備え、さらに英国市場では「ベルトーネ・エディション」と銘打って限定販売されたなかのひとつである。

1988年8月、初代オーナーへと新車としてデリバリーされたこのベルトーネX1/9は、38年が経った今となっても、歴代オーナーはわずか5人。新車時からの通算でも2万5508マイル(約4万800km)しか走行していないせいか、荒れた個体の多いこのモデルとしては上々のコンディションを保持している。

また、使用頻度が極めて低いことも相まって、驚くほどオリジナルな状態を保っているのも大きな特徴という。X1/9は英国の道路状況に由来する錆による劣化が深刻なことで知られるモデルだが、この個体ではその心配は不要とのこと。サイドシルやトランクフロア、そのほかX1/9の弱点とされる錆発生ポイントはすべて錆なしで、唯一確認できる錆はフロントガラスの上隅、約1cm四方の部分のみと申告されていた。

くわえて、限定カラーであるブラック&レッドのペイント状態も非常に良好で、車体全体に目立った傷や汚れはほとんど無いとのこと。そのほかの外装部分も同様に良好なコンディションで、クロモドラ社製アロイホイールやバンパーの表面には腐食がなく、ほぼ新品同様の輝きを保っている。

インテリアはエクステリア以上に良好な状態、とアピールされていた。シートのボルスター部分やファブリック張りのシートインサート、ステアリングホイールなど、使用頻度の高い箇所にはほとんど使用感が見られないという。スイッチ類にはすべて白色の刻印が鮮明に残っており、電気系統もすべて正常に作動するとのことであった。

5人のオーナーすべてから大切にされてきたX1/9

肝心のメンテナンス面については、豊富な整備記録書類が付属しているという。とくに数多くの細かな内装パーツや定期点検、そのほかのエンジン周辺部品の記録から、使用頻度や走行距離に関わらず、このクルマが深く愛され、丁寧に維持されてきたことがうかがえる。

今回のオンライン入札に先立ち、アイコニック・オークショネアーズ社は公式オークションカタログ内で

「イタリアが誇る隠れた名車をお探しなら、この小さなフィアットX1/9は、英国のB級道路を駆けるのに最適な1台となるでしょう」

と、イギリス国内の嗜好性を刺激するPRフレーズを添えつつ、7500ポンド〜1万ポンド(邦貨換算約152万円〜203万円)という、なかなかリーズナブルにも映るエスティメート(推定落札価格)を設定した。

そして実際のオンライン競売では、1週間の入札期間を経て8100英ポンド。現在のレートで日本円に換算すれば、約170万円まで上がったところで締め切りを迎えた。

現在のイギリス国内クラシックカーマーケットにおけるフィアット/ベルトーネX1/9は、安価なものでは3000ポンド以下、高価なものになると2万ポンドを超えるような車両も流通しているようだ。現在の人気が継続するならば酷く荒れた個体は少しずつ淘汰され、いずれはコンディションに優れた分、価格も高めのクルマたちに収束されてゆくものと思われる。

その推測を勘案すれば、たとえ小さな錆があるとはいえ、今回のハンマープライスのようにリーズナブルな価格で入手できた落札者は、なかなか幸運の持ち主だったのではないかとも感じられたのである。

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