走行距離2700kmの衝撃!時空を越えて現れたLP400S
2025年12月11日、ロンドンのボナムズで開催された「The Bond Street Sale 2025」。そのなかで、まさに時空を越えて現れたかのような1台のクルマが会場を震撼させました。走行距離わずか2700kmという、驚異的なコンディションを維持した1981年式のランボルギーニ「カウンタックLP400S」です。新車同然の輝きを保ったその驚きの経緯と、歴史的な価値を紐解きます。
空前絶後のカウンタックLP400を超える改良をした“S”とは?
伝説の「ミウラ」の後継車として、その偉業を超えることは容易ではない。それゆえ、1960年代最高のスーパーカーを凌駕するほどに輝かしい後継車が登場するなんて、誰もが予想だにしなかったことだろう。
1971年のジュネーヴ・モーターショーにてセンセーションを巻き起こした「カウンタックLP500」は、感嘆を意味するピエモンテ方言の語源「クンタッチ」のとおり、まさしく衝撃のプロトティーポ。先代にあたるミウラと同様、「カロッツェリア・ベルトーネ」のマルチェッロ・ガンディーニによってデザインされた。
あらゆる角度から見てもアグレッシヴな印象を与えるカウンタックは、まさに驚異的な存在であり、まるで別の惑星から生み出されたかのようだった。実際のところ量産モデルの「LP400」が登場し、顧客への納車が開始されるまで、さらに3年後の1974年を待たねばならなかった。
こうして正式リリースされたLP400について、英国の自動車専門誌「CAR」は「純粋に突飛な視覚的魅力と、公道でも発揮できるサーキットカーとしての性能を兼ね備えたスポーツカーとしては、これ以上のものは存在しない。そして、これを超えるクルマが現れるとは想像し難い」と断言した。しかし、超えるクルマは現れた。LP400をベースとしつつも大幅に改良された「LP400S」がそれである。
ピレリが新たに投入した「P7」タイヤの特性を活かすため、シャシーとサスペンションに大規模な変更が施されるとともに、かつてはカナダの石油王にしてF1チームオーナーとして名をはせたウォルター・ウルフ氏のために、ランボルギーニ社で製作されたスペシャルカー、いわゆる「ウルフ・カウンタック」で実験されたボディワークを応用する。
新デザインのマグネシウム製ホイールに取り付けられた、前:205/50VR15、後:345/35VR15という巨大なピレリP7タイヤを組み合わせる。それを収めるオーバーフェンダーとフロントスポイラーでさらに武装。オプションとして、のちにカウンタックの特徴のひとつになるリヤウイングを備えることも可能とされた。そしてこの改良型カウンタックについて英国「CAR」誌は「時速180マイルでコーナーを駆け抜ける。我々が実際に試した事実だ」と熱狂的に報じた。
高値安定のカウンタックはLP400Sであっても1億円超えが当たり前?
昨2025年末のボナムズ「The Bond Street Sale:Important Collectors’ Motor Cars and Automobilia」オークションに出品されたカウンタックは、1978年から1982年にかけて、237台が生産されたと言われているLP400Sの1台。1981年モデルということで、じつは前/中/後期に分類できるとされるLP400Sの最終期にあたる車両である。
「ビアンコ(ホワイト)」のボディに「ロッソ(赤)」レザーのシート、黒のカーペットで仕立てられたカウンタックLP400Sは、外国籍の名義人(Escursionisti Esteri)がイタリア国内で自家用車を一時的に使用・走行させる際に交付される特別な仮ナンバープレート「EE 94194」をつけていた。当初は1981年11月12日にボローニャで登録されたのち、英国人の顧客に納車。ファーストオーナーは、ロンドン在住のジェラルド・デイヴィッド・パルド氏なる人物だった。
そして1999年6月、今回のオークション出品者でもある現オーナーは、今世紀初頭までロンドンを拠点として活動していた高級車ディーラー「プリチーノ・クラシックス(Pullicino Classics)」社より、5万6000英ポンドで購入。当時の走行距離は727kmで、コンディションについては「未登録・納車時走行距離・新車同然」と説明されていた。
2000年から2019年まで、ランカシャー州ライザムの「フェルディーズ・ガレージ」社にて、定期整備と英国内の車検(MoT)を実施。2005年には「ロンドン・ステンレススチール・エキゾースト・センター」社にて新品マフラーに交換。2018年には、走行距離にして1200kmの時点で「コリン・クラーク・エンジニアリング」社にて、タイヤをすべて新品に換装。さらに2022年には「モダン・クラシックス」社にてスターターモーター交換と追加整備を実施し、この時にも1000ポンドが費やされた。
オークション公式カタログの作成時点における走行距離は、約2700kmとのこと。また付属される書類ファイルには、純正オリジナルの整備/保証ブックレット、オリジナルのドライバーズマニュアル、ラジオ/ステレオ取扱説明書、「V5C」登録履歴証明書、そして各種のランボルギーニ カウンタックを記した当時モノのパンフレットおよびアートワークが含まれる。
ボナムズ社では、今回の出品にあたって
「スーパーカーメーカーの新たな基準を打ち立てた画期的なデザインであるランボルギーニ・カウンタックは、20世紀を代表するもっとも象徴的なスポーツカーのひとつであり、その性能を向上させたLP400Sモデルはなおさら楽しめる1台で」
とオフィシャルカタログ内でアピールするかたわら、45万ポンド~55万ポンド(邦貨換算約9540万円〜1億1660万円)という、ここ数年の国際マーケットにおけるLP400Sの実勢価格を熟慮して決定したと思しきエスティメート(推定落札価格)を設定していた。
そして12月11日、同社がニュー・ボンドストリートに構えた「ボナムズ・ショーケース」で行われた競売では、エスティメート上限に限りなく近い54万6250ポンド、現在のレートで日本円に換算すれば約1億1500万円という目覚ましいハンマープライスとともに、落札されることになったのである。
