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マグナス・ウォーカーの初愛車を再現したポルシェ 911がオークションに登場! 手放した未完のプロジェクトには「とんでもない出費!?」

5万600ドル(邦貨換算約810万円)で落札された「ポルシェ 911 カレラ2.7 フラットノーズ仕様」(C)Courtesy of RM Sotheby's

アウトローを体現した真紅の大改造車! ウォーカーのコレクションが放出

2026年3月18日から25日にかけて、RMサザビーズ北米本社がオンライン限定オークション「Magnus Walker:The Outlaw Collection」を開催しました。ポルシェ界のカリスマであるマグナス・ウォーカーが所有していた、個性的なスタイルを体現する真紅のポルシェ「911 カレラ2.7」フラットノーズ仕様のオークション結果と、彼がこのクルマを手放した理由をレポートします。

ポルシェ&ファッション界のカリスマ、ウォーカーが手に入れた「アウトロー」スタイルのフラットノーズ

2026年3月18日から25日、RMサザビーズ北米本社は「Magnus Walker:The Outlaw Collection」と銘打ったオンライン限定オークションを開催した。ポルシェ界におけるワールドワイドのインフルエンサー、マグナス・ウォーカーの個人的なポルシェコレクションが放出されることになった。

今回はその出品ロットのなかから、世界を魅了する彼独特のスタイル「アウトロー」スタイルを体現し、これまでにもいくつかのメディアに登場した真紅の大改造ポルシェ 911のあのフラットノーズに注目する。

ポルシェ愛好家マグナス・ウォーカーが語る、初恋の「スラントノーズ」への情熱と葛藤を映した1974年式へのカスタムの沼

「自分がこれまでに何台のポルシェを所有してきたのか、もう数え切れないほどですが、初めて購入したあの1台の911だけは鮮明に覚えています。1992年、25歳のときに手に入れた、赤いスラントノーズのコンバージョンカーです。ポルシェを所有したいという夢を抱き、ついにその目標を実現できたのです。これはそのときのクルマそのものではないですが、皮肉なことに、これもまた赤の1974年式のスラントノーズ コンバージョンです。

スラントノーズの911は、好きか嫌いかの二択になる車種のひとつだと思います。それは私にとって……といえば『大好き』です。

ポルシェが当時の『ゾンダースヴンシュ(Special Wishes)』プログラムを通じて実際にスラントノーズのボディキットを提供するようになる以前に、ポルシェ 935ターボのようなボディを手に入れる唯一の方法は、アフターマーケットのビルダーやチューナー、たとえば『DPクレーマー』や『ゲンバラ』『シュトロゼック』。あるいは80年代初頭に、とくにロサンゼルスで盛んだったバックヤードビルダーのような業者に頼むことでした。

いずれを選んでもパフォーマンスの面では、さほどの違いはありません。それがメーカー製であれ、独立した専門チューナーによるものであれ、あるいはガレージビルダーによるものであれ、結局はボディキットに過ぎないのです。

そして、この赤い個体についてですが、私は5、6年ほど前から、そろそろ2台目のスラントノーズを手に入れたいと考え始めていました。純正のスラントノーズも、ガレージビルドのスラントノーズも、改造されたスラントノーズも見て回りましたが、どれも本当に気に入るものはありませんでした。ところが運命のいたずらか、探すのをほぼ諦めたころ『WOB Cars』のロブ・ディーツから電話があり、顧客が売りに出しているという話を聞き、さっそく見に行って購入したのです。

2021年には、サント ギャラリーで展示されたシリーズ写真のひとつとして、写真家ダニエル・マリキヤールが撮影した、愛犬ウィローが車体から飛び出す象徴的なショットが生まれました。

でも私は、この911をガレージの片隅に停めておいたままでした。というのも、このクルマにはずっと憧れていたものの、これを手に入れてしまえば、あとはもうチューニングという沼にハマるような、とんでもない出費が待っていることが分かっていたからです。

シャシーナンバーを調べると、1974年式の米国仕様カレラ2.7であることが判明しました。これはある意味、かなり魅力的なモデルです。しかし、この個体には純正エンジンは搭載されていません。実際には、1973年式ポルシェ 911Eの2.4Lをベースに組み上げられた、RS仕様の2.7Lメカニカルポンプ燃料噴射エンジンが搭載されています。つまり完全な『フランケンシュタイン』のようなシロモノだったのです。

この見た目にふさわしい走りを満足させるには、500から600psのビッグターボエンジンが絶対に必要で、そうなればサスペンションの強化、大型ブレーキ、新しいホイール、そのほかあらゆるパーツの交換も待っています。だから僕は、このプロジェクトを中断することにしたのです」

(マグナス・ウォーカー)

935の迫力を纏いRSの魂を宿した、マグナス・ウォーカー秘蔵の1974年式「スラントノーズ」カスタム

1974年、ポルシェは発表から10年を迎えていた911を大幅に改良し、衝突時の保護性能を高めた新しいバンパーを採用するとともに、モデル誕生当初からのクラシックなシルエットから、のちに1980年代の象徴的なデザインとなるスタイルへと外観を一新した。これがナローボディから、930のビッグバンパーへの大変革期となる。

とはいえ、このほどRMサザビーズ「Magnus Walker:The Outlaw Collection」オークションに出品された、ウォーカー所有の1974年式ポルシェ 911 カレラ2.7には、こうした変更点は一切見られない。この車両は1980年代に、「アメリカン レーシング インターナショナル(A.I.R.)」製の、ポルシェ 935レーシングカーをモチーフにしたファイバーグラス製ワイドボディキットで改造されているからだ。

ポルシェは1974年モデルの911の高性能モデルとして、名高い「ナナサン」カレラRSから引き継いだボッシュ製メカニカル燃料噴射システムを搭載した強力なカレラ2.7「MFI」エンジンを用意していたが、すでに排気ガス対策の法令化が予期されていた米国マーケットでは正規導入されることなく終わった。

その代わりに、この「フラットノーズ」ワイドボディへのコンバージョンに採用された車両を含む米国市場向けのポルシェ 911 カレラ2.7には、同時代の911Sから流用された出力の低い水平対向6気筒エンジンが搭載されていた。

このスタンダードな911用エンジンは、より新しく排出ガス規制に適合したボッシュ製Kジェトロニック(通称「連続噴射システム」)を採用しており、そのためポルシェの専門家からは「CIS」モデルとして知られている。

しかし、1980年代にこのポルシェ 911 カレラ2.7クーペがA.I.R.のボディキットを装着した際、エンジンは1973年式ポルシェ 911E 2.4のクランクケースを使用した、カレラRS 2.7 MFI仕様に基づく高出力ユニットに交換されていた。

思い出のスラントノーズに重なる1974年式911は、マグナス・ウォーカーも恐れた改造の沼を前に期待を下回る価格!?

自身が初めて購入したポルシェに外観が似ているこの改造車に郷愁を掻き立てられたことから、ウォーカーは約6年前に購入することにした。しかし、本人が語っているように、その所有のもとではおおむねコレクションの一品として扱われ、ガレージの片隅で静かに眠っていたようだ。

RMサザビーズ北米本社は「この911は次期オーナーに多くの選択肢を提供しており、レストモッドのキャンバスとして活用することも、ターボ付きエンジンや強化されたシャシーコンポーネントを備えた、935風のレースチューンの道を歩み続けることも可能です」と提言したうえで、7万5000ドルから10万ドルのエスティメート(推定落札価格)を設定した。さらに「Offered Without Reserve」、つまり最低落札価格は設定しなかった。

この「リザーヴなし」という出品スタイルは、金額を問わず確実に落札されることからオークション会場の雰囲気が盛り上がり、ビッド(入札)が進むことも期待できる。ただしそのいっぽうで、たとえビッドが出品者の希望に達するまで伸びなくても、落札されてしまうリスクもついてまわる。

そして、実際のオンライン競売ではリスクのほうが発露してしまったのか、丸1週間の入札期間を経ても価格は伸びず、結局エスティメート下限を大きく割り込む5万600ドル。現在のレートで日本円に換算すると約810万円という、売り手サイドにとってはいささか残念で、買い手サイドにとってはお買い得ともいえる価格で落札となった。

あとは今回このポルシェ 911を手に入れた落札者が、伝説の男マグナス・ウォーカーも果たし得なかった真の「アウトロー化」を図るのか否か。彼が恐れた“チューニングの沼”の先にある景色を、ぜひとも見てみたいものである。

※為替レートは1ドル=約160円(2026年4月時点)で換算

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